『ずっと独身でいるつもり?』で橋田公平役を演じた稲葉友にインタビューを行った。
稲葉 今の時代に合っていて、今公開されたら面白い映画だなという印象を受けました。女性に対する捉え方とか、いろいろなものが日本の中で変化していて、何かが明確に変わってきている中で、このような作品が世に出ることで、より勇気づけられる人もいると思うし、力になる映画になると思いました。
稲葉 すごく象徴的な役だと思いました。こういう人いるよねというのが6人分くらい詰まっている感じでした。しっかりポイントとして残せないといけない役だなと思いました。
稲葉 まず嫌な人物だと思っちゃいけないということを自分の中で確かに持っていないといけないと思いました。ともに人生を歩もうとした人の“無自覚な言葉”が必要であるべきだと思ったし、そのためには僕自身が公平という役を悪意のある人間だととらえてはいけない。認識を自分の中で揃えたり、どうだったらこういう言葉が自然とはけてしまうだろうということを考えてから挑みました。
稲葉 ポジティブだし、友達が多いし、社交性もあるし、コミュニケーション能力も高い。趣味も多いし、自分の楽しませ方が分かっている。現代人に必要とされている能力を結構持っている人だなと思いました。仕事もしっかりしていて、楽しむところを楽しむことができていて、こういう風に生きられたらいいだろうなとどこかで思ってしまう人でした。
稲葉 相手のためにという優しさは公平にもあったと思うのでそこは共感できました。この人のためにこうしようと考えていたり…結果としてできているかはさておきですけど(笑)そういうマインドの持ち方は共感できますね。ほかは自分にはないと思う部分が多いので、どうしたらこういう風に言葉が出てくるかな、どうしたら自分と重ねられるかなと、出来る限り自分の人生と重ねて演じました。
稲葉 ある程度の譲り合いと、ある程度の強要のしあいだと思います。お互い譲りすぎるとどちらにとってもしんどい。合わせにもいきづらいし、どっちも我慢してしまう状況になると思うので。自分が主導していく部分と相手が主導する部分をしっかりと考えたほうがいいのかなと思います。押し付け合うというのではなくて、どっちにもルールはきっとあるので。兄が2人いて、3人の共同部屋があって、お互い気を遣うとか、ルールに縛られることが苦手じゃなくて慣れて生きてきたのでそういう感覚はあります。自分のルール、相手のルール、空間にルールを設けて、ここはこうしたほうがいいとか決まるといいのかなと思います。
稲葉 「公園に遊びに行くからおむつ変えておいて」って、遊びに行くことだけが子守じゃないんだよって。たぶん男性から見ても、「そんな男いる?」って思うかもしれないけど、いるからこうなってるんだなって思うところはありますよね。すいませんでしたっていう気持ちにはなっちゃいます。
稲葉 プロデューサー陣と、勉強になる、そういう見方もあるんだとは話しました。夫婦とかカップルで見たらどうなんだろうと思います。話し合うきっかけになったら素敵なことだなと思います。
稲葉 お芝居のお話よりも何気ない話題を展開することがみな実さんはお上手なので、コミュニケーションを取るうえではありがたかったです。例えばセットに置いてあったお弁当がひとつ1800円で、みな実さんが「1800円で何食べる?」って自然にトークを展開してくれるんです。考えたんですけど、それは1800円という金額で自分が精査されてるんじゃないかなっていうドキドキもあるんです。でも、ここはコミュニケーションだからちゃんと思いついたものを答えないと思って、「ランチでちょっといいおそば食べに行きますかね」って言ったら「いいね、私もそれにするわ」って。みな実さんの答えは教えてくれなかった(笑)そういった楽しいコミュニケーションを取ってくれる方です。役として恋人だし、キャリアは全然は違う、たどってきた道筋も僕とみな実さんは全然違うけど、フラットにお話しできる方でした。とても頼りになる方です。
稲葉 素敵でした。キャリアとして、アナウンサーからはじまり、様々なジャンルで活躍されて、俳優をやっている中で、仕事へのプロ意識の高さがうかがえます。このクオリティでないといけないという上限が高く設定されていることが見てとれました。この女性の人生を演じることへの葛藤があるんだろうなと感じました。完成したものを見ても、みな実さんだから出たものが見えたし、役として向き合いやすかったです。かっこいい俳優さんだと思いました。
稲葉 部屋のシーンは印象深いです。うまくいっているように見えるところから、ちょっと様子がおかしいながらも幸せに向かっていきつつ…というグラデーションがあったので。空間としても、公平とまみしかいないのでやりやすかったです。
稲葉 こういう風に演じてと言われたらそう演じなきゃいけない役だと思ったのですが、自分はこうやりたいなというか、もったいない男でありたいなと思っていて。女性がフィーチャーされる映画だから、男は嫌な感じに映すとかではなく、切に描くことを大事にしていたのでありがたかったです。
稲葉 演じるうえでは、どんなに嫌な役だとしても僕自身が悪い人だと思って演じることはよくないと思っていて。その人なりの理由があるし。そこをとがめないでくれたのが演じるうえで救いでした。
稲葉 人生山あり谷ありで、いろいろな環境があると思うんですけど、どの段階で見ても響くものが散りばめられている映画だと思います。見終わった後は、見る前よりも息が吸いやすくなる作品だと思うので見ていただけると嬉しいです。
【写真・文/編集部】
「女子をこじらせて」の雨宮まみによるエッセイを「サプリ」のおかざき真里が漫画にした伝説的コミックを原作とする本作。主人公を演じるのは「M 愛すべき人がいて」での怪演ぶりが話題となり以降様々な作品で女性の本音をリアルに表現してきた田中みな実。初主演となる本作では、やりがいある仕事や暮らしに充足感を得ながらも、周囲の雑音に傷つき、苦しみ、揺れる30代の独身女性を等身大で演じている。そんな彼女の心情を生々しく切り取り、鮮やかなエンタメに昇華させたのは、『おいしい家族』『君が世界のはじまり』をはじめ、一貫して「人と人のつながり」を描いてきた気鋭の監督・ふくだももこ。
映画『ずっと独身でいるつもり?』は全国で公開中!
監督:ふくだももこ
出演:田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えり、稲葉友、松澤匠/山口紗弥加/藤井隆/橋爪淳/筒井真理子
配給:日活
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