有村架純×志尊淳、2人の俳優がコロナ禍の現代社会と向き合い、いま本当に“大切なもの”が見つかるドキュメンタリー映画『人と仕事』の森ガキ侑大監督にインタビューを行った。
森ガキ監督(以降、監督) 「え?」と思いました。大学生の頃にドキュメンタリーを作っていて苦しかったので、ドキュメンタリーじゃないことをやって映像業界に入りたいと思っていました。そこから17年の時を経て、河村さんから「ドキュメンタリーを」と言われた時は戸惑いがあったんですけど、5分後にはやらせてくださいと言っていました。世の中に対して伝えたいことが本能的に体の中にあったのかもしれないです。「別の人のほうがいいと思いますよ」と言うこともできたと思うので。
監督 ちょうど緊急事態宣言が発出されて、4月末くらいですね。日本で初めてのことで、どうなるんだろうと怖かったですね。
監督 河村さんとお仕事をしてみたいというのがあったのと、有村さん、志尊くんというメンバーとやりたかったんです。(有村さん、志尊くん、河村さんと)4人でモノを作ってみたかったというのが本音としてありました。もう一つはこの世の中のことを、体を張って伝えないといけない状況だと感じていたのかもしれないです。いろいろなことが頭の中にめぐって、「やりたいです」と言った記憶があります。
監督 河村さんの企画突破力はすごいです。諦めないですね。普通のプロデューサーだったら終わりますから、こうやって形にしてるのはすごいですよね。
監督 有村さんと志尊くんが話を聞きたい人のところに聞きに行くのが一つと、もう一つは僕自身が話を聞いてみたいというところから広げていったり。あとは有村さんとか志尊くんがこういう人と話したら化学反応があって面白いんじゃないかと思って考えました。映画に映っていない方にもたくさんインタビューをしています。いろいろな方に聞けて良かったです。
監督 志尊くんが思ったことを嘘偽りなく話したので、あのような感じで行っていきました。
監督 インタビューの相談というよりも、“この作品ってどうなるんだろう”と、どんな方向で着地するのかは常に聞かれていたんですけど、僕は着地点を考えないほうがいいなと考えていました。2人には、自分も分からないけど、記録として思ったことをそのままストレートに表現していきたい、それを映し出したいということを言っていました。撮っていったら何かが見えると思ったんですけど、最初の頃は何も見えなかった。でも撮っていくうちにだんだんこういうことを表現したほうがいいということをつかんでいきました。
監督 1時間15分くらいです。カメラを置いて、僕の存在を消すので、2人で思うことを話してもらいたいと思いました。2人が本音で向き合って話してもらえたと思います。
監督 つらかったですね。いろんな人の悩みや話を聞いて、家に持って帰ってご飯食べてもおいしくないですし、友達と話しても楽しくない。蓋をしていた部分を開けてみる部分が肌に合わなかったというのもあります。ドキュメンタリーを作ったことで、嘘でもいいからファンタジーで描く方向で行こうと決めました。今回こういう機会があったので、今後の作品作りも変わってくるかもしれません。
監督 社会との接点を自分は持っているのかなと思っていたんですけど、それがあまり持っていなかったと気づきました。自分が知っている居心地のいい社会としか接していなかったと思いました。普段接点を持たない方と触れ合うことで、前よりも本当の意味での社会との接点を持てるようになったと思えました。今後作品を作っていくうえで社会との結びつきを描いていくように意識するので、作品としてはとても変わる気がします。いま作っている企画が何本かあるので、(影響が)出てくると思います。
【写真・文/編集部】
『新聞記者』(19)、『パンケーキを毒見する』(21)など、話題作を世に送り出しているスターサンズ・河村光庸プロデューサーが企画、有村架純と志尊淳という、名実ともに今最旬の2人を迎え、コロナに打ちひしがれた日本の職場で、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる保育士、介護福祉士などの人々、その他、声なき仕事人達の現状をレポートする。監督は、『さんかく窓の外側は夜』の森ガキ侑大。2人の俳優が、決して役ではなく、一仕事人として、現代社会と向き合い、仕事の意味を再発見し、私たちが生きて行く上で切っても切り離せない仕事とというものの価値を、改めて見出していく本作。
映画『人と仕事』は2021年10月8日(金)より全国で3週間限定で劇場上映!
監督:森ガキ侑大
出演:有村架純、志尊淳
配給:スターサンズ/KADOKAWA
©2021『人と仕事』製作委員会