谷崎潤一郎の短編作品を原案にした映画『悪魔』に出演する大野いとに単独インタビューを行った。
大野いと オファーを受けたときは純粋に嬉しかったですし、谷崎潤一郎さん原案の話に魅力を感じました。題名を聞いて、どんな話なんだろうとワクワクしながら台本を読ませていただきました。少し奇妙でもあって、主人公の男の子を惑わすという役どころにも魅力を感じました。
―難しい役どころだと思いますが、演じるうえで心掛けたことはありますか?
大野いと 私とは正反対のタイプの女の子だと思ったので、高校生時代にいた(自身が演じた)照子に似た女の子を何人か想像して役作りをしました(笑)
―監督からの演技指導はいかがでしたか?
大野いと 目線の動かし方をよく教えていただきました。
―主演の吉村界人さんとの共演はいかがでしたか?
大野いと どんなお芝居をする方なんだろうという楽しみがありました。実際に共演させていただくと、お芝居での存在感をすごく感じましたし、オン オフの切り替えがしっかりとしていて、撮影に入ると全く別人の様で、そういう面でも尊敬しました。
―母親役の山下容莉枝さんとはいかがでしたか?
大野いと 声が本当に美しくて、劇中で「照子!」と呼んで下さる声がとおっていてキレイだなと思っていました。照子のお母さんだ!と思うほどぴったりでした。控室でも気さくに話しかけてくださって、コミュニケーションもたくさん取らせていただいたので、それを映像に活かせたと思います。
―一番難しかったシーンはどこですか?
大野いと ビンタするシーンが難しかったです。監督には「スナップをきかせて」と言われたんですけど、それがうまくできなくて・・・。人をビンタするの難しんですよね。一回キレてバシッとやるくらいだったら思い切りできるんですけど、何度も何度もあざ笑うようにするのは難しかったです。
―本気でいきましたか?
大野いと 本気でいきました(笑)
―クライマックスのシーンがとても印象的ですが、特に気にかけたことはありますか?
大野いと 本当に寒い撮影でした。吉村さんは血のりだらけで、血のりは乾くし冷たいし、今にでも風邪をひきそうなくらいでした。この人死んじゃうんじゃないかという思いが視覚的にも感情的にもわいてきたので自然に演じられました。照子自身は何も思ってないんですけど。人が死ぬとかに対して気持ちが平坦なんです。残酷なシーンだなと思いました。
―撮影はいつでしたか?
大野いと 4月くらいに埼玉の岩槻で行いましたが、4月とは思えないほどの寒さでした。
―完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
大野いと 毎回そうなんですけど、1回目はとても緊張します。観終わったときにこんなにも奇妙で、背筋が凍るような映像になっていることに驚きました。撮影しているときは本当にタイトなスケジュールでしたが、完成を観たら凝縮した期間で撮った作品とは思えませんでした。
―100年以上前の谷崎潤一郎さん原案の作品を今映画として出すことについてはどのように思いましたか?
大野いと この作品がちゃんと置き換えられているのかは分からないです。100年前の作品ですが、今にも通じるものがありますし、谷崎さん独特の妖艶さが長く愛されているのではと思います。そういった作品に出ることができて嬉しいですし、谷崎潤一郎さんの作品を好きな方たちに受け入れてもらえるかが楽しみでもあり、不安でもあります。
―撮影時の思い出深いエピソードはありますか?
大野いと 撮影を行った家でスタッフさんが寝泊まりしていたんです。朝現場に行ったら、「おはようございます」と言って衣裳さんが押し入れから出てきたんですよ。ドラえもんかって(笑)それが本当に面白かったです。あと、私はとても寒がりなので、4月なのに、ものすごく寒かったという印象が強いです。みんなでストーブの取り合いでした(笑)普通の家なんですけど、映像にしたときに何でこんなに不気味に映るんだろうと思いました。監督が見ているカメラで見たときに驚いたという印象があります。
―吉村界人さんと前田公輝さんというお二人の男性が出演しますが、女性としてお二人の役を見たときにどう感じましたか?
大野いと お二人とも役になりきっていたので、撮影中はずっと役のリアルな目で見ていました。そう思うと前田さん演じる鈴木は、“不潔”が一つのテーマになっているので、そこがどうしても受け入れられないと思いました。吉村さんが演じる佐伯は魅力的だと思いました。ハマってしまう人はいるのではないかと思いました。鈴木はよくわからない人というのはあります。監視カメラとか、人を監視する人は怖いですね・・・。
―大野さんは幅広い作品への出演が続いていますが、今後挑戦してみたい役はありますか?
大野いと 私は馬が好きで、競馬のドラマ(「馬子先輩の言う通り」)に出演させていただいたときに馬に触れ合う機会が多かったんですけど、またいつか馬と一緒に出るドラマとか映画に出たいなというのがあります。あとは日本舞踊を大学生から3年くらいやっているので、それを活かせる役をやってみたいです。
―2018年が始まりましたが、女優としての目標はありますか?
大野いと 一緒にまた仕事をしたいなと思ってもらえるように、一つ一つの作品をじっくり楽しく取り組んでいくことが目標です。
―最後に、本作を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
大野いと 谷崎潤一郎さんの「歪んだ純愛」の形が独特の世界観で描かれていると思います。それが癖になるんじゃないかと思います。ジャンルとしてはサスペンスホラーだと思いますが、観ていて、この3人はこの後どうなっていくんだろうドキドキしてみていただけたらなと。映像もきれいですし、ちょっと背筋が凍るような作品なので、ぜひ谷崎潤一郎さんを知らない人にも観ていただけたら嬉しいです。
近代日本文学の大文豪・谷崎潤一郎の短編作品の中から、年齢もキャリアも異なる3人の映画監督が現代劇として甦らせた「谷崎潤一郎原案 / TANIZAKI TRIBUTE」。『悪魔』の原案となったのは、谷崎の初期作品である「悪魔」(明治45年発表)と「続悪魔」(大正2年発表)で、強迫観念に襲われ続ける人間が、死の恐怖からくる妄想に苦悩する心理状態を描き切った作品。吉村界人、大野いと、前田公輝らが共演。
谷崎潤一郎原案 / TANIZAKI TRIBUTE『神と人との間』『富美子の足』『悪魔』
『神と人との間』は2018年1月27日(土)よりテアトル新宿ほか全国で順次公開
監督:内田英治
出演:渋川清彦、戸次重幸、内田慈
『富美子の足』は2018年2月10日(土)よりテアトル新宿ほか全国で順次公開
監督:ウエダアツシ
出演:片山萌美、淵上泰史/でんでん
『悪魔』は2018年2月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国で順次公開
監督:藤井道人
出演:吉村界人、大野いと、前田公輝
配給:TBSサービス
©2018 Tanizaki Tribute製作委員会