『CUBE 一度入ったら、最後』清水康彦監督 インタビュー

INTERVIEW

『CUBE 一度入ったら、最後』の清水康彦監督にインタビューを行った。

本作が生まれた経緯をお聞きしたいと思います。オリジナル版『CUBE』を24年前に見て、今でも覚えているくらいインパクトのある映画でした。監督はこの映画はいつ頃ご覧になりましたか?

監督 僕は当時、映画好きの友達から「変わった映画があるから見てみろ」」と言われ、TSUTAYAに自転車をこいでいきました。見たのが18歳くらいでしたが衝撃を受けました。映画って面白いんだって思いました。それまで映画って面白いっていう感覚はなくて、ましてや映画を撮る人間になると思っていなかったです。

今回撮ることになった経緯を教えてください。

監督 企画者の思いとして、今の日本で作ることの意義が前提としてありました。社会的価値観が変わりつつある時代なんじゃないかと。社会や時代が変化した先でも、人間が生きる意味は変わっちゃいけないということを描きたいと思いました。社会が変化する今だからこそ自分にと向き合い、前に進んでいかなければいけない。そういった思いを表現するような映画が今必要なんじゃないかとみんなで話し合いました。(今の社会を)閉ざされたように感じ取る人が多いかもしれないけど、そこから自分の力で出て、自分の人生を進まないといけないと感じている方も沢山いると思います。そこに寄り添った映画でありたいと思いました。

日本版でオリジナリティを出そうと思った点はありますか?

監督 “CUBE”に入る人間が日本人であるという点です。(オリジナル版の)ヴィンチェンゾ監督とZoomで会議をしたときに、“CUBE”のシステムはオリジナルとほぼ同じでよくて、何ならもっとシンプルにして研ぎ澄ませてもいいし、そこに入る人が変わればストーリーが変わるはずなので、そこを楽しみたいですね、と伝えたら、「どーんとやっちゃってください」という返事がかえってきました。

家族や社会などに対して様々な問題が描かれています。

監督 閉塞空間によるストレスは、入る以前に社会から受けた抑圧感が増幅されたもの。でも、ネガティブを増幅させるではなく、自分と向き合って、で社会に向かっていきたいと思ってもらいたいです。

そのことが映画の中でも行動を選択する理由にもなります。

監督 日本人が入ると想定したときに、“動けない”というのが現状かと思いました。映画では3人が全く動けない中に、自暴自棄で突き進む男が出現し、流されてしぶしぶついていく。そういう人がいないと日本人は動き出さないだろと。

キャスティングで重視した点はありますか?

監督 全員、作品全体を考えられる人たちが集まっています。CUBEという箱が狭いので、Aさんを撮ってるとBさんが映り込む。例えば、台本ではAって書いてるけど、ほかの人は何をしているのかと。そういった時間もちゃんと演技をしていないといけない。それぞれが行動を自分で考えられるキャストじゃないと演じることができません。そういう意味でも、主演級のキャストが集まっている意味は大きいです。

オリジナル版とはキャラクターの職業や行動が異なりますが、どのように作り上げていきましたか?

監督 前の時代から新しい時代に移行できていない人、マンパワーで会社を運営している人、社会のせいにして動けない人。国によってステレオタイプが違うと思うので、日本で作る上での設定を考え、それに合わせてストーリーを作り直しました。

オリジナル版とは違った表現がされている気がしました。

監督 オリジナル版だといつ死んでもおかしくない空間という印象が強いですが、今回は、閉塞空間で人間の心理を暴くことに特化したかったので、そこがオリジナル版とはアプローチが違うところかもしれないです。フィジカルなトラップとは別で、メンタルなトラップがあったり。

ライトの色がまるでCUBEが生きているように変わりますね。

監督 最初はしれっとやろうと思ったんですけど、気づかせたほうがいいのかなと思って(笑)まさにCUBEが生きてるみたいに。

役者への演出で印象に残っていることはありますか?

監督 監督として自分の考えを持ちつつも常に不安なので、これでいいのかな、これで合っているかなとか、すぐ相談しちゃうタイプなんです(笑)ただ、現場が進んでいくと余裕もなくなるのでキャストに任せるしかない。そういった点においてで、自分で考えて動くテクニックがすべてのキャストに必要で、こちらはそれを求めたし、キャストの皆さんも率先的にやってくれました。撮影中は作品全体についてを話すことのほうが多かったと思います。描こうとしていることを合間合間に話していました。

キャストの表情の変化にも注目したいと思います。岡田将生さんもとても魅力的な演技をしていました。

監督 (菅田将暉演じる)後藤と(岡田演じる)越智の描き方は特にこだわり、苦労したところです。最初は似たようなキャラクターですが、後藤は言語で概念化する力があったり、越智は社交性があったりと、変化をもたせました。その器用さと不器用さが命運を分けることになりますが、紙一重の2人です。

【写真・文/編集部】

STORY
今なお全世界でカルト的人気を誇るヴィンチェンゾ・ナタリ監督による映画『CUBE』(1997)。20年以上の時を経て世界初公認リメイクとなった本作は、今なお語り継がれる衝撃的な設定をそのままに、原作をリスペクトしたスリリングで緊迫感みなぎる要素を緻密に張り巡らせた<完全オリジナルストーリー>を展開。主演の菅田将暉をはじめ、杏、岡田将生、田代輝、斎藤工、吉田鋼太郎と日本屈指の名優たちが勢揃い。謎の立方体「CUBE」を舞台に、ヴィンチェンゾ・ナタリ自身もクリエイティブ協力で参加し、作品クオリティの底上げを図った劇薬系密室エンタテインメント。


TRAILER

DATA
映画『CUBE 一度入ったら、最後』は2021年10月22日(金)より全国で公開!
監督:清水康彦
出演:菅田将暉、杏、岡田将生、柄本時生、田代輝、山時聡真、斎藤工/吉田鋼太郎
配給:松竹
©2021「CUBE」製作委員会

PAGETOP
© CINEMA Life!