語られてきた家族の話が、すべて偽りだとしたら―亡くなった母親の死に疑問を抱いた主人公アントワーヌがその謎に迫る映画『ミモザの島に消えた母』でアントワーヌを演じるローラン・ラフィットとフランソワ・ファヴラ監督にインタビューを行った。
ローラン シーンの描写が詳しく描かれていたので、その状況を思い浮かべて、監督のビジョンや脚本が求めることに応じて自然にシンプルに誠実に演じるだけでした。
―実際にアントワーヌのように生きるのは難しいのではないでしょうか?
監督 私はアントワーヌの生き方に賛成しています。特に家族に関して、何か隠されてるんじゃないかと感じる時は、真実を追求すべきじゃないかと思います。フランスは自由に言いたいことを言っているというイメージがあると思いますが、実際は問題を抱えている家族もたくさんあるし、言えないでいる家族もたくさんあります。それはフランスに限ったことではなくて、どこの国でもそうだと思います。本作では“母の恋愛”が家族の中でタブーでしたが、それ以外でも例えば子供が性的に虐待されているとか、そういった問題を抱えている家族はたくさんあります。昔からあった問題で、時代や国に関わらず普遍的な問題です。もしかすると時間が経てば経つほどひどくなっていることもあるかもしれない。
―妹アガット役のメラニー・ロランとは撮影現場で話し合いをしましたか?
ローラン メラニーとは具体的にどういう話し合いをしたかは覚えていませんが、本作の前まではすれ違う程度で、一緒に撮影にはいたことはありませんでした。メラニーはすごくおもしろい子で、撮影現場ではいつも笑っていました。深刻なシーンが多いので、集中しすぎると本番で感情がうまく出てこないことがあるので、撮影をしていないときは気晴らしにくだらないことを言ったりしてリラックスすることが多かったです。
―監督自身が家族の問題を抱えていたことがきっかけだったと聞きましたが、その問題は問題を今も抱えているのですか?
監督 私が抱えていた家族の問題は、本作においての問題とは全く違うものですが、家族のタブーや秘密としては同じです。私もアントワーヌと同じように精神分析を受けていて、たくさんの人が父や母に話すべきかと悩んでいることに気づきました。この原作に出会って、これを元にすれば家族のタブーをテーマにしながらも、ヒッチコック的なスリラーの要素も加えられると思いました。
―舞台になっているノアールムーティエ島の設定は原作にもありましたか?
監督 原作にこの島が登場していました。
―監督は島に行ったことがなかったと聞ききましたが、ローランさんは行った事がありますか?
ローラン 撮影するまでは行ったことがなく、知らなかったです。
―日本語では『ミモザの島に消えた母』というタイトルですが、原題の『Boomerang(ブーメラン)』をどう解釈していますか?
監督 原作のタイトルが『Boomerang』だったから尊重するということでそのタイトルにしました。抽象的で分かりにくいかもしれませんが、「過去から逃げようとしても過去が戻ってきてしまう」ということを表現したかったのです。日本語のタイトルの訳も聞きましたが、すごく分かりやすいです。嫌いじゃないです(笑)
ローラン どうしても『Boomerang』にしなければならなかったということはないと思うのですが、監督が言ったように『Boomerang』とは「自分が過去にやったことは自分のところに返ってくる」と解釈しています。
―お二人は以前から一緒に仕事をしたことがありましたか?
監督 私の一作目の『彼女の人生の役割』という作品で一度だけ一緒に仕事をしています。脇役ですが出てもらいました。本作はシナリオを書いている時に、アントワーヌ役は彼だと思い、脚本を渡したら引き受けてくれました。一緒に脚本を読んで、いろいろな提案を受けて、話し合いました。
―脚本段階から一緒に手がけたのですか?
監督 違います。脚本家のエマニュエル・クールコルとともに書き、完成した脚本を読んでもらいました。さっきローランが「メラニーがおもしろかった」という話をしてたけど「監督がおもしろかった」とは言ってくれないから気を悪くしています・・・(笑)
―次回作の構想はありますか?
監督 「友情」というテーマで準備しています。
映画『ミモザの島に消えた母』は2016年7月23日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開!
監督:フランソワ・ファブラ
出演:ロラン・ラフィット、メラニー・ロラン、ウラディミール・ヨルダノフ
配給:ファントム・フィルム
2015年/フランス/101分
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