沖縄の離島を舞台に小説家の卵と少年の初々しい恋愛を描く劇場アニメ『海辺のエトランゼ』で橋本駿役の村田太志、知花実央役の松岡禎丞にインタビューを行った。
松岡 紀伊カンナ先生が描かれる世界観をどうしても純粋に映像で見たいと思いました。背景の海が、とても映像で映えると思いましたが、本当に映像化されるとは。先に予告映像を録った際、セリフのワード数はそんなになかったのですが、「映像からくる力を感じられる。本編見たらどうなっちゃうんだろう」と思いました。繊細な映像なのでたまりませんね。
村田 出来上がった世界観に寄り添う形でやらせていただきました。
松岡 ドラマCDでは自分たちでお芝居ができるんです。アニメだと間が存在するので、そういった面でも難しいといえますが、自然にやっていました。
村田 それは、全くないです(笑)ほぼ日常会話。世間が大変な真っ最中だったので、近況報告じゃないですけどそういった話ですね。ほかの現場でも、すり合わせるとか、ドラマCDでもしたことはないです。下地作りは作っているので、それが実際に本番でぶつかって、あとは合否を監督やスタッフのみなさんに判断していただくことになります。現場に途中から参加された方だと、「この作品はこうなんです」って説明することはあるんですけど、最初から一緒にやっているときはすり合わせる必要もないかなと思っています。
松岡 すごく繊細なものを納得するまでやっていたんです。休憩時間はあるのですが、休み明けということもあってうまくオンオフができなくて。徐々に精神的に疲れきってしまいました。それくらいその世界にいることが求められる。細かい感情を求められるので、そこにあわせてOKが出るまで妥協が許されないんです。
松岡 5月の末です。ちょっと後ろにずれ込みながらでした。
村田 駿は微妙なところだと思うんですけど、まだ3年前のほうが考えることが少ないと言いますか、気ままさが勝っていたと思います。駿本来のニュートラルな状態というかひょうひょうとした部分や何の気負いもなく過ごしているところは意識しました。3年経ってから、実央と過ごし出してからは、本当はしたいはずなのに、簡単にはいかない、気負っているものが見え始めて、心に余裕がなくツンとしている面があったと思います。
松岡 実央にとっても3年という月日は長く、実央自身も駿のことを考えるということもあり、自分でもかなり苦労して気持ちを消化していきました。ガラッと変わりましたね。間に何があったのかは、明確にさせたくなかったんです。何かがあった延長戦上で、実央が元気な男の子になったんだなという自然な流れにしたくて、それが難しかったです。やりすぎてもダメ、やらなさすぎてもダメというところが、いいバランスを求められました。ハイな状態でいきなりいくのではなくて、徐々に見せたいと思い考えて演じました。
村田 はっきりしていなかったり、頼りない部分があるかもしれないのですが、逆にそういうところが人間らしいと思います。
松岡 実央は感情をストレートに出すところがとても魅力的です。普通の人だと躊躇することでも、ガンガンいけるので見ていて気持ちいいです。
村田 大恋愛じゃなくても、人が人を大事にするということです。
松岡 背中を押してくれる作品でもあると思います。こういう世界に行ってみたいと思わせてくれる作品です。丁寧に作りこまれており、風の動きが分かるというのは初めてでした。「終わった!よかった」ではなく、静かに「よかった」と言ってもらえるような作品になると思います。
【写真・文/編集部】
小説家の卵の橋本駿と海辺に物憂げに佇む少年、知花実央。そんなふたりの初々しくも、もどかしい関係を描いた「海辺のエトランゼ」(紀伊カンナ作・祥伝社刊)が、BLアニメレーベル「BLUE LYNX」にて劇場アニメ。アニメ化にあたって、作者・紀伊カンナが監修、キャラクターデザインを担当。制作は2Dおよび3Dアニメーションを主軸とした映像制作を行っているスタジオ雲雀。監督を務めるのは大橋明代。2人のドラマと美しい沖縄の自然を、光、色彩、音、すべてにこだわり丹念に描く。駿と実央の繊細に揺れ動く心を表現する、駿役・村田太志と実央役・松岡禎丞の演技にも注目。静かにくり返す波の音。満天の星空。ゆったりと流れていく時間。訪れたものすべてを包み込む沖縄の離島で、純粋で、あたたかく、でも不器用なふたりの恋が育まれる。
映画『海辺のエトランゼ』は2020年9月11日(金)より全国で公開!
監督・脚本・コンテ:大橋明代
声の出演:村田太志、松岡禎丞
配給:松竹ODS事業室
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
©紀伊カンナ/祥伝社 on BLUE comics