『君が世界のはじまり』片山友希×金子大地 インタビュー

INTERVIEW

ふくだももこ監督最新作『君が世界のはじまり』で主人公・えん(松本穂香)と同じ高校に通う同級生・純を演じた片山友希、伊尾を演じた金子大地にインタビューを行った。

お二人は初共演ですがとても息が合っていますね。

金子 それは僕も思いました。

撮影期間はどれくらいでしたか?

金子 僕は1週間くらいです。
片山 私は2週間くらいでした。少し早めに入りました。ずっと一緒でしたからね。

初めに台本を読んだときはどのように感じましたか?

金子 僕はオーディションだったんですが、その時から“僕が演じるなら伊尾なんじゃないかな”と感じるほど共感できる部分がありました。片山さんとはオーディションから一緒でした。自分の環境が変わったことへの不安だったり、どこかあきらめたりしているところは僕にもあったので、そこから役作りをしました。

片山さんははじめからこの役だと思いましたか?

片山 きっとこの役だというのがあったと思うんですけど、私自身には伝えられていなくて、縁と琴子と純の抜粋したセリフを何となく頭の中に入れてオーディションに行きました。終わってから監督に、「3人の中だったら誰が一番近いですか?」と言われて、私には縁と琴子の関係性はちょっと分からなかったので、「純です」と答えました。

実際に演じることが決まってから、役へのアプローチはどのように行いましたか?自分を出した部分もありますか?

金子 5割くらいは僕が出ていると思います。こう演じようというイメージはあったんですが、現場に行くと変わることもありました。完成した作品を観たとき、(伊尾と純の関係は)伊尾が振り回しているようで、実際には振り回されているような見え方に感じました。それは片山さんと一緒だったからかもしれないのですが、とてもよかったと思います。

片山さんはどのように作り上げましたか?

片山 すごく思ったのは、純にはお母さんがいなくて、お父さんを無視したりご飯を食べなかったりしていますけど、お母さんが出ていったのはきっかけではあるけどそれが原因ではないと考えていました。もっと他に思うことや純が持っているものから来ることなんだろうなと思っていて、母親がいなくなったせいではないと。他になんだろうと考えた時に、私自身が高校生の時に、“あの子にはあの子がいるけど、私には誰もいない”と思っていて、純には友だちがいるけど、友だちには恋人がいるというその嫉妬というか寂しさがあって、寂しさを伊尾で埋めようとするけど埋められないというもどかしさや寂しさを大切にしました。

細かい設定は出てきませんが、かなり深くまで掘り下げてから臨んだんですね。

片山 原作をすごく読みました。原作では純について深く書いていて、純目線の原作なのでそれに助けられたりしました。

原作もふくだももこ監督が執筆された小説ですが、監督からの演出で印象的だったことはありますか?

片山 私が伊尾を傷つけたいと思うシーンは、あんなに伊尾が大きい声を出すと思っていなかったのでびっくりしました。台本を読んでいるときは伊尾に嫌われたくないって思っていなかったんですけど、実際に演じたら“嫌われたくない”ってすごく思いました。それはきっと監督の演出であって、金子さんが私が思っている以上に感情をむき出しにしたからだと思います。
金子 監督はとにかくお芝居が好きなんだなと思います。何回もお芝居を繰り返すことが僕はあまり得意ではないのですが、ふくだ監督の演出によって、その中で見えてくることもあって、その中でよくなるものが確実にありました。ふくだ監督の演出は斬新だなと思いましたね。
片山 伊尾を傷つけたいというシーンはリハーサルの時は違ったよね?
金子 たしかにあんな感じではなかったね。
片山 台本が撮影中に変わって、自分がイメージしているものと違うことが何か所かありました。変わったおかげで私はああいう嫌われたくないという感情が出てきたと思います。

車に上ってましたね。

金子 最初は結構抵抗がありました(笑)あんなことは普段なかなか出来ないですから・・・。でも、楽しかったです(笑)撮り直すときはへこんだ部分を直して。直す作業は僕もスタッフさんと一緒にやりました。
片山 あと、車って案外下りやすいんです。
金子 新しい発見でしたね。

クランクイン前にはお話しする機会はありましたか?

金子 本読みが1回ありましたが、深く話すようになったのはクランクインしてからです。

撮影前と撮影後でお互いの印象は変わりましたか?

金子 僕が想像していたよりも何倍も男らしいと思いました、いい意味で。何事にも恐れないというか、強さを感じました。だからこそ僕が振り回されるように見えたのかなと思っています。片山さんがもともと持っている内面の強さは演じていてすごく感じました。
片山 私はずっと振り回されていると思っていたんですけど、今日初めて振り回されたと言っていて、“そんなに繊細だったのか!”と思いました(笑)金子さんはクールに見えるけど実際に話すと楽しい方と言うのは分かっていたんですけど、まさかそんなに繊細だったとは・・・。新しい発見をしましたね。
金子 繊細・・・ちょっと恥ずかしい(笑)女性に「繊細なんだ」と言われるのってなんだか恥ずかしいですね(笑)

お互いを知る機会も多くあったようですね。

金子 ここまで役としてぶつかり合うことってあまりない気がするので、そのおかげかもしれません。同い年だしね。

金子さんは東京出身という役どころですが、片山さんは劇中で方言ですよね。

片山 私は京都出身ですが、劇中では大阪弁です。関西の人から見たらニュアンスは違うと思うんですけどガッツリ京都弁でしゃべってましたね。

本作で特に注目して欲しいポイントはありますか?

金子 (登場人物と同じ世代の)高校生の方たちも、大きい小さい関係なく悩みはあるでしょうし、どこかあきらめている人もいるのかなと思いますが、そういう人たちに観ていただいて、がんばろうとか、人にやさしくすることとかが、少しでも伝わればいいなと思います。観てくださる全ての方に感情移入してほしいとは言わないですが、何か伝わるものがあればいいなと思います。
片山 特に意識はしていなかったんですけど、伊尾にまっすぐ見られるとビビってしまうんです。怖いとかではなくて見透かされてる気がするというか。お互いが一緒の空間にはいるんですけど、きっと目が合ってないんです。だから1回目は普通に見て、2回目は目線を見て欲しいです。

【写真/蔭山勝也、文/編集部】

STORY
ふくだももこ監督の原点である2本の短編小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を再構築し、一本の映画にするプロジェクトが実現。ふくだ監督にとっての「特別な物語」を託した脚本家は、その時代に傑出する話題作を手掛けてきた鬼才・向井康介。「40歳を越えて、もう青春映画を書くことはないと決めていた」と語る円熟の脚本家が、ふくだ監督の言葉のひとつひとつに突き動かされ、青い春のその瞬間にしか存在しないヒリヒリするようなエネルギーを新たなストーリーに結実させた。主演には、『おいしい家族』(19)以来、ふくだ監督と二度目のタッグとなる松本穂香を迎え、魂を焦がす青春映画の新たな傑作が、青春映画がここに誕生した。


TRAILER

DATA
映画『君が世界のはじまり』は2020年7月31日(金)よりテアトル新宿ほか全国で公開!
原作・監督:ふくだももこ
出演:松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい、板橋駿谷、山中崇、正木佐和、森下能幸、江口のりこ、古舘寛治
配給:バンダイナムコアーツ 
©2020『君が世界のはじまり』製作委員会

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