『風の色』クァク・ジェヨン監督 単独インタビュー

INTERVIEW

ファンタジックでミステリアスな大人のための上質なラブストーリー『風の色』でメガホンを取るクァク・ジェヨン監督に単独インタビューを行った。

―これまでのクァク・ジェヨン監督の作品はコメディ要素が含まれている作品が多かったと思いますが、本作は笑いを抑えたドラマ作品でした。当初からのこのような作品にする予定でしたか?
監督 今回の作品はドッペルゲンガーだったりミステリーだったり、ファンタジー要素が多いです。もともと私はコメディが大好きなのですが、今回は入る隙間がなかったんです。入れたいと思っていたのですが、今回はそのような作品だったので、(藤井武美演じる)亜矢のお兄さんがおもしろいキャラクターとして出ているところがそういった要素になります。竹中直人さんが演じている「フーディーニ」のマスターもコメディ的な要素もありますが、そこまで大きな比重はなかったですね。

―北海道を舞台にしていることでドラマ要素が広がっていると思います。北海道を舞台にすることは最初から決めていたことですか?
監督 何も考えずにただ一つ、北海道が舞台ということだけでスタートしました。頭の中でいろいろ思い浮かべていたら、東京と北海道に似た人がいる、そうしたら幸せなんじゃないかなと思い、組み立てていきました。最初は北海道という背景しかありませんでしたが肉付けしていきました。

―北海道を舞台にすると考えるきっかけはありましたか?
監督 そもそもは2002年に初めて「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」(『猟奇的な彼女』上映)に行き、いつか北海道で映画を撮りたいと思っていました。『僕の彼女はサイボーグ』(2008)を取り終えた頃に具体的な構想を練り始めることになりました。

―北海道で脚本も書いたと伺いましたが、長い間滞在をされていたのですか?
監督 1か月間滞在しました。その間は本当に楽しかったです。助監督と一緒にスーパーに行ってお刺身とお酒を買って食べたり飲んだりして、北海道に知人もいるのでパーティを一緒にしたり、あと小樽にも行きました。一度激しくしりもちをついて危うく大けがをするところでした。札幌には接骨院が多いのですが、みんなこんな風に倒れたり転んだりするから多いのかなと思いました。

―本作では“マジック”がキーワードになっていますが、マジックをテーマにすることはどのタイミングで思いついたのですか?
監督 主人公がマジシャンということについてはシノプシスの段階で考えていました。北海道に女性がいること、マジシャンが流氷の中に消えて行ってしまうということもシノプシスに入っていました。

―マジックはお好きですか?
監督 マジックって男にとっては幻想的なところがあると思います。自分もマジックができたらいいなと思っていたのですが練習するのが大変ですよね。ファンタジー的な要素には使えるし、主人公がマジシャンというのは素敵なことだなと思いました。普段自分ができないことを映画になかで代わりにやってみました。日本には有名なマジシャンの方がいらっしゃいますし、韓国よりマジックが盛んな気がします。

―マジックはMr.マリックさんが監修していらっしゃるんですよね。
監督 自ら出演もしていただいて、監修もしていただきました。本当に助けていただきました。特に古川さんがマジック大会に出るために練習しているシーンは、実際に大会に出る人がこんな練習をしているんだということを見せて教えてくれましたし、どんなふうに練習したらいいかも教えてくださいました。

―古川さんは実際にマジックはされていたんですか?
監督 そうなんです、古川さん自らやっているんです。練習したうえで演じてくださいましたので、見ていたら古川さんマジシャンとしてもやっていけるんじゃないかというくらいでした。コインのマジックがあり、私もやり方を聞いたのですができなかったのですが、彼は見事にやっていました。

―古川さんの出演はどのタイミングで決まったのですか?
監督 タイミングで言うと最後のほうでした。もともとは綾瀬はるかさんのマネージャーの紹介でお会いしました。彼に決まるまではいろいろな俳優のスケジュールを調べたり、たとえスケジュールが取れてもマジックの練習もできる人を探していました。

―マジックをやると聞いたとき、古川さんはどのような反応をしていましたか?
監督 最初からマジックのシーンも怖がってはなかったです。もしかしたら心の中では心配はしていたかもしれませんが、全くそのようには見えなかったです。実際やってみたらマジシャン的な手を持っている感じで、本当に器用です。見ていると本当にマジシャンがやっているような手つきでした。

―ほかに古川さんとの記憶に残るエピソードはありますか?
監督 冷たい水の中に入るシーンが多かったことです。ほかの方も水の中に入って撮っていたのですが、古川さんが入るシーンが多かったです。冷たい水の中に入って頑張ってくれました。北海道でも水に入り、東京でもプールで撮ったので、プールに入るときにはあとでお湯に変えました。

―藤井武美さんは、1万人のオーディションから選ばれたということですが、起用の最大のポイントは何ですか?
監督 初めは動画で彼女の様子を見たのですが、たくさん見た中で一番純粋で、見ていて心がときめきました。ワクワクしながら彼女の様子を見ていました。堂々としているところもあって、若いのにしっかりしているなと思います。

―監督の作品というとピュアな作品がモチーフになっていますね。
監督 私は純粋な愛を描くのが好きなんですが、今回は特にドッペルゲンガーが出てきます。これまではドッペルゲンガーというと悪い部分ばかりが取りあげられていた気がするのですが、今回の映画ではいい部分を描いてみたいと思いましたので、なおさらピュアなイメージ、そして清らかな清純なイメージを求めていました。

―監督の『更年期的な彼女』でも主人公の髪型が気になりましたが、その時は監督が提案されたと聞きました。本作でも藤井さんが同じような髪型をするシーンがありますがそれは監督のお気に入りだからですか?
監督 本当は『レオン』のマチルダにしたくて、最初は『更年期的な彼女』の髪型にするつもりは全くなかったんです。そして、今回劇中で『レオン』のポスターを使おうと思ったのですが使うことができず『更年期的な彼女』に変更したので、髪型は似ているのですが当初は予定にはなかったんです。

―本作は富川国際ファンタスティック映画祭で上映されました。監督の母国での上映でしたが、その時のお気持ちはいかがでしたか?
監督 本当に嬉しかったです。日本の俳優さんたちと日本で撮った作品ですし、その俳優さんたちも来てくれたので、韓国で上映されて嬉しかったです。その時のチケットが1分で売り切れるほどでしたので、これからこの作品に対していろんな希望が持てるんじゃないかと思わせてくれました。私にとっては富川国際ファンタスティック映画祭がこの作品のプロモーションのスタートだなと思うことができました。

STORY
本作は、流氷の北海道・知床と東京を舞台に、同じ容姿の2組の男女が織りなす神秘的で幻想的な「愛」の物語。主演を務めるのは、日本をはじめ、中国などのアジア全域で人気の古川雄輝、ヒロインには1万人のオーディションから選ばれたシンデレラ・ガール・藤井武美。それぞれが1人2役という難しい役どころを演じた2人を、竹中直人、袴田吉彦、中田喜子らが支える。監督・脚本は、『猟奇的な彼女』、『ラブストーリー』、『僕の彼女はサイボーグ』などのヒット作で知られるクァク・ジェヨン。


TRAILER

DATA
映画『風の色』は2018年1月26日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国で公開!
監督・脚本:クァク・ジェヨン
出演:古川雄輝、藤井武美、石井智也、袴田吉彦、小市慢太郎、中田喜子、竹中直人
配給:エレファントハウス/アジアピクチャーズエンタテインメント/カルチャヴィル
©「風の色」製作委員会

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