『笑う招き猫』松井玲奈 単独インタビュー

INTERVIEW

最高にキュートで笑っちゃうほど泣ける青春《しゃべくり倒し》ガールズ・ムービー『笑う招き猫』にW主演の松井玲奈の単独インタビューを行った。

―本作をご紹介いただけますか?
 お笑い芸人のアカコとヒトミがドタバタやりながら・・・あ、違うな、そういう話じゃないな(笑)どういう話と言えばいいのか、いつも悩んじゃうんですけど、出てくる人それぞれにやりたいことや立ち向かいたいことがあって、その中で挫折したり諦めそうになりながらも、しっかりと自分の力で立ち上がって前に進んでいくという話です。そこにアカコとヒトミの二人の関係性も描かれていて、見ていると前向きになれる映画だと思います。

―本作のキーワードとして“前向きになる”言葉が出てきます。撮影中に、映画のように前向きになったり、前向きなことをする中で落ち込むことがあったら教えてください。
 芸人の役をやるとなったときに、自分自身が1ミリもおもしろくない人間だと思っているので、そういう中でボケなきゃいけないのはハードルが高いことだなと思いました。アカコというキャラクターは自分の意志がはっきりしていてまっすぐな女の子なので、“ぶれない気持ちでボケる”というのがおもしろいんだなと思いました。最初の段階で照れちゃったり、本当にこれはおもしろいのかなとか自分で悩んじゃったりするとダメなんだなと。漫才の中だけでボケるんじゃなくて、日常生活を描いている中でも、“あいつ特徴的だな”と思われる動きって何だろうって思いながらやっていたので、そこが本当に難しかったです。

―新鮮な役どころだと思ったのですが、ご自身でも新しい役を演じているという印象はありましたか?
 面白いことは大好きですけど、周りからはふざけたりしなさそうというイメージを持たれがちで、ふざけてみると「どうしたの?」みたいな空気になって逆につらいということが多かったので、極力そういったことをしないで生きてきました。でも、この作品では大いにそういうことをしていいよと言われているからこそ、画面の中にアカコというキャラクターが映っているときに、どうしているのが正しいのかなと、毎日家に帰って考えていました。今日も面白くなかったとか考えながら・・・。

―ご自身とアカコというキャラクターの共通点や、違うと思うところはありますか?
 意志がぶれないまっすぐさは近いのかなと感じています。私もすごく頑固で、自分がこれと思ったことはできる限り曲げたくない人間なので、そういうところはすごく似ているなと思います。ヒトミに対しての思いも、自分にとって大切な友達だったり、相棒のような子に対しては感情をむき出しにするのは自分とリンクするなと思いました。でも、恐れずに何でも言えちゃうところは自分と全く違うと思いました。アカコ自身は「間違ってない」と思って口から出ていることが多いですが、私だったら頭の中で「これを言ったらどう思うかな」と考えてから言っちゃうので、その言葉を発するまでの思考回路が違うと思います。

―見ていて熱量がすごいと思いました。その中で、手が出るシーンがあったりもしますが、苦労したことはありますか?
 乱闘シーンはあまり苦労はしていないです。怒って先輩の漫才師に掴みかかるシーンがあるんですけど、大事件が起きるまでの流れはワンカットで撮っています。ケンカが始まって、舞台に上がって殴るところまでを何回かは撮っているんですけど毎回最初から撮りました。

―映画でありながら舞台的なアプローチもある?
 どのシーンも最初からやることが多かったので、ある意味舞台っぽいというか。飯塚監督は感情の流れを大事にされる方なんだなと思いました。

―劇中のキャラクターに共感できるシーンはありますか?
 浜野謙太さんが演じている和田先輩は共感する人が多いんじゃないでしょうか。学生時代に自分の夢があったりとか、大きいことをやってのけるんだって言ってるけど、結局そういうことができずに会社の端っこにいる。思い描いていた自分とは違う自分になっている。和田先輩は、そこからどう殻を破って復活するかという過程はすごくかっこいいと思っています。和田先輩が思い悩んでいる居酒屋のシーンで、後ろで騒いでいる大学生の集団がいますが、撮影しているときに「きっとあそこで騒いでいる一番もてはやされている子もきっと何年か後には和田先輩と同じふうになっちゃうんだろうね」って話をしていて、深いなと思いました。映画でありながらリアルなところもあるんですよね。

―もしヒトミかアカコと漫才をするとなったらどちらがいいですか?
 えーー、ヒトミとやりたいです!

―それはなぜですか?
 ヒトミがネタを書いてくれるので(笑)ボケも大変なんですけど、ネタを書くほうが大変だと思うので、私はできないなと思います。

―ボケとツッコミでは?
 どっちも難しいんですよ・・・。だから、それはこっちのほうがいいなっていうのはあまり思えないですね。

―漫才師の役を演じてみて漫才へのイメージは変わりましたか?
 ちょっとかじっただけなので、こんなことを言うのはおこがましいのですが、芸人さんがやっていらっしゃる漫才の見方が変わりました。撮影しているときにテレビで「M-1」をやっていて。一視聴者として見ているときは楽しんでみていたんですけど、“めっちゃ緊張してる!”とか、“ウケてると悔しい”と思う気持ちだったりとかがわかったり、“ここ使えるな”というのを勉強しながら見ていました。芸人さんが思ったことや感想とかをTwitterなどに書いたりしていらっしゃったので、そういうのを見ながら、“思ってること一緒だ!”と思ったりして。思考回路というかベクトルとしてはアカコとヒトミという二人にちゃんと向き合えてるのかなと思って、うれしくもあり恥ずかしくもある時間でした。すごく難しいなと思ってやっていました。

―ご自身でアイデアを出して演じた部分はありますか?
 最後にやっている漫才以外の、ところどころに出てくる漫才は二人でネタを考えました。なすなかにしさんが導入部分だけを考えてくださっているのですが、実際はそれだけでカットがかかるわけではないので・・・。どこでカットがかかるのかわからないので、「ネタがありませんじゃダメだよね」ってなって、もらったお題からふくらませるというのを3~4本分考えました。アカコとヒトミの二人が、先輩がライブ中にいなくなって間をつなぐシーンがあるんですけど、その漫才も自分たちで考えたのですが、用意したところよりも長くカメラが回ってネタが終わっちゃったんですよ。でもカットがかからないと終われないので、自分たちでその場でアドリブで漫才をしました。監督からは「カットかけないけど、あいつらやってるじゃん」って言われました。その時に芸人さんってすごいなと思ったし、漫才ってお互いのことを信頼していないとできないんだなって思いました。人の前で立って話して、それで笑わせるということは相手がこう返してくれるって信じていないとできない。日常会話だと話しかけても返ってこないことがあるじゃないですか。そこで会話終了みたいな。でも舞台の上ではそんなことはあってはいけないことだから、お互い信頼関係があってこそ、ネタもできたのかなと思いました。終わった後は二人でずっと「すごかったね!」ってキャッキャしていました。

―今回の役を演じたことを踏まえてやってみたい役はありますか?
 自分自身はこういうことをやって欲しいとい言われたことに対して全力で応えたいと思っているので、枠にとらわれないなんでもやる人になりたいと思っています。

―本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
 この作品は漫才ムービーではなく、人間群像劇です。観ていただく方それぞれに刺さる部分があると思います。見終わった後にすっきりした気持ちになってもらえるんじゃないかなと思うので、ぜひ映画館で観ていただけたら嬉しいです。

【取材・文・写真/坂東樹】

【衣装】
ストライプオフショルダーシャツ (¥17,000(税抜))
パンツ (参考商品 )
ブランド名 :DWHITE
社名:バンディエラ.ブルー
問い合わせ先 :03-6407-2297

清水富美加と松井玲奈が漫才コンビに初挑戦した青春映画である本作。原作は山本幸久による女漫才師を描く友情物語の傑作「笑う招き猫」。若手漫才コンビ「アカコとヒトミ」がお笑いの世界で奮闘し、挫折しながらも固く結ばれた女の友情のもと夢を追いかける。27歳、素直になれない女のちょっと遅めの青春ドラマに仕上がっている。


DATA
映画『笑う招き猫』は2017年4月29日(土・祝)より新宿武蔵野館ほか全国で公開!
監督・脚本・編集:飯塚健
原作:山本幸久「笑う招き猫」(集英社文庫刊)
出演:清水富美加、松井玲奈、落合モトキ、荒井敦史、浜野謙太、前野朋哉、稲葉友/角田晃広(東京03)、戸田恵子
配給:DLE
©山本幸久/集英社・「笑う招き猫」製作委員会

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