『劇場版 おいしい給食 卒業』市原隼人 インタビュー

INTERVIEW

『劇場版 おいしい給食 卒業』で主人公の給食愛がとまらない教師・甘利田役を演じた市原隼人にインタビューを行った。

ドラマのシーズン2を経て、ついに映画2作目の公開です。

市原 舞台が1980年代ということで、今よりも人と人とが、密になることで相手を理解し、称えていた時代です。だからこそ見えてくる登場人物のチャーミングな姿が愛くるしくて大好きです。給食のために学校に通っていると言っても過言ではない甘利田を演じていますが、彼は人生を謳歌していて、うらやましくてたまらないほど素敵な人間だと感じました。好きなものを好きとハッキリ言える人間で、子供に対しても負けを認められる、素晴らしい人間です。

コロナ禍での公開となりますが、これまでと違う思いはありましたか?

市原 みなさまに楽しんでいただきたい、少しでも元気になっていただきたいという思いで現場に立っていました。今は常にマスクをしていて、友達の顔もまともに見たことがないという子供も多いと思います。僕が学生の頃は、表情を見て何かあったの?とやり取りをしていましたが、それも今はなかなかできない。より人間くさく寄り添って生きていた時代を思い出していただき、人生を謳歌することの大切さを感じていただけたら嬉しいです。

また、エンターテインメントの重要性をより感じました。暴力シーンとか、家族で見ていて目をそむけたくなるようなシーンはやめましょうと、キング・オブ・ポップでありながら、すべての方に贈るエールのような作品にしたいという思いがあります。柔らかい光のような作品でありながら、教養を培っていける道徳心も入った作品になっています。

今回は前作よりもパワーアップしたということですが、どのように変わりましたか?

市原 オリジナル作品なので原作がないんです。ゼロから始まった作品なので、『おいしい給食』のスタッフキャストみんなで作ってきました。作品愛がある現場で、それは自慢できるところです。生徒たちの撮影の最後には、子供たちに卒業証書を渡して、ひと夏を一生懸命走りぬいてくれてありがとうと伝え、みんな涙を流しながら受け取ってくれました。僕はまだ撮影シーンが残っていたので、涙をこらえるのに必死でした。撮影前の顔合わせから始まり、覚悟や達成感などいろいろなものを持ち帰ってもらいたい、そのためには本気で取り組んで、本気で向き合って、本気で悩み、本気で悔しがらなければいけないから、それができるように一緒に熱い夏を走り抜けましょうと話していました。努力するポイントが分からない方もたくさんいると思うので、僕は“なぜこの職業があって、なぜこの作品があるのか”、“お客様に楽しんでいただくために作品を作るんです”とお伝えました。映画や芝居は衣食住の中に入っていない。だからこそ、この作品が必要とされるように僕らで頑張っていかなければいけない。その仲間ですから一緒に走り抜けましょうと。本当に素敵な時間を過ごさせていただき、いろいろなことを学ばせていただきました。

本当に先生のようですね。

市原 大人は経験が増えていくと、いろいろな情報や知識が足かせとなって、考えてから行動するまでの間が空くことがあります。子供はすぐにリアクションができるんです。そんな純粋なで子供たちに何かを培っていただきたいと思いました。本当にきらきらした眼で何かを吸収しようという気持ちが垣間見えていたので、子供たちとご一緒できて僕は幸せ者だと感じましたした。

この映画では食べるシーンがポイントとなりますが、おいしく見せるために気を付けていることとかはありますか?

市原 「いただきます」、「ごちそうさま」は日本独自の文化なのでそこは大切にしたいと思いました。礼に始まり礼に終わる、その中で食をする。そして、基本的な食べ方としては、例えば、ご飯が箸に付かないように、まず汁物をいただき箸をうるおしてからご飯を食べるなど、そういう所作を子供たちが見て少しでも知ってくれたら嬉しいなという思いがありました。食べる順番は台本で決まっていましたが、その中でどう食べるかは熟考しました。給食が好きで、楽しみたいという純粋な気持ちをベースにしたうえで、マナーがありますので、食という文化に対してしっかりと向き合って食べることを意識していました。

前作では汁物が特に大変だったとおっしゃっていましたが、今回も多かったですね。

市原 大変でした(笑)汁物はすぐに飲めてしまい尺が短いので、どんどん追加されていきがちで(笑)でもフードコーディネーターの方がいらっしゃって、本当においしい給食を提供していただけるので、ぜいたくな時間だと思っていました。給食ひとつで一日がハッピーになることもあり。僕も小学校の時は給食のために学校に行ってました。僕が通っていた学校は、給食を学校で作っていたんですが、ずっと覗いてました。覗いてたら何かくれるんじゃないかと思って(笑)

この作品のオファーをうけていかがでしたか?

市原 今でも覚えていますが、地方から帰る新幹線の中で台本をいただいて、給食をテーマにする作品は見たことがなかったですし、しかも完全オリジナル作品。すごくおもしろいことを考える方がいるんだなと思いました。遊べる部分がたくさんあって、現場で生み出せる可能性をものすごく感じました。10人いれば10通りの作品になるなと感じて、「ぜひやらせていただきたい」と思いました。甘利田というキャラクターを作っていくために、そこからは必死でした。どんなハードなアクションよりも過酷な現場だと思っています。この作品は甘利田が翻弄される話ですが、その滑稽な姿が素敵だと思います。甘利田の動きも何回も何回も現場で動きながら作り上げたので、家に帰ってもアドレナリンが抜けないですし、次の日のことを考えると全く寝れなかったです。でも、「『おいしい給食』を見て楽しみをもらった」とか、「勇気をもらった」と、いろいろな声をいただけて、その声を聞いてすべてが報われました。作品をつくるということはこういうことなんだ、見てくださる方のためにあるものだと改めて実感しました。

オリジナルで作り上げる苦労もあるかと思いますが、市原さんご自身がアイデアを出す場面も多いですか?

市原 基本的にはだいたい自分で考えて自由に動いています。ダンスを踊るというのも、最初は監督が「ちょっとだけ手を動かして見ましょう」と言って、そこまでやるんだったら踊りたくなっちゃうなと(笑)監督と互いに土台となって積み重なっていく感じがありました。

ダイブのシーンも印象的です。

市原 あれも台本に書いていないです(笑)気が付いたらダイブしていました(笑)それくらい甘利田が憑依していて、なぜあの動きをしたのかも覚えていないんです。現場に入ると甘利田の欲を満たすことにいっぱいで。

今回、甘利田が学校を飛び出し、給食センターが登場します。登坂さんとの共演も新しい展開を感じました。

市原 このシーンでは甘利田が私服を着ているんですが、その服で撮影現場を歩いていて、これが自分の私服だと思われたら嫌だなと思っていました(笑)サングラスをかけて、キャップをかぶって、サンダルをはいて…。衣装についてはいろいろ考えました。微妙なラインがリアリティがあっていいんじゃないかということでこうなりました。登坂さんは、もともとアナウンサーという感情を入れないで何かを伝える職業をされていて、それに対して、芝居は感情を入れないといけない。この世界に飛び込んでくださったというのが、僕はすごいことだと思いました。言葉もしっかりと入ってきました。

市原さんは料理を作るのがお好きと聞きましたが、その時は栄養よりもおいしさを重視にしますか?

市原 はい(笑)現場に入るときは、身体に残らないようにしていますが、現場から離れたらダメです(笑)おいしいものを食べたい。量プラス質ですね(笑)休みの日はいつも料理しています。

この映画の撮影中はどのようなものを食べていたんですか?

市原 消化がいいのでうどんを食べていました。お腹がいっぱいになると集中力が切れてしまったり、パフォーマンスが落ちてしまうので。なるべく野菜をとって、長期的に体力を維持できるようにいろいろなことを考えますが、基本はうどんです。

作る料理はどのように決めるんですか?

市原 本をみたり。たくさんの本が家にあります。あとはインターネットでも調べますし、そうやっているうちに器具も増えてきて、新しいものを作っていきます。

原作がない作品でここまで長く続くのは素晴らしいことですが、続く要因はどのように考えていますか?

市原 それはもう作品を愛してくださったお客様のおかげです。そして、僕らの現場は愛がある現場です。監督しかり、プロデューサーしかり、スタッフも。子供たちに対しても愛情がある現場です。ビジネスと夢が混とんとする世界ではありますが、僕らはまず夢を見て、現場を作り続ける、その同志がたくさんいたことが続けることができた秘訣かもしれないです。

映画としては前作が「Final Battle」で、今回は「卒業」というタイトルですが、まだ続けられそうですよね?

市原 今回の映画の中ではある地名を何度か出しているのですが、シーズン3ではその土地での撮影があるんじゃないか…という思いもあります(笑)ただ、そればかりは分からないです。体力が持つかどうかも分からないです。シーズン1ではだんだんとギアが入っていって世界観が作られて、シーズン2はトップギアで入って音速で走りぬいた状況でした。その中でシーズン3はどこまでいってしまうのか(笑)シーズン3があるとしたらやりたいことが一つあるんですけど…まだ言えないです(笑)

【写真・文/編集部】

STORY
卒業式前の暴食。給食マニアの、給食愛のための、プライドを賭けた、最後の戦い―。1986年、秋。黍名子中学で3 年生の担任を持つ甘利田は、受験シーズンに突入するにも関わらず、給食の献立表のみを気にしていた。学年主任の宗方早苗はそんな甘利田に呆れつつ、彼女自身もある悩みを抱えていた。そんなある日、甘利田にとって受験以上に気になる事件が浮上する。給食メニューの改革が決定されたのだ。不穏な空気を察知した甘利田は、給食を守るために立ち上がる!果たして受験は?卒業は?進路は?そして、中学最後のうまそげ対決、勝者はどっちだ!?


TRAILER

DATA
『劇場版 おいしい給食 卒業』は全国で公開中!
監督:綾部真弥
企画・脚本:永森裕二
出演:市原隼人、土村芳、佐藤大志、勇翔(BOYS AND MEN)、いとうまい子、直江喜一、木野花、酒井敏也、山﨑玲奈、田村侑久(BOYS AND MEN)、登坂淳一
制作プロダクション:メディアンド
配給:AMG エンタテインメント
製作:「おいしい給食」製作委員会
 公式サイト
©2022「おいしい給食」製作委員会

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