『ザ・シークレットマン』ピーター・ランデズマン監督 単独インタビュー

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INTERVIEW

ピーター・ランデズマン監督

ウォーターゲート事件を内部告発したFBI副長官が明かした衝撃の実話を基にした映画『ザ・シークレットマン』でメガホンを取るピーター・ランデズマン監督にインタビューを行った。

―このテーマを映画化しようと思ったきっかけを教えてください。
監督 このような内部告発物は自分の興味を惹きつけて止まないもので、長年こういった題材に興味を持ってきました。それはおそらく“不都合な真実”が、それを封じ込めようとする巨大なものに勝てるかどうかがテーマだからだと思います。終わりのない戦いだと思います。もうひとつは、小さなものが大きな何かに対峙して戦う、人間が組織と戦う、この構図は人間が語り継いできたものだと思います。今回は実話なので、より人を惹きつけるものだと思ったのがきっかけです。

―40年以上前が舞台ですが、まるで現代のように感じました。
監督 それは意識していて、あえて時代性を出さないようにしました。ケネディ大統領の暗殺を描いた『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(2013)という作品を以前撮っていますが、時代物を撮るときはなるべく現代性を出すように、今起こっているかのように撮ることを意識しています。カメラワークもコンテンポラリーにしていますし、衣装も衣装デザイナーにお願いして、着慣れた感、よれ感を出すように意識しています。セットの装飾も、美術も現代性を意識しています。今回は色調を青みがかったものにしています。今っぽい、昔っぽいということを超えて、今起こっていることとして、ある意味タイムレスなものに仕上げられるように心がけています。

―主人公のマーク・フェルト役にリーアム・ニーソンさんを起用していますが、その経緯を教えてください。
監督 すんなり決まりました。彼は本作のプロデューサーであるリドリー・スコットと友人なのです。(ランデズマン監督の)前作の『コンカッション』(2015)を見せて、その後ランチをして、その1時間後には出演を承諾してくれました。内容や題材に関してはよく理解してくれました。ただ、彼はアイルランド人なのでいわゆるアメリカンヒーローを演じることには不安があったようです。これに関しては普遍性があるテーマだということで大丈夫だと僕から言いました。そもそも役者は他人を演じることが仕事ですからね。

―マーク・フェルトさんご本人とお会いしたそうですが、その印象はいかがでしたか?
監督 かなり年を取っていて疲れていました。92歳だったので、もう人生潮時のような感じはありました。娘を溺愛していました。ディープ・スロートだと名乗り出た後だったのでほっとした感じはありました。

―マーク・フェルトさんと演じたリーアム・ニーソンさんの共通点はありますか?
監督 品位もありますし、見た目的にも似た部分があります。マーク・フェルトはFBIの中ではある種スパイのようなものですが、多くを語らずという方だったので、静かでじっとしているタイプでした。リーアム・ニーソンもそうで、彼の芝居の中には高潔性があるところがいいと思います。

―演出するうえで特に印象に残っていることはありますか?
監督 ベテランの役者であれば監督の指示を聞き入れてくれて、エゴはそこまでありません。それと同時に自分の体の使い方、顔の使い方を熟知しているので、リーアム・ニーソンも自分の顔の使い方を分かっています。でも一度だけケンカになったシーンがあって、“事実を知らなかった”という設定だったので、私は知らなかったことを顔で表現してほしかったんです。そのため「もうちょっとリアクションしてくれ」と言ったら、「いや、リアクションした。大丈夫だ」と言われました。なので「足りないからもう一度撮りたい」と言ったのですが、彼は譲らずに「スクリーンで観たら分かるから」と言われましたが、結局もう1カット演じてくれました。朝4時でイライラしているのもありましたが、そういったやり取りはありました。

―非常に有名というわけではない人物を調べ上げることはとても大変だと思いましたが、調べるうえで最も苦労した点はどこですか?
監督 良くも悪くも彼が有名人でないことがリサーチに影響を与えました。資料がないことは難しかったのですが、周囲の彼への見方に影響を受けずにまとめることができたのはよかったです。

―マーク・フェルトさんへの評価は分かれているようですが、監督はどのようにお考えですか?
監督 僕は英雄だと思います。マーク・フェルトへの批判する声は、あれは復讐心からやったのではという声ですが、そういう人ではなかったと思います。彼があのような行為に及んだのは、FBIの副長官として職務を全うすべきという考え方があって、それを覆されるのが嫌だったからです。娘との関係、妻との関係が浮き彫りになりましたが、とてもつらい家庭生活を送っていました。娘や奥さんを愛していましたが、奥さんたちは多くの犠牲を払っていました。それまではどれだけ家庭生活に負担が重くのしかかっているかは分かりませんでしたが、お会いして分かりました。昇進を逃した復讐心などは到底考えられませんでした。

―撮影が行われた2016年の春~夏ごろは大統領選の時期でしたが、映画を撮るうえで影響はありましたか?
監督 観客の受け取り方が変わるかもしれないと思いました。これは必ずしもいいことではないと思います。ホワイトハウスのニュースで連日もちきりとなり、視聴者も飽き飽きしていて、食傷気味になっていたので、逆効果かもしれないとは思いました。

ピーター・ランデズマン監督

STORY
アメリカ合衆国史上初めて任期途中で辞任に追い込まれた第37代リチャード・ニクソン大統領。その引き金となった“ウォーターゲート事件”の全容を白日の下に晒し、ニクソン政権の不法行為や腐敗を暴いた内部告発者がいた。世界中で様々な憶測と関心を呼び、30年以上に渡り正体が謎とされた通称「ディープ・スロート」と呼ばれた匿名情報源の正体は“FBI捜査官の鑑”とまで称賛された当時のFBI副長官マーク・フェルトだった。なぜ彼は極秘の捜査情報をマスコミへリークしたのか?アメリカを揺るがしたウォーターゲート事件とは何だったのか?国を守るFBI捜査官が自らの家族やキャリア、そして将来をも危険にさらし、全てを犠牲にしてまで真相を暴くに至った全貌を描いた。


TRAILER

DATA
映画『ザ・シークレットマン』は2018年2月24日(土)より新宿バルト9ほか全国で公開!
監督・脚本・製作:ピーター・ランデズマン
出演:リーアム・ニーソン、ダイアン・レイン、マイカ・モンロー、ブルース・グリーンウッド
配給:クロックワークス
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