『太陽とボレロ』森マリア インタビュー

INTERVIEW

『太陽とボレロ』で宮園あかり役を演じた森マリアにインタビューを行った。

本作ではヴァイオリン奏者の楽団員・宮園あかり役ですが、元々ヴァイオリンの経験はあったそうですね。

 趣味としてですが5歳から15歳までやっていました。ヴァイオリンの先生が優しい方で、厳しくするよりも長く続けることのほうが大切だからと、いつも褒めていただいて練習していました。心が折れそうになることもありましたけど、それよりも続けることが大事とおっしゃっていただきました。それはお芝居にも言えることだと思いました。

今回は映画の中で実際に演奏するということでかなり練習したと聞きました。

 映画の出演が決まったのがクランクインの3週間前で、その前には全く聞いていなかったのでとにかくビックリしました。「本当に私でいいんですか?」と何回も聞き直すくらいでした。クランクインまでの3週間は1日7時間練習して、クランクインしてからも毎日練習しました。

今回映画に初出演ですが、役作りはどのように行いましたか?

 初めて水谷(豊)監督にお会いしたときに「ありのままにやってもらっていい」とおっしゃっていただいたので、もちろん脚本は読み込んでから行きましたが、私自身がヴァイオリンの練習をする中で、ヴァイオリンについて考えたり、あかりについて考えたり、ひたすら役に向き合うことを大切にしました。「ヴァイオリンこそ我が人生です」というセリフがあるんですけど、ヴァイオリンを練習しているとヴァイオリンが自分の体の一部に感じるようになって、“あかりの言っていることはこういうことか”と思うことができたので、練習した時間が重要だったなと思いました。

あかりはどのようなキャラクターだと捉えていましたか?

 あかりはとにかく明るくて、でも真面目に真剣に楽団のことを考えていて。楽団のみんなのことを家族のように大切に思って、その場所を守りたいと考える一生懸命な子だと思いました。

ご自身の思いが役につながった部分もありますか?

 私もヴァイオリンを習っているときに弦楽器の合奏団にも所属していたので、その場所がなくなってしまうことも想像できて、あかりの気持ちも想像しやすかったです。その気持ちを自然に表現するために、楽団のみなさんのことをもっとよく考えて、脚本を見るときもみなさんの顔を思い浮かべながら大切に演じることを心掛けました。

劇中では檀れいさんとの共演シーンも多かったと思いますが、ご一緒していかがでしたか?

 檀さんは演技をしている時もしていない時も、いつも理子さんのように私と接してくださいました。私が芝居で悩んでいるときも「ゆっくりやって大丈夫だよ。焦らなくていいよ」と声をかけてくださって、いつでも理子さんのように見えたので、檀さんと目が合ったらいつでもあかりのような気持ちになれました。映画で私の目がキラキラしているのは、普段からの檀さんとの関係性の表れだと思います。

一方で町田啓太さんはもっと距離感の近い役どころでしたが、お話もされましたか?

 町田さんはとても真摯にお芝居に向き合っている方だという印象が強いです。水谷監督からのリクエストに笑顔で答えていて、お芝居への向き合い方が勉強になりました。撮影の合間はいつもお話をしていました。どれだけ撮影が長くなって忙しくても、町田さんはいつも疲れを見せずにニコニコしていらっしゃったので、その姿勢は素敵だなと思って、見習おうと思いました。

本作では他にもキャリアが長い方が多かったですが、一緒に演じて学ぶことはありましたか?

 とても勉強になりました。この映画に出演して、みなさんがお芝居を楽しんでやっていらっしゃるなということが印象に残っています。私は、演じているときは楽しいんですけど、できないことを考えすぎてしまうことが多くて、撮影が終わってからも反省することがあるんです。反省することも大切なんですけど、この映画はとにかく楽しんでもらうための映画なので、お芝居を楽しむってこういうことなんだなと思いました。

ご自身で特にこだわったシーンはありますか?

 丘の上での演奏シーンです。初めて撮影した演奏シーンで、それまでヴァイオリンを練習してきて、どう映像に映るのかが想像がつかなかったので、丘の上に立って夕日の優しい光に包まれた時に、“こういうことか”と、あかりと自分が一緒になれた気がしました。1時間くらいの撮影だったんですけど、無我夢中でヴァイオリンを弾いていました。

水谷監督からの演出はありましたか?

 監督は俳優としても活躍されている方なので、演出の時にこんな風に演じて欲しいと見本を見せてくださいました。私は分からないことが多いので、見本を見せていただけるとイメージが湧いて演じやすかったです。

「監督がかけてくれる言葉が魔法みたいだった」とコメントでおっしゃっていましたが、特にそう感じた瞬間はありましたか?

 私がうまくいかなかったときに水谷監督が来てくださって、「もしこの映画が面白くないと言われたとしたら、それは監督である私の責任だから、マリアちゃんはただ楽しく演じてくれたらいいよ」と言ってくださって。それからできるだけ前向きに取り組んで、監督が言うことを素直に表現できればいいなと思って演じました。その言葉をいただいてからすごく変わりました。あとは水谷監督の声が素敵なので、「よーい、スタート!」の声が心地よすぎて、それを聞いただけで絶対にうまくいくと思いました(笑)そういう意味でも魔法をかけられていました。

完成した映画を見て、特に惹かれたシーンはありましたか?

 演奏シーンはもちろん見どころなんですけど、何よりも俳優のみなさんが魅力的な方ばかりです。ユーモアあふれるコミカルな演技とか、細かい笑いが魅力的だと思いました。何気ないシーンでも監督は愛情をもって演出をしてくださるので自然といい作品になると思いました。

衣装協力/Aunt Marie’s、OBLI、LA BELLE ETUDE
スタイリスト/津野真吾(impiger)
ヘアメイク/伴まどか

【写真・文/編集部】

STORY
水谷豊監督3作目となる本作は、“クラシックのオーケストラ”を題材に音楽を愛する普通の人々の人間模様を洒脱なエンターテインメント作品。ある地方都市のアマチュア交響楽団。主宰者である主人公の花村理子は18年間、個性豊かなメンバーとともに活動してきた。みんな音楽を愛する普通の人々。しかし、楽団の経営は苦しく必死に奔走する理子だったが、ついに楽団の歴史に幕を閉じる決断を迫られる。そして、最後にして最高のコンサートがはじまる。


TRAILER

DATA
『太陽とボレロ』は2022年6月3日(金)より全国で公開!
監督・脚本:水谷豊
出演:檀れい、石丸幹二、町田啓太、森マリア
田口浩正、永岡佑、梅舟惟永、木越明、高瀬哲朗、藤吉久美子、田中要次
六平直政、山中崇史、河相我聞、原田龍二、檀ふみ
水谷豊
配給:東映
©2022「太陽とボレロ」製作委員会

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