「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」長谷川敏行プログラミング・ディレクター

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INTERVIEW

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」の長谷川敏行プログラミング・ディレクターにインタビューを行った。本映画祭は、“若手映像クリエイターの登竜門”として、映画界の未来を担う新たな才能の発掘を目的に2004年より毎年開催してきた。今回は、新型コロナウイルス感染拡大防止および来場者、関係者の安全確保を第一に考慮し、オンライン配信で開催される。

今回オンライン開催に至った経緯について教えていただけますか?オンライン開催の方向性が見えてきたのはいつ頃ですか?

長谷川 オンライン開催の話をし始めたのは、3月中頃であったと記憶しています。ただ、まだ当時は作品募集中でしたし、当然オンラインは想定せずに募集を開始したので、そもそも開催ができるのかということを判断するのに、結構な時間がかかりました。なぜなら、コンペを行うということは審査員に作品を視聴してもらうことなので、上映を行わないのに判断をしてもらえるのかといった段階から、検討をしなければならなかったですので。ただ、開催を中止するということは、応募された作品をすべて無効にする、あるいは、来年の応募扱いにするということになるので、これは映画祭として一番やってはならないことだという意識は強かったので、応募された作品に対して責任をとること、すなわち開催するならコンペを、そして、それを安全に、確実にできる方法としては、オンラインしか道はないということになりました。これを決める議論が2か月以上、ただし、パートナーとなってくださる会社を決めない限りはできないことですので、これを決めるのにさらに2か月以上がかかり、ようやく7月下旬に、31日に発表した枠組みでの開催ということが固まりました。

作品の募集を開始した後で新型コロナウイルスの感染が拡大してきたということで、その影響を受けそうだと感じ始めたきっかけはありますか?

長谷川 ワクチンのない新型コロナウイルスを予防するのは、できるだけ密を避け、人との接触を持たないということしかない、ということになってきたとき、劇場に人を集めることは、大きなリスクを抱えることだという認識になりました。当時は夏になったら終息するなどという楽観論もございましたが、それまでには枠組みを固めておかなければならない私たちにとって、その選択肢は難しかったので、すでにオンライン開催という話が始まり、シネコン各社が4月8日から休業ということが決まった段階で、中止かオンラインの選択肢しかないという判断になりました。

オンライン開催に決まり、もっとも苦労した点はどこですか?配信という形式なるうえでの問題点などは?

長谷川 上映許諾の点では、日本作品では大きな問題はございませんでしたが、外国作品はいくら期間限定とは言え、オンライン配信してしまったら、もう日本で配給会社を見つけることができなくなってしまう、とほぼすべての会社から言われました。実際、どうしてもそれがネックとなり、泣く泣く断念した作品もございます。ただ、配信になることで日本の配給会社の方々にも作品を見てもらいやすくなると説明したうえで、視聴回数に制限をつけることや日本語字幕データの提供などを条件に、なんとか想定していた本数の作品の会社から許諾を得ることができました。ただ、上映許諾以上に、ゲストの登壇がない中でのプロモーションはたいへんだと思うので、一番大きな影響を受けているのは広報の者だと思います。

2月のベルリン国際映画祭は現地を訪れたと伺いました。日本では既にその兆候が見えてきていた時期ですが、現地で感じた違いや違和感などはありましたか?

長谷川 語りつくせないほど、今となっては貴重な体験をしました。まず、日系の航空会社でパリまで行ったのですが、キャビンクルーの方は皆さんマスクをしていましたし、乗客も多くが日本人でしたので、マスクをしている人がほとんどでした。ところが、ひとたびシャルル・ド・ゴール空港に着くと、本当に誰もマスクはしていない。逆にマスクをしているのが憚られる感じでしたので、そこからはまたパリからの便に乗るまでは、一切マスクはしないで過ごしました。が、ベルリン国際映画祭では、人の間をすり抜けて通らないといけないようなマーケット会場で、一日に十数社のセールス・ブースを訪れ、入れ替わり立ち代わり担当者から私たちの映画祭の規約に合う作品の紹介を受ける。そして、実際には計60件ほどのミーティングをしてまいりましたので、まさに、一番感染しやすい状況だったわけです。すでに、中国、香港の人たちは来ておりませんでしたが、アジア人同士では「大丈夫?」と言い合ったりしていましたが、ヨーロッパやアメリカの人たちは、まあ、まったく人ごとでした。ヨーロッパでは唯一、イタリアの会社の人が「急にフライトがキャンセルになった」と言って慌てている状況は目にしましたが。いずれにしても、帰ってきてからの2週間は、もうひやひやでした。ただ、3月頭に帰ってきて、そこからすぐに各社とのフォローアップを始めたので、各国がロックダウンしてしまう前に応募作品を集めることができたのは、本当にラッキーだったと思います。

今回の開催にかける思いなどがあればお願いします。

長谷川 例年真夏の一番暑いときにバスでお越しいただいていたお客さんたち、そして、これまで私たちの映画祭に興味があってもいらっしゃっていただくことができなかった遠方の方々に、今年はご自身のご都合のよいお時間にご自宅で作品をご覧いただける。それをポジティブに捉え、また、このような状況ですので、私たちの映画が、お客さんたちに何かしらの感動やエンターテインメントを与えることができればと願っています。また、映画祭の開催はオンラインとなりましても、お客さんとフィルムメーカーが繋がるような機会はできる限り作るつもりでおりますので、今後の発表も楽しみにしていただきたいと思っております。


TRAILER

DATA
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020は2020年9月26日(土)~10月4日(日)にオンラインで開催!

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