『ダンシング・ベートーヴェン』アランチャ・アギーレ監督 単独インタビュー

  • HOME »
  • インタビュー »
  • 『ダンシング・ベートーヴェン』アランチャ・アギーレ監督 単独インタビュー

INTERVIEW

天才振付家による感動のステージの舞台裏を捉えたドキュメンタリー『ダンシング・ベートーヴェン』でメガホンを取るアランチャ・アギーレ監督に単独インタビューを行った。

―バレエに詳しくても楽しむことができました。今回、モーリス・ベジャール・バレエ団による「第九交響曲」の演目を追っていますが、「第九」を撮るきっかけを教えてください。
監督 この映画の前にベジャール・バレエ団とはお仕事していて、再演すると聞き、大きな公演ですからドキュメンタリーを撮りたいと思いました。ドキュメンタリーの場合は撮り始める際に劇場公開されることは決まっていないことが多いのですが、私は劇場で公開したいと思っていました。

―今回「第九」の再演が行われると聞いて監督はどう思いましたか?
監督 とても大きな挑戦だと思いました。見たいけれど、どうなるんだろうという不安もありました。撮りたいと思うのと、大変だと思う気持ちがありました。

―ドキュメンタリーだと思い通りの映像が撮れないこともあります。
監督 そうですね、フィクションとドキュメンタリーの違いは、フィクションは事前にシナリオを書いてから撮る。ドキュメンタリーは後でシナリオを書くんです。でもドキュメンタリーの面白いところは、生きているものを撮っていくので、予期しないことが映画に豊かさを与えてくれます。ある意味では神様がシナリオを書いています。神様はうまい脚本家なんです。

―これまでにもバレエのドキュメンタリーをお撮りになっていますが、バレエの魅力は何ですか?
監督 ダンスというのは映画と共通点がある芸術だと思います。まず動きが欠かせないということ。ある意味で、映画は写真に動きがついたものですし、ダンスは彫刻に動きがついたものといえるんじゃないかと思います。リズムが重要だという共通点があります。映画のカメラマンにとってダンスは贈り物のように美しい素材だと思う。だから多くの映画作家はダンスを撮っていると思います。

―本作の撮影中にはケガなどの場面がありましたら、画面に映っていない部分で印象的だった出来事などはありましたか?
監督 今回の撮影中は女性ダンサーのケガが幸い唯一のケガでしたが、ダンスの世界はあのような負傷はよくあることです。ダンサーは常に身体的に極限まで無理をしている状態です。

―監督の来日中に日本でベジャール・バレエ団の来日公演があります。
監督 モーツァルトの「魔笛」ですね。この公演映像は去年映像に収めました。映画のためではなく、公演を収めるという目的です。モーツァルトの音楽が素晴らしいので素敵な経験をしました。今回の公演のプログラムもとてもいいですよね。明日(11月22日)はモーリス・ベジャールの没後10周年に当たります。もちろんベジャール・バレエ団にも重要な日ですので、特別公演となります。

―歴史があるバレエ団のドキュメンタリーはとても価値がある素晴らしいものですが、これからも撮影は続けていきますか?
監督 はい、これからもベジャール・バレエ団を撮っていきたいと思います。時が物ごとに価値を与えると思っています。最初のドキュメンタリーよりも今のほうがこのバレエ団のことをよく知っているし、的確な視点を持つことができます。だからこれからももっとおもしろいものを撮れると思います。『6歳のボクが、大人になるまで』という映画がありますが、時の積み重ねがおもしろいと思います。

―具体的な予定はありますか?
監督 今一つあるのが19世紀のスペインの作曲家の映画を準備中です。あともう一つ企画があって、日本におけるフラメンコです。私はスペイン出身なんですけど、日本でこんなに自分の国のダンスが人気というのは驚きました。フラメンコの映画はありますが、日本人がフラメンコについての情熱を描いた映画はないと思う。

―本作でも日本で撮影していらっしゃいますが、それ以来日本に来る機会はありましたか?
監督 この映画の撮影の時が初めての来日でした。今回が2回目です。『ベジャール、そしてバレエはつづく』(2009)が日本でも公開されて、日本側とやり取りする機会があったので日本のことを知る機会になりました。また日本にも来たいと思っています。

―監督ご自身は10代のころにベジャール・バレエ団を見て感銘を受けたと聞きました。監督にとってのバレエとはどういうものですか?
監督 ダンスというのは人間の身体の極限の100%の表現だと思います。一番原始的で、一番ダイレクトな表現方法だと思います。昔、人は雨を乞うために踊ったりということから始まっています。神と対話する方法、自分と対話する方法だと思います。

那須野圭右

大貫真幹

STORY
故モーリス・ベジャールによって振り付けられた伝説のダンス「第九交響曲」東京公演。それはモーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団、そして世界的指揮者ズービン・メータ率いるイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団という奇跡の競演が生み出した、稀代のステージ。本作は、21世紀のバレエ史上最高傑作と呼ばれた総合芸術のステージが出来上がるまでの度重なるリハーサルの様子や、ベジャールの後継者ジル・ロマン芸術監督のもと新たに踏み出したモーリス・ベジャール・バレエ団の様々な文化的背景を持つダンサーたちが織りなす人間ドラマに密着した感動のドキュメンタリー。


TRAILER

DATA
映画『ダンシング・ベートーヴェン』は全国で順次公開中!
監督:アランチャ・アギーレ
配給:シンカ
© Fondation Maurice Béjart, 2015 © Fondation Béjart Ballet Lausanne, 2015

PAGETOP
© CINEMA Life!