実在した医師と修道女との絆を描いた感動作『夜明けの祈り』に主演のルー・ドゥ・ラージュにインタビューを行った。
『ココ・アヴァン・シャネル』『ボヴァリー夫人とパン屋』で世界中の観客を魅了したアンヌ・フォンテーヌ監督の最新作。1945年、第二次世界大戦が終結したこの年に、ポーランドの修道院で起きた悲劇的な事件によって、心身共に傷ついた修道女を救うために尽力した医師マドレーヌ・ポーリアックの知られざる史実を映画化した本作。凛々しい魅力に溢れたマチルドを演じるのは、類いまれな美貌と実力を兼ね備えた、若きスター女優ルー・ドゥ・ラージュ。神の意のままに生きようとする修道院長をアガタ・クレシャ、マチルドと固い友情で結ばれていくシスター・マリア役をアガタ・ブゼクが務める。
全く知られていませんでした。マドレーヌ・ポーリアックによる日記に基づいて脚本が書かれています。
―この物語を知って、どのように感じましたか?
そのことを知ってショックを受けたということは特になかったです。それは、修道女などが戦争中に襲われて、性的暴行を受けることはあり得ることだというのは知っていたからです。非常に恐ろしいことですが・・・。修道女たちの闘いという点は感動的でした。
―子供が生まれて喜べないところを素直に受け入れられないところがありますが、ルーさんはいかがですか?
この修道女たちは性的な暴力を受けることで、身体だけではなくて、そういったこと(性的行為)をしないという誓いを犯されています。両方で暴行を受けているのです。それと母性と向き合わなければいけない。映画には、子供を産んでいろんな反応をする人がいます。ほかの人の手にゆだねたいという人もいれば、自分の手で育てたいという人もいる。自分の母性を試されるということだと思います。
―マチルドを演じるうえで心がけたことはありますか?
役作りでまず行ったのは、医師と言う役柄なので、映画の中で医療行為を行うために助産師さんや医師から手ほどきを受けました。“このような動きをするんだ”というトレーニングを受けたのが第一段階で、次に、撮影に入る前にポーランドでポーランドの女優さんたちと一緒にリハーサルをしました。そこで共に映画の世界を築き上げる役作りをしました。後はアンヌ・フォンテーヌ監督と長い時間話し合いを続けて、この役柄は時代背景的にも私自身の時代背景とは違うので、どのように演じたらいいのか話し合いました。
―ポーランドの女優さんと共演されましたが、どのようなお話をされましたか?
言葉が通じないのは必ずしもコミュニケーションの障害にはなりませんでした。言葉が通じないがゆえに、大事なことだけを言い合ったりするので、かえってコミュニケーションが出来る面もあった。アガタ・ブゼクさんは少しだけフランス語を話せたので、彼女とは話をしましたし、彼女の演技を観て学ぶことが本当に多かったです。私がフランス語を教えたり、ポーランド語を教えてもらったりもしました。映画の中では、私はポーランド語を話していましたが本当に下手で、大きく書いてもらって丸覚えで言うものだからみんなはゲラゲラ笑っていました。お互いの弱点をカバーしあいつつ、とてもいい雰囲気の現場でした。
―ルーさんの演技を観ていると強い心のようなものを感じます。この映画のテーマでは信仰が扱われていますが、ルーさん自身はいかがですか?
どんな人間でも信じるものは必要だと思います。それはもちろん宗教ではなくても、何か内面にあるものを信じていくことかもしれません。何を信じているかは自分自身でも分からないかもしれませんが、それを見出していく必要があると思います。
―言葉が通じない中でも徐々に通じ合える様子が描かれています。実際の撮影現場ではいかがでしたか?
撮影期間中に交流する中で築いたものはありましたし、同じ目標を持っていたので、相手を詮索することなくお互いに分かち合うことが出来ました。もちろんこの映画の中であるほど大変なものではなかったです。映画では信じているものや考えていることが全く違う女性たちの出会いなので、実際の撮影現場ではここまで大変なことはなかったです。
―アンヌ・フォンテーヌ監督の演出はいかがでしたか?
ものすごく厳しかったです。最初に監督に会った時から、まっすぐに淡々と演じてほしい、表情を出さないでほしいと言われていました。そして、少しずつ花が開いていくように、微妙な形で変化していく、そういう役柄なんだとアンヌ監督はまっすぐな方なのでビシッと言っていました。
―監督から言われて印象的だったことはありますか?
脚本の中の言葉で「信仰は24時間の疑いの1秒の希望だ」という言葉が出てきますが、それが印象に残っています。
―両親が画家だと聞きましたが影響はありましたか?また、なぜ女優の道を選んだのですか?
特に演技と関わる職業の両親ではありませんでしたが、私が女優になりたいという願望を伝えたらそれは聞いてくれました。子供だったんですが、演技がしたいと言ったらやるだけやってみなさい、うまくいかないかもしれないけど、やるだけやってみなさいと言われました。
―日本に来たのは初めてですか?
はい、何も知らないんです。昨日の夜ついたばかりです。
―今後、演じてみたい役はありますか?
こういう役を演じたいとか、目標は定めないようにしています。今までもこんな役をやるの!?と言う驚きもありましたし、やってみたらいい経験になったことがあります。可能性の扉を閉ざしたくないのでできるだけチャレンジになるような、難しいと思うような役をやりたいとは思っています。
―最後に、本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
この映画は戦争を扱っていますが、希望もあります。日本の観客には異文化だと思うので、好奇心をもって飛び込んでいただきたいです。
映画『夜明けの祈り』は2017年8月5日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開!
監督・翻案:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ
配給:ロングライド
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