パリにクラス3世代の家族に起きた問題と将来への不安を時にコミカルに、時にリアルに描いた映画『愛しき人生のつくりかた』で、定年ウツと夫婦の機器に頭を悩ますミシェルを演じたミシェル・ブランのインタビューが届いた。
―この企画の魅力はなんですか?
コメディと偽りのない感動が混ざり合っているからです。これは人生が持つ本来の姿を見せようとする作家の真の作品です。登場人物に対して暖かいアプローチをするジャン=ポール(監督・脚本・ホテルの主人役)の技量のおかげで、この作品はまるで本物の人生のようになりました。例えば、彼が演じる酒飲みで青年に愛情を抱くタガが外れたホテルの主人の役にはとても感動しました。そして、この作品にはオリジナリティがあります。警察署でのシーンのようにおかしな会話と、アニー・コルディ(マドレーヌ役)にまつわる純粋な感動をもたらすシークエンスがとても特殊な形で混ざり合っています。
―いくつかの台詞を直しましたか?
全く直していません。通常、私は他の人の仕事を尊敬しますが、台詞が嫌いで書き直しを頼むことも時にはあります。しかし、今回は台詞をとても気に入りました。なので、できるだけ忠実にジャン=ポールの台詞を言うようにしました。「ピューマの母親」という台詞のように!
※編注)フランスでかなりの年下の男性とつきあう女性のことを「クーガー(ピューマ)」と言う
―あなたの役を説明していただけますか?
早期退職をしたことが耐えられないと告白することも、自分のしたいことに打ち込むこともできない男です。自分が変わってしまったこと、我慢ならない男になったこと、妻の人生を台無しにしていることに気付かないのです。そこに母親の問題が加わり、強くならなくてはいけない時に弱ってしまうのです。この役を作り上げるにあたって、非常によく構成されていると思いました。(決断をして)テーブルを叩かなければいけない時にも、兄弟たちの言いなりになってしまいます。母親を老人ホームに入居させ、アパルトマンを売るという考えは彼のものではありません。私にとっての彼は、海がしけている時に船のマストを失ってしまう男なのです。
―どのようにジャン=ポールは俳優の演技を指導していましたか?
素晴らしい俳優指導のディレクターを発見しました。まず非常に感受性が強く、完璧な正確さと十分な謙虚さを持っており、時には「違う、君が正しいよ。君が提案したようにした方がいい」と言うこともありました。たとえ99%は彼の直感が正しいとしてもです。彼は常に真実を、人生における現実を追っていました。それに何も諦めませんでした。自分の望んだものが得られないならば何度もシーンをやりなおし、自分の望むものをきちんと説明しました。監督業に進出した俳優は、演技の指導をしている俳優の頭の中にこびりついている問題を追い出す第六感があるとよくいいます。ジャン=ポールの場合はそうなのです。
―撮影現場の様子はいかがでしたか?
ジャン=ポールのカメラの配置は決して平凡なものではありませんでした。フレームと動きをきちんと研究し、無意味に映像を美化しようとしませんでした。全てが脚本によって引き出されるのです。こんなに素早く、いい仕事をする監督を見るのは初めてかもしれません。時には予定より1時間も早く撮影が終了する日もありました。それはジャン=ポールが録音も含めて素晴らしいスタッフに囲まれているからかもしれません。録音が複雑な路上や車の中、いくつかの外での撮影にも関わらず、今までにないほど、ほんの少ししかアフレコをしませんでした。
映画『愛しき人生のつくりかた』は2016年1月23日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国で順次公開!
監督・脚本:ジャン=ポール・ルーヴ
出演:アニー・コルディ、ミシェル・ブラン、シャンタル・ロビー、マチュー・スピノジ、ジャン=ポール・ルーヴ
配給:アルバトロス・フィルム
2015年/フランス/93分
©2013 Nolita cinema - TF1 Droits Audiovisuels - UGC Images - Les films du Monsieur - Exodus - Nolita invest