『海賊王女』瀬戸麻沙美 インタビュー

INTERVIEW

『海賊王女』でフェナ・ハウトマン役の声を演じた瀬戸麻沙美にインタビューを行った。

決まった時の心境を教えてください。

瀬戸 オーディションの段階でパイロット映像のようなものをいただいて、とても力の入っている作品だと感じました。以前、中澤(一登)監督とご一緒させていただいた作品もとてもやりがいがあって、ストーリーもおもしろかったので、今回も関わることができて嬉しかったです。

パイロット版を見ることでやりやすくなりますか?

瀬戸 あるからいい、ないからよくないということはないのですが、映像があると世界観がイメージしやすいという部分はあります。今回はオリジナル作品ということもあるので、こういう物語を作りたいとか、動いている映像を見ることができたのは興味をそそられた要因のひとつになりました。

オリジナル作品ということですが、キャラクターのイメージはどのようにとらえていましたか?

瀬戸 キャラクターデザインを見たのが最初だったのですが、キャラクターデザインとセリフにギャップがあると感じました。見た目は白髪で色白で華奢で、どこか儚げな印象を持ちました。タイトルが『海賊王女』ということで、きっと彼女は王女の部分をつかさどっているのかなと感じていたので、上品な物静かな役どころかと思っていたら、話を読み進めていくとそれは冒頭のシーンだけで、すぐに自分の意志の強さを出しました。自分の意思がしっかりあって、行動力もあって、よく笑うし、表情も変わる。しかも自分の作戦を聞いてくれる仲間がいるということは、人柄も人に愛される部分を持っているのかなというのは1話を読んだ時に感じました。

1話の時点である程度キャラクターはつかめていましたか?

瀬戸 そこまで悩まずに取り組めたと思います。これまで、とにかく素直でまっすぐでというような役どころを演じる機会が多かったので、私が任せていただく機会が多い役なのかなと感じました。そこからフェナの知られざる過去があって、いつもは元気だけど、核心を突いたときは急に物静かになり、ミステリアスな空気をまとうというようなところもフェナの個性としてあります。彼女の性格のベースとしての明るさだったりまっすぐだったりという部分は、見え方として変にあざとくならないように演じていこうと思いました。

中澤監督はどのような印象ですか?

瀬戸 物腰柔らかでいつもニコニコしていらっしゃるんですけど、トークショーなどでステージに立たれると「僕は前に出てしゃべる人じゃないから」と腰が低くて遠慮がちな部分もあります。今回、ご一緒させていただくのは2度目ですが、いつも声をかけてくださって。出演が決まった時も「瀬戸さんにフェナをお任せします!」と笑顔で声をかけてくださる親しみやすい方で、作品作りにかける情熱を持っている方だという印象です。

監督からの具体的な演出はありましたか?

瀬戸 あったところもあるんですけど、そんなに多くなかったという印象です。役もオーディションで選んでいただいたということや、最初に「自由にやってください」と言われたのもありましたので。細かなセリフごとの演出はありましたけど、そこまで大きく人物像がずれて直しをいただくということはなかったように思います。

“お任せします”と言われるのは演じる側にとってはいかがですか?

瀬戸 嬉しくはあるんですけど、“もっと言ってほしい”という気持ちもありつつです(笑)でも、任せていただいたという嬉しさはもちろんあります。まずは自分が思っているやりかたを出すというのはディレクションが多い少ないに関わらず決めていることです。自分で考えて作っていったものをテストで出して、そこから直しということになるんですけど、「お任せします」と言われたことに関しては、言っていただけているからこそテストでより思い切り出せるところがあって、“こうかもしれない…”という不安をぬぐってテストで思い切りやりやすいようにしていただけたと思っています。

ご自身で作り上げた部分が多かったですか?

瀬戸 私たちが事前にもらえるものは台本とVTRなので、その中でヒントになるものは多くありますし、台本にもセリフとト書きがあるので、ト書きの部分を読んで状況をイメージして臨みました。自分で考えていったことをとらわれずに表現できたのは楽しかったですけど、フェナに関して言うと本当にセリフが多くてまくしたてるようにしゃべるシーンが多くて。本人は“ワーッ”と言うけど、アニメーションとして聞き取れる範囲の言い方で言わなければいけないので、そういうのは完成するまでどう見えているのかは気になっていました。そういったシーンも、掛け合いとして相手方がいらっしゃるので、家でリハーサルとして自分で組み立てていくところもあるんですけど、実際は掛け合いをする方の出方次第というか、当たり前の事ではありますけど、聞いてしゃべるという部分で自然に変わっていくものもありました。自分よがりにはならずにやっていこうと思いました。

収録は約1年半前ということですが、どのように行いましたか?

瀬戸 収録したときは画ができていて、きっかけとなる名前が出る部分はあったりはしたんですけど、掛け合いのセリフが多かったり、長回しに見えるシーンも多いので、そういったところは「気にせずにみなさんのテンポ感を重視したいです」と言われていました。道しるべはあるけれど、“みなさんの自由で”ということでプレスコのような形で録らせていただきました。

作品はどのような印象でしたか?

瀬戸 ワクワクするものが詰まっているという印象です。個人的に海が大好きで、しかも船での冒険はすごくワクワクしましたし、フェナを守る騎士たちは日本風な服をまとっていますし武器も日本刀を持っていて、侍たちが西洋風の衣装をまとったお姫様を守るという和と洋の2つの世界観が混ざっているというのが魅力的でした。冒険が進んでいく中で、洞窟を探検していったり、洞窟を進んでいったその先に広い空間が広がっていてという王道の冒険ファンタジーという要素が詰め込まれているのがすごく好きでした。毎話キャラクターたちの冒険を見守ってる、見ながら一緒に旅している気持ちになれる世界観になると思いました。

フェナは話が進んでいくと成長し、しっかりとしていくイメージがありました。そういったところは意識してましたか?

瀬戸 フェナはシャングリラという島で限られた人にしか出会ったことがない中で、突然仲間と呼べるようなお互い信頼関係を築けるような相手と旅をするので、シャングリラにいた時のフェナとは違う、世界に出て見聞が広がったというか、世界にはこんなにいろんな人がいるんだというのは本人も感じて、色んな人とか出来事に触れて変わっていってる部分があると思います。もちろんそういったことで成長している部分もあるんですけど、今回の旅の目的として、エデンという場所を目指してはいるけれど、知らなかったことを、忘れてしまったことを思い出すというか、先に進んでいるのになぜか振り返っている感覚になるという印象がありました。仲間を思いやる気持ちを学んだと思いますし、裏切られるという経験もしたと思いますし、彼女の中で人との交じり合いで変わっていった部分は多くあると思います。

フェナ以外で印象的なキャラクターはいますか?

瀬戸 みんな印象的な描き方がされていますよね。船に乗っている仲間たちは特にそれぞれの個性が出ていて、失われた宝にたどり着いたときのリアクションもそれぞれのリアクションで描かれているから個性が一人ずつちゃんと出ていて、だからこそ一人ずつ愛せるんだなと思いました。花梨は自分のやりたいことを貫いてわがままに見えるけど、フェナのことを気にかけているし、へこたれない強さも持っていますし、いろんな面を見ていると魅力を感じます。

フェナの魅力的なところはどこだと思いますか?

瀬戸 ピュアなところと、よくしゃべるところです。あとおしゃべりだけど、それは周りを思いやっていたり、実は周りを救っているというのは、本人は気づいていない魅力だと思います。

ご自身との共通点はありますか?

瀬戸 この作品の旅が始まった地点が、自分が仕事を始めたという地点と結びつけるとしたら、世間知らずなところです。世間を知らないからこそ怖いものがなくて、果敢にも脱出計画を立てることができる。今の私だったらいろいろ考えてやらないと思うんですけど、10代の自分だったらやりかねないなと思うので、無鉄砲さというところは自分の10代の頃と共感できるなという感じがします。

収録はほかの方もご一緒に行ったんですか?

瀬戸 中盤まではコロナ禍になる前だったので、全員揃って録っていました。結構年代が近いので和気あいあいと話をしていて、オリジナル作品なので「どうなるんだろうね?」と予測を立てた話をしたり、待ち時間にみんなでケータイのアプリやってみたりとか、(悠木)碧さんとか鈴木(崚汰)くんを中心に盛り上がったりしていました。

役についてのお話もされましたか?

瀬戸 役についてのお話はそんなになかったですけど、例えば雪丸がかわいらしい部分を見せた時に「こういうところがいいよね」とか、毎話出てくるキャラクターの魅力について語り合っていました。特に雪丸はギャップがあるので話題になりやすかったです。フェナもまっすぐでいいよねって話していました。

楽しそうな現場ですね。

瀬戸 楽しかったです。オリジナルなので毎話台本をいただいて読むのも楽しかったし、それを掛け合いでみなさんとできるというのも楽しかったし、やりがいがありました。セリフがめちゃめちゃ多かったので(笑)一緒に収録をしていたので、先輩方のお芝居を聞ける機会もありました。

掛け合いで意識されることはありますか?

瀬戸 役がある程度定まってきてからは、フェナだったらどうやってこのことしゃべるかなと考えながらやっていました。自分の中で掛け合いが多いと思う印象があるのは雪丸と花梨ですが、花梨とは目を合わせてしゃべらないことも多くて、聞いているようで聞いていないこともあったり。フェナがどうしゃべるのかを考えるのはもちろんですけど、距離感だったり、場所や時間を意識していました。雪丸との会話は見ている方がじれったいと思うような微妙な間が流れたり、しゃべりすぎたりという部分も台本に書かれているのでそれを出せるように意識しました。自由に任せていただいたので、間合いとかしゃべるスピードとかも掛け合いでできたからこそお互い引きだし合ってできたと思います。

特に気に入っているシーンはありますか?

瀬戸 本当にいっぱいあるんですけど、フェナがバルバラルで双子と一緒に服を探しているシーンは、かわいらしいですし、映像としてもフェナのいろいろなファッションを見ることができ、楽しそうにしているのがすごく好きなシーンです。ちょっとほっこりときめきで言うと、雪丸が眠っていて目が覚めた時に「足の感覚がない」と言うシーンです。おもしろい感じで終わるんですけど、眠っている雪丸のそばにフェナがいるというのを考えると愛だなと思います。描かれていないところも感じさせるような表現をしているところが好きです。あと迫力あるシーンだと、洞窟の中に入って、女海賊たちが爆発して生き埋めにするシーンです。意外と侍たちはみんな冷静な判断をして、そこからファンタジー好きにはたまらない水の中で爆発するシーンは迫力があって好きです。

ご自身が演じているキャラクターの中で注目してほしいシーンはありますか?

瀬戸 照れてまくし立てるようにしゃべっているところです。フェナの一生懸命しゃべってるかわいらしさを残しつつ、伝えるべき情報を伝えられたらと思って収録したので印象に残っています。長台詞も多かったです。クライマックスに向けて謎が解き明かされていくと、フェナが無意識に語りだすことも多いので、フェナの急に気づいてミステリアスに語りだすシーンもですし、まくし立てるようにしゃべったり、照れてしゃべったり、彼女のおしゃべりに注目してもらうのもいいのかなと思います。

【写真・文/編集部】

STORY
鮮やかな色彩で紡ぎだすファンタジーラブストーリーである本作は、『キル・ビル Vol.1』アニメーションパート、オリジナルアニメ『B:The Beginning』の監督、中澤一登が描き出す完全新作オリジナルアニメーション。ある少女の記憶から始まる物語。18世紀、大西洋。父と船旅へ出ていたフェナ・ハウトマンは海賊に襲われ、たった一人小型ボートで漂流し、命をつなぎ留める。フェナが漂着したのは国家が黙認する娼婦・男娼の島。10年後。雪のような肌と白銀に光る髪を持ち、美しく成長したフェナは、初めての“仕事”を目前に控えていたが、それを受け入れることはできずに島からの脱出を決心する。迫りくる追っ手に絶体絶命のフェナは、真っ赤な鎧に鹿の角の兜をまとった青年・雪丸に救われる。雪丸は、フェナを「見つけ出す」と約束した少年だった。そして2 人の“再会”は、フェナ自身に眠っていた言葉<エデン>を呼び起こす。王女は、まだ知らない。数奇なる運命を──。


DATA
TVアニメ『海賊王女』はTOKYO MX・MBS・BS朝日ほかにて放送中!
©Kazuto Nakazawa / Production I.G

PAGETOP
© CINEMA Life!