映画『亜人』でメガホンを取る本広克行監督に単独インタビューを行った。
―映画化の経緯を教えてください。
本広克行監督 何年か前にアニメ版を(本広監督が所属している)Production I.Gで作らないかという企画コンペの話があって、おもしろいタイトルだとインプットしていました。その時はパラッとしか読んでいなかったんですけど、何年か経ってから実写化の話があって、「来た!」と思いました。
―大変人気のある原作ですよね。
監督 原作モノは、これまであまりやってこなかったんです。漫画原作の作品を映画館で見るときに、原作と全く一緒だと「漫画でいいじゃん」ってなる。でも、あまり変えられると「こんなのを見たいわけじゃないよな」とモヤモヤする。だから、あまり実写モノは見ないようにしていたんです。話が来た時に、映画ならではの物語で、(原作を)読んだ人も「はいはい、なるほど」と着地するにはどうすればいいかと考え、なるべく内容は変えないで、キャラクターを少なくシンプルにして、『亜人』の場合はアクションにしようと思いました。だから、オープニングはめちゃくちゃ展開が早いんです。これは何だということに全く触れないで物語が進む。映画が好きな人は、映画の中で決められたルールをガッツリ教えられても「ふーん」と思うだけなので、それよりもキャラクターたちの行動から彼らの感情が見ている人に伝わったらいいなと思って作っていきました。あと女性に観てもらいたいアクションだと思ったので、“かっこいい”と“きれい”にこだわろうと思いました。
―予告を観たときに、まず“かっこいい”と思いました。
監督 プロデューサーが予告は徹底的にこだわりましたね。あの頃に流行っていた系統の音楽を多用しましたね。
―本編にはYouTuberも出ていますね。
監督 ウチの子供が中学から高校に上がる頃だったんですけど、あの子たちが好きなものと自分たちが好きなものが全く違うので、あの子たちが好きなものってなんだろうと考えました。彼らは、寝ながらパソコンを使うんですよ。あれがあの子たちのスタイルです。また、本作にはHIKAKINさんに出演してもらいました。子どもたちの世代でマスに発信したときに、主となるのがYouTuber。そして、その中でキングはHIKAKINさん。実は以前から仲良くしてたので、直接メールして出演を打診しました。
―見たことないような構図で、きれいな映像だったというイメージです。泥臭い感じもありつつも、映像がきれいでしたね。
監督 女性の観客を想定して、血をとにかく抑えようとしました。あと子どもたちにも見てもらいたいから、R指定はなるべく外したい、PGも外したいとがんばりましたね。結局Gになりました。切断するシーンもなく、血が噴き出る描写も直接はないです。ただ、健君の芝居がリアルすぎて、スニークプレビューで観てもらったときには、血とか刃物の表現ではなくて、健君の芝居にやられていました。
―血の描写が多いと見るのを敬遠しちゃうこともありますね。
監督 血は男のほうがしり込みしちゃいますよね。あと体がバラバラになるという設定もダメみたいです。ただ今後はこういう表現の戦いになるんだなと思います。人って大好きなんですよね、R指定がついたような暴力とかセックスの描写が。麻痺しちゃっている。僕らはエンターテインメントとしてみんなに見てもらいたいので、あんまりそういう描写がはっきりしているとダメです。よく映画監督同士で“真似する人がいるよって”論争になるんです。レイプシーンとか、人を殺すシーンとか、模写する人がいる。“やっていいんだ”って思っちゃうらしくて、それは一番危ないと思いました。TV出身なのでそういうところを特に気にしてしまいますが、映画の人たちは自由にやっている感じが本当にうらやましいとも思いました。
―その結果スッと入ってきて誰でも見れる作品になりました。
監督 誰が見てもどこから見ても大丈夫なように徹しました。映画を見て、トラウマみたいになっちゃう人いるじゃないですか。人は人に影響を与えます。脳みそ出ちゃったりするのは僕は大好きなんですけど(笑)、商売するなら避けなきゃいけないなと思います。
―本広監督の作品はコメディがおもしろいイメージがありますが、今回はシリアスな作品です。監督が受けられたときにどのように作ろうと思ったことはありますか?
監督 今回ケラケラ笑うのは難しい。基本は笑って泣けて、最後ちょっと元気になるとか頑張ろうという気持ちになれるように映画を作っています。今回は笑いは薄いんですけど、時々IBMでボケさせようとしました。健君とかみ合わない部分とかで。作っているときはみんなクスクス笑っていました。特に子どもたちはIBMで笑うらしいです。あんまりやりすぎると怖くなくなっちゃうので薄めにはしておきましたけど。
―IBMと対峙するなど、CGのシーンがありますよね。佐藤さんや綾野さんが対峙する、見えない敵と撮るときはどのような感じでしたか?
監督 DVDの特典映像に入ってるんですけど、グリーンスーツを着たスタントマンがいるんですよ。その人と全部一緒にお芝居をするんです。その芝居を見て、IBMがこうだからとお話をして、今度はIBMなしでお芝居をするんです。いる感覚でやるんです。それを何度か繰り返して、VFXチームが計測をして、というすごく大変な作業をやりました。アクション部は稽古からガッツリやってるので、複雑な動きのシーンは、まずスタントチームで映像を作っちゃうんです。そのあとみんなでミーティングして、現場に行ってまずはみんなで稽古をして、そのあとグリーンマンを入れて稽古をして、そして誰もいない状態で撮影をする。いろんな空気感を撮っていく。めちゃくちゃ手間がかかるんです。
―どうやってるのか気になっていました。
監督 それは特典映像にたっぷり入っています(笑)めちゃくちゃ笑えます。楽しいですよ。こういう風に撮っているんだと思えます。
―本編のシリアスなところと見比べるのも楽しみですね。
監督 特典映像のビジュアルコメンタリーも面白いので是非ご覧になって頂きたいと思います。グリーンマンの動きが全部CGに活かされているのが分かります。
―川栄李奈さんもかなりアクションを演じています。
監督 「AZUMI」という舞台でアクションはやっていたみたいです。アクション稽古では最初戸惑っていたようですが、さすがアイドルグループで鍛えられているだけあって、驚くほどのみこみが早い。城田君との相性が良かったですね。今は人気が出すぎちゃって、『亜人』の撮影以降は全然会えていないですね。彼女は、うちにきて鍋を作ったこともあります。“入ってくるねー”と思いました(笑)。現場でもコミュニケーションを取りやすかったです。特にアクションだと、声をかけにくい人には「大丈夫?」くらいしか言えないけど、仲良くなっているともっと深く聞くことができますから、コミュニケーションは大事だな、とあらためて思いましたね。
―“殺しても死なない作品”ということで、映像化するうえでの苦労があったと思います。
監督 原作の設定では、頭を切れば死ぬ。あとはドラム缶に詰めて、ループにはめることもある。それが亜人たちの動きを封じることになる。原作では、そうした亜人たちの恐怖もあるんですけど、今回は描かないことにしました。映画が始まって1時間ほど経つと、子どもたちがトイレに行きたくなるんです。“いいところで席を立っちゃうの?”とならないように、なるべく時間を短くしようと思いました。
―改めて、本作の注目のポイントを教えてください。
監督 特典がめちゃくちゃ豊富で、撮っているときから特典を意識していました。城田君や川栄さんのシーンは本編ではだいぶカットされてるんですけど、「特典に入ってるから」と言ったら、城田君は「本編で使ってください!」って(笑)。大ボリュームの特典映像になっています。
ハードなサスペンスが注目を集めたカリスマ的人気を誇る桜井画門原作の大人気漫画を実写映画化した本作。主人公・永井圭役を佐藤健、不死身のテロリスト・佐藤役を綾野剛が演じる。また、原作でも人気の高いキャラクター、厚生労働省・亜人管理委員会の戸崎優役を玉山鉄二が演じ、城田優、千葉雄大、川栄李奈ら豪華俳優陣が脇を固める。コアな漫画ファンをも納得させるハイクオリティな作品に仕上がっている本作の監督には、数々の大ヒット作品のメガホンをとってきた本広克行。
映画『亜人』ブルーレイ&DVDは2018年4月18日(水)発売!
■Blu-ray 豪華版 6,800円(税抜)
■DVD 豪華版 5,800円(税抜)
■DVD 通常版 3,800円(税抜)
※Blu-ray&DVD4月4日(水)よりレンタル開始
監督:本広克行
原作:桜井画門(講談社「good!アフタヌーン」連載)
出演:佐藤健、玉山鉄二、城田優、千葉雄大、川栄李奈、山田裕貴、浜辺美波、品川祐/吉?和子/綾野剛
発売元:東宝・講談社
販売元:東宝
© 2017映画「亜人」製作委員会 ©桜井画門/講談社