映画『バオバオ フツウの家族』でジョアン役を演じるクー・ファンルーにインタビューを行った。
―これまでに見たことがないタイプの映画で楽しく拝見しました。物語をはじめに聞いていかがでしたか?
クー (脚本家の)デン・イーハンさんはレズビアンですが、子どもを産んで育てたいという思いがありました。しかし、今の状況ではそれは不可能なので、どうして不可能なのか、どうしたら解決するのかというのを自分の脚本で問題提起をしています。そしていくつかの解決方法をこの脚本の中で投げかけていると思います。そういう背景があるので、とてもリアルで、力強い脚本だと思い、私は個人的に感動しました。特に彼女の脚本には、特別な人じゃなくても、だれでも普通の人がこの話を聞いたり見たりして、感動できるような、共感できる部分がかなりあると思いました。
―クー・ファンルーさんが演じるジョアンというキャラクターがとても人間味があると思いました。特に意識して演じた点はありますか?
クー とても人間味の豊かなキャラクターです。特にシンディとの関係性で、ジョアンがどういう存在が浮かび上がってくると思います。2人の関係の中で、シンディは大木のような感じで、ジョアンは周りを囲んで守っているような存在です。2人の関係はレズビアンという間柄ですが、私の周囲にも多くいるので、私は自然にそういったところを捉えられていきました。でも、主にジョアンの役を演じるにあたってはレズビアンだからというところに特化して演じてはいません。1人の人間として、この気持ちを表現していくかというところ、彼女自身に共感するように演じていきました。このキャラクター造形は私と監督と、もう1人、イギリスに滞在している日本人のメイクアップアーティストの力が大きかったです。ジョアンを監督は特に思い入れがあったそうです。メイクアップアーティストも、私が演じるジョアンを女性らしい方向にもっていってくれたと思います。
―具体的にどのような形でキャラクターを作り上げたのですか?
クー メイクアップアーティストなので直接私のメイクをするときに、キャリアウーマンという強い存在でありながら、それでもエレガントな面を強調してメイクしてくださいました。特にロンドンに長くいらっしゃるメイクアップアーティストなので、ジョアンが長く暮らし仕事をしているので、そういった点については私よりも、ロンドンにいる外国から来た人というキャラクターを作るうえでより彼女のほうが詳しかったです。
―本作の物語で、ご自身が共感する部分はありましたか?
クー 特にシンディへの思いというところで、性別関係なく共感するところがあると思いました。男女関係なく、1人のパートナーに対する思い、時には2人の間で誤解が生じることもあるし、誤解が消えるまでどのようなプロセスをたどるかもいろんな人に共感していただけると思います。
―シンディとジョアンは女性同士ですが、男女間に置き換えてもありえるお話ですよね。
クー そういうことですね。
―去年台湾で公開されたということですが、その時はどのような反響がありましたか?
クー 見終わった後に、私の女性の友人がやってきて、私も女性が好きなんですって告白してくれました。もう1人の女性の友人は、映画を見ながらずっと泣いていたと言ってくれました。もう1つは、ジョアンとシンディが愛をはぐくむためにどれだけ苦労をしているかという面を見て、ある男性が、これは僕が彼女と大変なのと同じだねとおっしゃってくださいました。
―これから日本で公開されますが、見てほしいところはどこですか?
クー この作品は、性別に関係なく、いろんな立場の人が見て共感してくださるものだと思います。個人的には、この映画は、愛がどういうことなのかを語っていると思います。4人の主人公以外にも、彼らの家庭の事情で両親が出てきます。そういう両親が愛を表現する方法も違うのでそこにも注目してほしいです。私は、邦題がとても気に入っています。日本でも、3.11以降、家族というものに注目が集まっていると思いますが、“普通の家族とは?”ということをこの映画をご覧になって、日本のみなさんに考える機会になってほしいと思います。
アジアで初めて同性婚が認められた台湾発の少し先を行くフツウの家族の物語。「赤ちゃんが欲しい」と、ロンドンに住む2組の同性カップルが協力して妊活を始める。双子を妊娠したシンディは、ひとりロンドンから台湾に戻る。不安と悲しみに満ちた彼女が頼ったのは幼馴染の警官タイ。かねてよりシンディを密かに思っていたタイは、理由も聞かずに自分がお腹の子の父になると言うのだが、シンディの心は癒されない。子供を持って家庭を築きたいと願うシンディとジョアンがようやく待望の子宝に恵まれたのに、なぜ彼女はひとりで帰国したのか―。
映画『バオバオ フツウの家族』は2019年9月よりK’s cinemaにて公開!
監督:謝光誠(シエ・グアンチェン)
出演:雷艾美(エミー・レイズ)、柯奐如(クー・ファンルー)、蔭山征彦、蔡力允(ツァイ・リーユン)、楊子儀(ヤン・ズーイ)
配給:オンリー・ハーツ/GOLD FINGER
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