「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021」の長谷川敏行プログラミング・ディレクターにインタビューを行った。本映画祭は、“若手映像クリエイターの登竜門”として、映画界の未来を担う新たな才能の発掘を目的に2004年より毎年開催してきた。今回は、昨年に引き続きオンライン配信で開催される。
長谷川 2色でハイブリッドを表現しています。今回の映画祭は、準備としては劇場で上映しつつ、オンラインで配信をするということで準備をしていたのですが、残念ながらコンセプト通りには開催できなくなってしまいました。
長谷川 開催方法はギリギリまで考えていました。お客さんの安全はもちろんですが、中には会場に向かうことがまだ不安という声もあり、単純に安全だけではなく、集中して映画を見ていただくためにもオンラインがいいという結論に至りました。
長谷川 いろいろと決めた作品もあったのですが、最終的にはお断りすることになりました。劇場で上映する際は特集上映も行っているので、例年と同じ準備を行っていましたし、ハイブリッド開催として権利元の許諾もいただくという準備を進めていました。オンライン開催は昨年満足できる形での上映ができたと思っているので、そこに心配はありませんでした。劇場での上映もこれまで行ってきたことなので、苦労としては多くはありませんでした。ただ、オンライン開催という最終判断をしたということで、上映することになっていた作品については申し訳ないことをしたと思っています。
長谷川 これで満足をするというわけではないんですけど、作品によって多少のばらつきはありましたが、ほとんど見られなかった作品は皆無でした。トータルで8,142というビュー数だったんですけど、ほかの映画祭の方とお話をして、“もっと長い期間でもオンラインではそんなにビュー数はない”という話だったので、オンラインのみでしかやらなかったのは大きいと思うんですけど、そういう意味ではよかったと思っています。
長谷川 前年までは9日間で9,000人強でした。毎年恒例として来てくださっていた方々の中にはオンラインで視聴方法が分からないという方もいらっしゃったかもしれませんが、一方で日本全国からのアクセスがありました。試みとしてはよかったです。
長谷川 “前から興味があったけど離れているので参加することができなかったのでありがたい”という声もいただいたのでよかったです。
長谷川 オンラインであっても開催することの意義は、継続していくということの証明でもあります。この映画祭は東京などからもたくさんいらっしゃっていますが、同時に県内からご来場いただく方もたくさんいらっしゃいます。我々の映画祭は続いているということを示す意味合いもあります。感想をいただきますが、常連の方はかなりの人数がオンラインでもご覧いただいていたという結果があるので、よかったと思います。
長谷川 今年の映画祭は2020年1月以降に完成した作品が対象となります。4月頭までの応募期間なので、実際には2019年に撮影して昨年完成したという作品が結構応募されてきていると思います。今年に関してはコロナ禍の影響はなかったという印象です。同時にコロナ禍の中で撮影したことが分かる作品もあったので、コロナ禍とその前と両方が届いたというところです。昨年撮影予定だったものが中止になっていたりすると、来年や再来年のほうが不安なところがあるかもしれませんが、世界中で映画制作も再開されてきているので、最終的にはいいものが届けられると思っています。
長谷川 コロナを受けてのテーマや、バックグラウンドにそれを置いている作品は結構ありました。こういう状況で急に撮った印象の作品もありました。はっきりとコロナ禍をテーマにしているのは『リトルサーカス』です。ただ、この作品は少年たちが生きていくたくましい強さを描いているので、“コロナ禍だから”というところではない部分が評価のポイントです。
長谷川 短編では、ほかにも『10センチの彼方』は全編がパリで撮影されています。日本とパリを2拠点で活躍されている監督です。逆に完全に日本で撮った作品で『小山田喜久太郎』は台湾出身の監督です。グローバルな印象はありますが、我々としてはいいことだと思っています。
長谷川 規定としては監督やプロデューサーが日本の方と言うことになっております。ただ、映画の国籍はそれだけではないので、日本映画として世界に紹介していきたい作品は国内コンペティションとして紹介していきたいと思っています。
長谷川 今年は6本を紹介しています。国際コンペティションにも日本映画が1作品入っており、日本の長編映画を7本紹介しているのは過去最多です。それだけ上映したいと思える作品が増えているというのは、この映画祭を評価してくださるフィルムメーカーが増えていると思いたいなと…(笑)今年から日本映画は「ジャパンプレミア」ということを規定に入れているので、特に短編は応募作品数に不安はありましたが、例年よりも高レベルな作品が揃っていると思いましたし、長編も過去最多になったということは上映に値する作品が増えているという印象です。
長谷川 短編については日本中に映画祭がたくさんありますので、なかなか日本初上映となる作品を探すのはなかなか難しかったんですけど、今回これだけの本数をこれだけのクオリティで上映できるのは嬉しいですし、素晴らしいことだと思っています。基本的には作品重視で考えているので、実力ある監督の作品を上映できているという喜びでいっぱいです。
長谷川 すごい数が集まってしまうと思うんです。この映画祭は完全にオープンで応募していただいた中で選ぶので、多く集まりすぎてしまうと今のチーム体制ですと見ることができなくなってしまうと申し訳なくなってしまうので…。現状トータルで1,000本を超えているので手一杯になってしまっています。
長谷川 この作品は監督がほぼ1人で作っています。音楽や声を当てている方はいますが、75分作るのってどれだけかかるんだろうと想像ができないです。この映画祭では、アニメ部門があった時期もありましたが、今は実写と同じ扱いで、なかなかノミネーションまでたどり着く作品がなかった中で、『バトルクライ』は驚きの作品でした。
長谷川 映画祭の方向性として、単純にアート作品というよりもエンターテインメント性がある作品というのが多いのかなと思っています。逆に映画祭っぽい作品もありますが、先ほどの『バトルクライ』のほかにも、『親子の河』はほのぼのオフビートな作品だったり、『夜を超える旅』も基本的にはエンターテインメントなので、通常のコンペティションで上映される作品とは違うのではないかという印象です。
長谷川 例年ですとたくさんの国を紹介しようということが意識の中にありますが、今年はそれよりも違うタイプの作品を見せたいと思って選んだ10本です。『野鳥観察員』はほぼ1人芝居ですがテーマは壮大で、『シネマ・オブ・スリープ』はB級サスペンス・ミステリーのようですが、仕掛けが面白かったり、『国境を越えてキスをして!』は完全にロマンティックコメディですが、社会性もスパイスとして効かせたクレバーな作品だと思うので、ぜひコンペでと選びました。『この雨はやまないは』はドラマなのかと思ってしまうくらいいろいろなことが起こるドキュメンタリー作品です。今回おもしろかったと思うのは『ケンザの瞳』はキュラソーが舞台で、『ルッソ』はマルタの映画。観光地としていくことがなかなかない場所で、海外に行けないような状況で映画を通して世界中を見られるので、ぜひ今見てもらいたい作品です。その土地ならではの描かれ方で、『ケンザの瞳』はキュラソーの壮大な大地が印象的ですし、『ルッソ』は地中海のギラギラとした太陽の光もマルタならではだと思います。
長谷川 見ていただけるのは光栄だと思っています。どの作品を選ぶのかも、並べた側の立場として楽しみです。俳優として有名なだけではなく、監督としても素晴らしい映画監督なので、監督としての映画の評価と俳優としての映画の評価と、両方で評価ができるということでお願いをしました。
長谷川 手ごろ感があるということで、基本的には昨年のオンライン開催が満足できる形だったので、そこは変化をつけようとは考えていませんでした。映画を紹介するという目的が大きいので、ハードルを下げたいと思って設定しています。
長谷川 外国作品は事前に収録したものを配信していますが、国内作品は28日から4日間にわけて、ライブ配信を行います。
長谷川 司会をする立場としてはポップアップで質問があがってくるのは新鮮で、個人的には楽しかったです。そこから話を広げて展開できるのは、劇場で挙手で質問をもらうのと感覚的にはあまり変わらずという感じでした。ご覧になった直後に質問を応募してくださる方もいるので、それを質問することもあり、またライブで参加されてる方の質問を受けることもあります。ライブ感があっていいと思います。
【写真・文/編集部】
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021は2021年9月25日(土)~10月3日(日)にオンラインで開催!