一人の教師のアウシュヴィッツに関する授業が、落ちこぼれたちの人生を変える―各国の映画祭で話題となった感動作『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』でメガホンを取るマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督にインタビューを行った。
監督 私の個人的な見地や見解は映画に散りばめられています。学校に入る時にスカーフを外させようとするシーンや、バスで席を譲ろうとした他宗教の女性の申し出を譲られた年配女性が無視をするといった辺りで捉えています。今のフランスは、いろいろなところで軽蔑し合っています。それはかなり注意が必要で複雑です。多民族が共存している時にこのような状況というのは、大変危ないと思います。学校はあらゆる人にとっての共有の場であり、それに対する答えを持っていなければいけないと思います。宗教や親、祖父母に関係なく、学ぶということを前にしたらすべての人たちが平等です。そこではフランスの価値観を学ばなければいけません。
―生徒役には演技経験のない子どももキャスティングしましたが、その理由や難しかった点はありますか?
監督 キャスティングには6か月かかりました。プロの俳優であるかどうかは関係なく、学校やあらゆるところでオーディションを行い、エージェンシーも使っています。その時に、まず録画をして、私は録画を見て、気に入ればその子に会うという手法を取りました。会った時に「何かをやってみて」とカメラの前に立たせる時もありましたが、その時に何かできるかという以上に、今までどんな人生を歩んできたかということを聞いて決定しました。
―脚本を元に、合う人物を探していたのですか?
監督 シナリオよりもアハメッド(・ドゥラメ)とモデルとなったアングレス先生に、その当時にどんな生徒がいたか、どんな性格の子たちがいてクラスができていたかを聞いていたので、それに合わせて選んでいきました。
―劇中では先生が子供たちに影響を受けている様子が描かれていますが、監督自身は影響を受けた先生はいましたか?
監督 ペルシャ語などをやりたくなるような先生には残念ながら出会えませんでしたが、フランス語の先生で、私が物を書くことを勧めてくださった方がいました。そのおかげで物語を語る喜びを学べましたので、その先生との出会いは貴重だったと思っています。
―劇中でアウシュヴィッツを取り上げていますが、アウシュヴィッツの映像などは挟まずに、生徒たちが学んでいくことに光を当てているのは意図していることですか?
監督 今まで見せられているものをもう一度見せるというのは私はやりたくありませんでした。このクラスの生徒たちが発見していくプロセスや、語られたことを調べていくうちに過去の出来事に出会っていくことに興味がありました。今の時代はパソコンでどんな情報にもたどり着けます。この映画でも一度だけパソコン上でショッキングな映像が出てくることがあります。でも1枚の写真の向こう側で生きてきた人物が、どんな視点でどのように生きてきたかというところまでは写真1枚見ただけでは始まりません。奥にあるところを考えて、初めて私の言いたいことが引き出されてきます。
映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』は2016年8月6日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿ほか全国で順次公開!
監督:マリー・カスティーユ・マンシオン・シャール
出演:アリアンヌ・アスカリッド、アハメッド・ドゥラメ、ノエミ・メルラン
配給:シンカ
2014年/フランス/105分
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