現在上映中の『映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ』で恩田希役を演じた島袋美由利、越前佐和役を演じた若山詩音にインタビューを行った。
島袋 TVアニメが始まる前に劇場版で『ファーストタッチ』を公開するということは伺っていました。前日譚として、“こうして恩田希は生まれて、後にワラビーズという仲間ができるんだ”という過程を、アニメを楽しんで下さる方にも見ていただきたかったので嬉しかったです。
若山 (映画原作の)「さよならフットボール」について、劇場版でじっくりと語られるということだったので、恩田希というキャラクターへの思い入れを強く持ったままTVアニメを楽しんでいただけるようになるのかなと思ってワクワクしていました。(若山が演じる)佐和も中学校から恩田希と過ごしてきたので、希と佐和の関係も中学生時代から描いていただけるのかと思ったら嬉しかったです。
島袋 『さよなら私のクラマー』のオーディションの時に、「さよならフットボール」まで読みました。
若山 私は「決まったよ」とご連絡をいただいてから一気に全部読みました。「さよならフットボール」から順々に読んでいきました。時系列で読むと恩田希への思い入れが違っておもしろかったです。
島袋 劇場版の収録が先で・・・だいぶ前ですよね?
若山 去年の9月頃でした。
島袋 TVアニメは今年に入ってからです。
島袋 恩田希という人間が根本的に何かが変わったとは思っていなかったので、大きく変えた部分はありませんでしたが、中学校時代は悶々としている部分があり、そういった気持ちに寄り添えたらと思っていました。高校に入ってからはすごく楽しそうにサッカーをしていて、彼女の直感的なものについていくという感じで演じました。
若山 私は映画の時はのんちゃん(恩田希)を支えることに徹するという感じでしたが、のんちゃんの中学校の時の新人戦のプレーを見たりしたことで少し心境の変化が生まれたのかなと思っています。高校編では部員として入っているんですけど、彼女自身は試合に出るという覚悟を持てていなくて、技術も足りないだろうと思い込んでいる部分が心のどこかにはあると思います。
島袋 佐和ちゃんは常に恩田のことを見守ってくれていて、恩田が弱気になっている時には、「そんなの、のんちゃんらしくない!」と背中を押してくれる。時に母のようなポジションでありながら、誰よりも近くで親友として支えてくれている。そこが魅力だと思っています。
若山 (笑)
島袋 そんな佐和ちゃんが「のんちゃんのサッカーには夢がある」と言うシーンは、佐和ちゃんが心から恩田のサッカーに魅せられていることが画や声色から伝わってきてとても好きでした。
恩田は、向こう見ずというか無鉄砲というか、サッカーが好きというだけでどこまでもがんばれるし、サッカーが好きだから強硬手段でもなんでもして、試合で使ってもらおうとする。その後先考えないがむしゃらさが魅力です。
若山 恩田は、佐和目線で見ると、サッカーがすごく好きで、才能にも恵まれているんだけれど、努力を惜しまない、努力を努力とも思わずにやり続けて、とにかくサッカー一筋で突き進んでいくのが、輝いて見えているのかなと思います。自分にすごく自信を持っていて、新人戦に出れないのは自分が弱いせいではないみたいな(笑)フィジカルをがんばればいけるでしょうみたいな、自分の悪いところだと思わないみたいなところは人間が生きていく中で必要かなと思う部分なので魅力だと思いました。佐和については、あれだけ健気で努力家で優しいんですけど、実はちょっと自信がないというところがとても人間らしくて愛らしくてかわいらしいと思ったので、そういうところに魅力を感じていただけたらなと思いました。
島袋 恩田はサッカーしか見ていないような、気づいているやら気づいていないのやら・・・。私から見たら、あんなに見られてるんだから気付いて!と思いますけど(笑)
若山 一生友達としか思われてなさそうですよね(笑)
島袋 幼なじみや腐れ縁、といったくらいの意識で、男女としての関係性は意識してなかったです。ナメックは自分が鍛えた存在なのにフィジカルの面でだいぶ追い越されてしまっているので対抗意識はあるとは思いますが、それでも恩田の意識は“サッカー一直線!”という感じなので、想ってくれているということは気づいていると・・・信じています(笑)
若山 どうなのかなと思っていました。“のんちゃん大好き!”という気持ちがいつでも出ている感じだったんですけど、佐和は見返りを求めているわけではないので、“いつもののんちゃんでOK”、むしろそうであってほしいという感じだと思うんですけど、私は返ってこないな・・・そりゃそうかって(笑)佐和ちゃん的にはそれでOKなんです。
島袋 佐和ちゃんに対しては、恩田はお祈りしてくれるときとかにちょっとむずがゆい顔をしていたりとか、気持ちは受け止めているんですけど、それに対するリリースが全部サッカーなんですよ。いただいたものは全部サッカーで返す(笑)
若山 それが佐和ちゃんの生きがいなんだと思います。
島袋 サッカーのボールを蹴る音がリアルで振動まで伝わってきて「ピッチにいる」という臨場感がありました。選手ひとりひとりが常に動いていて、絶えずいろんな人の指示出しの声とか、応援の声が聞こえてきて、スポーツバーなどで観戦しながら見てみたいなと思えるようなものでありつつ、カメラワークが絶えず移動するので、恩田視点だったり、ボール視点だったりといろいろな視点からサッカーを楽しめるので、飽きずに試合を見続けられるなと思いました。
島袋 これまで全く見てこなくて、この作品に関わるようになってようやく、こんなに連日のようにサッカーの試合が行われているということを知りました。
若山 私はワールドカップは毎回チェックをしていて一喜一憂していたんですけど、女子サッカーに強く触れたことはなかったです。この作品に関わるようになってから調べるようになると、プロリーグもあり盛り上がっているというのを知って、観戦しに行ってみるとすごくかっこよかったです。画面の向こうじゃわからない良さがその場にはあるのでこれからも追いかけていきたいと思いました。
島袋 サッカーが好きでも、サッカーを知らなくても、サッカーに苦手意識がある方でも楽しんでいただける作品だと思っています。試合のシーンでは様々なカメラワークからサッカーを楽しむことができるのもこの作品の魅力の一つだと思っています。恩田の後ろを振り返らない強さや、もがき続けるからこそ生まれる輝きが、この100分強に出ていると思うのでそこも見ていただけたらと思います。
若山 恩田希という人物にスポットを当てていて、希の心情が丁寧に描かれているんですけど、ほかの登場人物の心の中も丁寧に描かれています。一人一人の青春も美しく、そして熱く描かれているので、ついつい応援したくなっちゃうと思います。見ている人と、佐和ちゃんが一緒になって、みんなを応援するような作品になっていると思うので、一緒に熱い物語を見届けていただけたらなと思います。
【写真・文/編集部】
大人気コミック『四月は君の嘘』の新川直司が描く新たな“部活”ストーリーのフィールドは、女子サッカー。恩田希は、子どもの頃から男子にまじってサッカーを続けてきたが中学校では大きな壁にぶつかる。“身体差<フィジカル>”─それでも、希は諦めない。“女子だから”という言葉をはねのけ、大好きなサッカーを仲間と続けるために。男子サッカー部のなかで苦闘する中学生編と、女子サッカーの頂点を目指す高校生編で送るリアルで、熱い、青春の物語。いま、希は、見る誰をも魅了する、ファンタジスタとなる─。
『映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ』は絶賛上映中!
監督:宅野誠起
声の出演:島袋美由利、若山詩音、内山昂輝、逢坂良太、土屋神葉、白石涼子、遊佐浩二
配給:東映
©新川直司・講談社/2021「映画 さよなら私のクラマー」製作委員会