『裏ゾッキ』篠原利恵監督 インタビュー

INTERVIEW

映画『ゾッキ』の舞台裏を描いたドキュメンタリー映画『裏ゾッキ』の篠原利恵監督にインタビューを行った。

『ゾッキ』のロケハンの時期から撮影を開始したと聞きました。撮るのが決まったのはいつでしたか?

監督 2020年の1月でした。『ゾッキ』の伊藤(主税)プロデューサーとお会いして、蒲郡と映画の状況を伺ってすぐに撮り始めました。

事前の打ち合わせはせずに?

監督 ないです。蒲郡の町や人にカメラを通して出会いたかったので。

それはドキュメンタリーではよくあることなんですか?

監督 今回は映像に蒲郡という土地を知っていく過程や驚きも写し込みたいと思ったので、カメラを持った状態で出会うという形で撮りました。内容によってはきちんと調べていくべきものももちろんあると思います。

1月の段階は現地ではどういった状況でしたか?

監督 『ゾッキ』のロケが来る1か月前で、町も準備と期待感でワクワクしていて、ちょっと浮足立っているようなくらいに盛り上がっていました。

お店に集まって『ゾッキ』について語り合う住人の様子も映されています。

監督 あの場所はパン屋の横田さんのお店です。横田さんは8年前から映画誘致を取り組んでいた方で、映画が来ることになった思いを伺いに尋ねてみたら、あのような状況でした。蒲郡の同じ店の中に、映画に対して熱い思いを持っている方と、「『ゾッキ』ってどんな映画なんだろうね」と、まだ内容までは浸透していない方々が共存している状況が面白くて、定点観測してみたいと思いました。

偶然の出会いが素敵だと思いました。

監督 映画誘致を頑張っている中心にいる方たちはもちろんですが、この町にどういう影響があるのかを描くために、その外側にいる人々のことも取材したいという気持ちがありました。

『裏ゾッキ』というタイトルはどのようにつけたのですか?

監督 伊藤プロデューサーに初めてお会いしたときに「『ゾッキ』のドキュメンタリーを撮ってほしい」と聞いて、でもいろんなことが起こりすぎていて、「つまり『裏ゾッキ』みたいなことですか?」と言ったらそこから『裏ゾッキ』というタイトルが蒲郡の方にも浸透したので変えられなくなりましたね(笑)

『ゾッキ』と『裏ゾッキ』が関連作品として公開されていますが、『裏ゾッキ』だけでも楽しめる作品に仕上がっています。

監督 『ゾッキ』と『裏ゾッキ』はお互いが独立していて、一緒に見ると2倍おもしろいという作品になっていると思います。

元からそのようなコンセプトで作ったのですか?

監督 いわゆるメイキングとしてではなく独立して上映するというお話だったので、自分の作家性を出していいんだなと勝手に解釈して撮っていきました。幸いプロデューサーからこういったものにしてほしいというオーダーはなかったので。

映画の撮影現場以外も追いかけていますね。

監督 蒲郡の方々と仲良くなって、常に連絡をとりあっていたので。その日どこにだれがいるかが分かっていました。

現地の方とのコミュニケーションが欠かせませんね。

監督 私は車の運転ができないのですが、「乗っけていくよ」とか「どこまで行くの?」と、『裏ゾッキ』についても蒲郡の方々に協力していただけました。

『裏ゾッキ』についても蒲郡の方々には伝えてあったのですか?

監督 私が『裏ゾッキ』を撮っているということはご存知だったのですが、どんなものになるのかとかは公開の3日前くらい前まで分かっていないのでドキドキだったと言っていました。

『裏ゾッキ』には『ゾッキ』が上映されるシーンが映されています。『裏ゾッキ』の上映ではどのような感じなのかも気になりますね。

監督 市外の劇場でご覧になった方からは「宝物です」という声も届いていて嬉しいです。

『ゾッキ』の3人の監督のこだわりが伝わるシーンがありましたが、どのように組み立てたのですか?

監督 映像自体は500時間あったので(構成は)後から考えました。大事だから撮ろうとか、いらないから撮るのやめようというのは封じていて、目の前で起きる今しか撮れないものの連続を撮っていました。ドキュメンタリーのセオリーにあてはめると、普通はテーマに沿ったものや、最終目的地に向かって撮っていくほうが賢いと思います。その方が編集も楽ですし。今回はあえてそうはしませんでした。

もっと入れたいシーンはありましたか?

監督 編集途中では非常に悩みました。すべての瞬間が大切に見えていたので。でも最後のシーンを撮ってからは早かったです。終わりが見えてくるところでどういう物語になるか、自分の中で確信があったのでハッキリしていました。

昨年の緊急事態宣言後にも蒲郡にいらっしゃっていますが、雰囲気は以前とは違いましたか?

監督 全然変わっていました。取材した方の家に行っても暗いし、街に人がいない。全然違いました。映画でわいていたいた町が盛り下がっている印象でした。

本作では松井玲奈さんがナレーションを務めています。とても物語が届きやすいナレーションでした。

監督 松井さんはとても多面的な魅力のある方で、それが声にも表れているので素敵でした。『ゾッキ』でも二役を演じていらっしゃるのですが、『裏ゾッキ』では町のことも、映画のことも語らなきゃいけない。2つのものを見つめてきた映画だったのでピッタリだなと思いました。

【写真・文/編集部】

STORY
竹中直人・山田孝之・齊藤工の3人がメガホンを取り、漫画家・大橋裕之の短編集を実写化する異色の映画『ゾッキ』。制作がはじまる2020年、ひときわ喜んだのは、ロケ地である愛知県・蒲郡市の人々だった。蒲郡では8年前から印刷屋さん、パン屋さん、居酒屋さんなど、町の有志が立ち上がり映画誘致の活動を続けていたが、今回念願かなって蒲郡市も巻き込み、映画「ゾッキ」を市民総出で全面バックアップすることになった。平穏だった蒲郡という場所で巻き起こる、数々のハプニング。豪華キャスト・スタッフによる一筋縄ではいかない映画制作。そして、素人集団がどうにか映画を盛り上げようと奮闘する姿。その模様を追った「裏ゾッキ」は、ひとつの映画に寄せ集まった人々の"裏側"を描く物語。・・・のはずだった。

ロケ終了後に世界中に襲いかかったコロナウィルスの猛威。4、5月には緊急事態宣言が発令した。映画館が2ヶ月の休館するのは戦後初めての事態だった。映画を生業にしていた監督陣の生活も一変した。例にもれず蒲郡の町も悲鳴をあげ、映画に心をくだいてきた人々は、それぞれの苦境に追い込まれる。さらに2021年3月の公開直前、コロナウイルス第二波が世界を襲う。目標にしてきた「作品を届けること」がおびやかされる今。ひとつの映画とともに重なり合った人々の現在進行形の記録。


TRAILER

DATA
映画『裏ゾッキ』は全国で公開中!
撮影・編集・監督:篠原利恵
出演:蒲郡市の皆さん、竹中直人、山田孝之、齊藤工
ナレーション:松井玲奈
配給:イオンエンターテイメント
©2020「裏ゾッキ」製作委員会

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