映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』で日本語吹替え版主題歌を担当する吉田兄弟に単独インタビューを行った。
吉田健一 原曲がビートルズの曲なので、いい意味で裏切りたいというのはありました。三味線の持つダイナミックな部分と繊細な部分の融合をアレンジとして意識しました。最初に力強く入ったのはそのようなイメージからです。
―本国バージョンとはまた違う印象がありました。事前に本国版はお聞きになりましたか?
吉田健一 映画を初めて観たのがスペイン・バルセロナでした。エンディングを観て驚きました。この曲は、僕のソロライブでカバーしたことがあったので、三味線でカバーすること自体は合うことが分かっていたのですが、(本国版での)三味線の扱いは歌の間に入ってくる感じだったので、(日本版では)違うところで攻めていこう、いい意味での違いを見せていきたいなというのはありました。
吉田良一郎 メロディの間に三味線が入ってくるのではなくて、力強く演奏して最後駆け上がりたいなと思いました。僕たちが演奏する津軽三味線は駆け上がって最後に盛り上がるので、そういう部分を見せていたらなと思いました。
―エンディング曲を担当することが決まった時のお気持ちをお聞かせください。
吉田健一 『KUBO and the Two Strings』という映画があるのは製作段階から知っていて、一度レコード会社に問い合わせをいただいたことがあったんです。それから時を経て、フランスで三味線のワークショップをやっている時に、お客さんから「『KUBO』っていう映画やりますけどどう思いますか?」って聞かれて、“『KUBO』ってどこかで聞いたことがあるな”と思ったのが去年だったんです。どこかで(コラボレーションを)できたらという思いはずっとありました、スペインで映画を観たときに、お客さんは家族連れが多くて、大人も子供も楽しめる映画でした。本編を観ると、監督やスタッフが日本の文化をリスペクトしているので、どこかで絡めたらいいなという思いはありました。日本公開にあたってオファーをいただいたときには、僕らももちろんやりたいと思っていたところだったので、合致したところでカバーができたのは嬉しかったです。
吉田良一郎 三味線を持った主人公ということで、とうとうこういう映画ができるのかと思おうと嬉しいです。自分たちが三味線を始めたころはまず考えられなかったことなので。世界が三味線をピックアップしていたということで。
吉田健一 (本作のポスターを見て)僕らはまさにこんな感じでしたからね(笑)三味線って子供用のサイズがないんですよ。だから、三味線にぶらさがっているようになる。小さいころを思い出しました。今は小さい子供たちがたくさんやっているんですが、僕らが子供の頃にこの映画があったら、また印象も違っただろうなと思います。
―海外の映画で三味線を使った映画はあまりありませんが、映画をご覧になってどうでしたか?
吉田健一 驚きました。日本の民謡などが盛り込まれていて、描写の仕方は間違ったところはないと思う。三味線を通してこんなにも壮大な物語を作れるんだと思いました。感動、家族、ヒーローなどいろんな要素がある。三味線でエンターテインメントを作るとしたらこういう映画になるんだろうなと体現しているような映画ですね。
吉田良一郎 まずはタイトルですね。原題の『KUBO and the Two Strings』を見て、“二本の弦?三本だよね?”って違和感がありました。一般の方は弦が三本だということも分からない方もいると思うし、三味線は三本の弦というのをこの映画をきっかけに知って欲しいです。
―改めて感じた日本の良さはありますか?
吉田健一 誰かを思いやる思いが強いと思いました。故人とか家族への思いは、形がなくなろうとも、一つの心の力として残るのは誰にでもあり得ること。そこら中にあるからこそ気づけないことはあると思う。ありふれたことであっても美しいと思うことが日常にあることにもっと気付けたらいいかなと、そこが一番大きいと思います。
吉田良一郎 ストーリーや美しいところも日本の魅力ですが、日本の生きる力強さを感じました。
―お二人は普段から映画はご覧になりますか?
吉田健一 もちろんです!(本作のトラヴィス・ナイト)監督の次回作がトランスフォーマー(『Bumblebee(原題)』)ですが、僕トランスフォーマーが大好きなんです。車物が好きなので(笑)いろんな映画を観ます。今回、自分たちの音楽をサラウンドにしたらこういう広がりがあるんだなと改めて感じました。それを体験したので、今後映画音楽としてできることがあると思うので、この作品がスタートになると思います。
―これからも三味線を使用して映画音楽を作っていくことは考えていますか?
吉田健一 もちろん考えています。日本だけではなく、海外のほうが注目度が高かったりするので。これからオリンピックに向けて日本をアピールするうえで活用していくべきものだと思うし、オリンピックが終わった後も、すごくいいきっかけになると思うのでどんどんやっていきたいと思います。
―本作の見どころを教えてください。
吉田良一郎 三味線の魅力を感じてほしいですし、日本の魅力を改めて知って、日本って良いんだなと感じて欲しいです。
吉田健一 自分の中でいいと思える日本を見つけて欲しいと思います。日常にいっぱいあると思います。海外で日本のことを聞かれた時に、何も言えないっていうのはあると思うんです。こういうところにヒントがあって、自分なりの日本を見つけられたらいいかなと。僕たちも感じたことがあったので、ご家族で楽しんでもらいたいです。
【取材・写真・文/編集部】
数々の傑作を送り出してきたストップモーション技術最高峰スタジオ・ライカが、今回挑んだのは“古き日本”。情感あふれる日本の風景や風習を、息を飲む美しさで描いた本作は、本年度アカデミー賞や全世界の映画賞を総なめし話題を呼んだ。監督には、黒澤明や宮崎駿を敬愛するトラヴィス・ナイト。シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、レイフ・ファインズ、ルーニー・マーラら超豪華俳優陣がボイスキャストを務める。ライカの最先端クリエーターたちが、壮大なセットの中で人形や美術を1コマ1コマ動かし、1秒間の映像のために24枚の写真を撮影しながら作り上げた努力と愛情の結晶に、名だたるキャストたちが命を吹き込む。大人にこそ観てほしい、圧巻のストップモーション絵巻がついに上陸する。
映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は2017年11月18日(土)より新宿バルト9ほか全国で公開!
監督:トラヴィス・ナイト
声の出演:アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズ
配給:ギャガ
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