『君は放課後インソムニア』で眠れない夜を過ごし、偶然にも天文台で森七菜が演じる伊咲と出会う男子高生・中見丸太(なかみ・がんた)役を演じた奥平大兼にインタビューを行った。
奥平 やっぱり実写化するときは不安と壁があると思います。原作があるものを実写化するときに絶対に同じことになるし、みんな当たる壁だと思うんですけど、それは感じました。もちろん作品の雰囲気を無視してやるのはよくないけれど、実写だからといって全部同じにしたらそれはそれでつまらない。今回、七尾に行けて、いろいろな場所を貸していただけて、その瞬間を生きることができたので、せっかくなら自分が思ったことを出したいなと思いました。原作の丸太(がんた)とはちょっと違うところがあると思いますが、それは自分がやりたいというのもあるけれど、愛があるからこそこういう風にしているというか、ちゃんと丸太が好きだし、丸太として、こういう状況になったらこうするというものがあるからやっていました。
奥平 最初に「みんな似ているね」という話になりました。見た目が似ているというのは実写化作品で言ったら誉め言葉です。1か月間、みんなと一緒に過ごしましたが、みんな中身も似ているし、お芝居の仕方も似ているし、役へのアプローチの仕方がいいなと思いました。いつもはやっているときは自分のことしか見えていませんでしたが、いつもよりも周りの人のお芝居を見ることができ、それは初めての感覚でした。
奥平 普段は自分が出ているシーンのときは、自分の事とか、画がどういう風に見えているかを考えたりしています。その後にいろいろな人のお芝居を見学しますが、今回は一番出ていたのでそういう時間が少なかったですね。周りの人を見るのはお芝居をやっているときなので、いつもと違う風にみんなを見れました。
奥平 変わらなかったです。無理してやってお芝居がおろそかになるのが嫌だったので、自分がやれることだけやろうと思って普通にしていようと思っていました。特に主演だから現場を盛り上げようということはしていなかったです。森さんがいたから安心だったというのはあります。
奥平 撮影では大変なこともありましたが、その中でみんな撮影することを楽しんでいました。きつかったこともあったけど、いいものを作るためにがんばっていたので雰囲気は悪くなかったし、役者の中ではみんな楽しめていました。逆に助けてもらうこともあったので、いい現場でした。
奥平 大半は森さんだったんですけど、森さんは今まで主演でやる機会が僕よりあったと思うので。丸太という役が伊咲(いさき)というキャラクターに合ってから変わっていくので、僕が変わっていく成長過程は伊咲がいないとできないというのを思っていたので、伊咲と一緒のシーンをやっているときはお芝居的にも助けられていると感じました。あとは後半の丸太の成長は、伊咲だけではなくて周りのキャラクターのおかげでもあると思うので、ほかのみんなとお芝居をしているときは、気持ちの流れとして助けられたし、そもそも現場が楽しくなるのはみんながいないとできないということでも助けられたし、小さなことだけど、積み重なって助けられたなということがいっぱいあります。
奥平 みんなでいるときはしゃべっていたんですけど、森さんと2人のシーンのときはふざけたりして笑っていた記憶があります。メイキングを見たいですね(笑)。何をしていたんだろうというのは僕も知りたいです。みんな大人で、若者らしさもあるけどキャピキャピしている感じではなかったので、そういう意味では逆に合っていました。でもお芝居で若者らしさを出せるのは年相応だからできることだと思っています。
奥平 僕自身でいうと、中身は似ていなかったんです。境遇は違いますし、不眠症にもなったことがなかったので。その辛さを簡単にわかったようなつもりになるのが一番ダメだと思って、ちゃんと理解したいし、理解の仕方は慎重にやりました。それ以外はみんな監督と話し合ったり、一緒にお芝居をするにつれて変わっていきました。
奥平 学校にいるシーンとか、天文台で2人で模様替えをして、そこに天文部として自分の空間を見つけられるのは、僕もそうだけど学校に自分の空間があったらすごくうれしい。そういうのがうらやましかったです。僕にはなかったことをやっているというのは単純にうらやましいし、どこかこういう学校生活いいなと思えるところがありました。文化祭のシーンとか、学校にいるときは本当に楽しかったし、今見てもうらやましいと思います。
奥平 服をいじっているときです。夜はいろいろなことをしたくなるし、いろいろなアイデアが浮かぶので、次の日に何もない時は夜遅くまで起きていて、作業している時もあればゲームをしている時もあります。仕事がある時とかやることがあった時にそれだけで一日を終えたくなくて、もっと一日を楽しみたいと思います。寝る時間は少なくなるけど、無理やり一日の時間を使って自分のやりたいことをやっているので、時間関係なしに、何かをやってから寝ることはあります。でも撮影期間中は、趣味はあまりやらないです。ゲームはたまにやったりはするけど、基本は映画を観ます。作品に入っているときは映像の事しか考えていないです。
奥平 ホラー映画が好きです。ホラー映画はちゃんと観ていると、なんでこうなるのかが分かるから怖くなくなるんです。分かっているから「そうだよね」となるので、物語として伏線がたくさんあるホラー映画を観るとおもしろいなと思います。
奥平 観る側でいいかなと思います(笑)こういうふうに撮っているんだろうなというのはありますけど、詳細な裏側は知りたくないです。でも、できる機会があればもちろんやってみたいです。
奥平 こういうことをしたいという目標はあまりないのですが、唯一、今まで会った現場のスタッフさんともう一回会いたいというのがあります。2年目、3年目には1回会ったことがあるスタッフさんがいたりしたこともあって、もう1回同じ監督とやれたらいいなと思います。「前回あんな感じなのに今回違うね」という話をしたりすると、自分のことを前から見てくれている人として大切にしたくなります。そういう人と会うとモチベーションが上がるので、こういう役をやりたいとか、こういう作品に出たいというよりもそのほうが大きいです。
奥平 どうなんですかね…自信を持って「はい」とは言えないですけど(笑)そうではいたいです。今でも分からないことは分からないですし、壁に当たるときはバチバチにあたるし、そういうことはいっぱいあるので、そういう意味では変わっていないかもしれないけど、成長していればうれしいなと思います。
奥平 相談します。今までに一緒にやってきた監督に連絡して、ワークショップにお邪魔したりとか、その時に撮影している作品の監督に相談したりとか、そういう意味で相談できる人はたくさんいるので、それはうれしいですし、助かっています。その時の悩みはその時の監督が一番見ているし、OKをしてくれるのは監督なので。自分が入っている作品に迷惑をかけたり、本領を発揮できなかったりが一番嫌なので、その時の監督に「どうしたらいいですか?」と聞くのが一番いいと思っています。それと今までの自分を知っている監督の存在が一番大きいです。
【写真・文/編集部】
「富士山さんは思春期」、「猫のお寺の知恩さん」で一瞬のきらめきのような思春期を描いた青春漫画の旗手・オジロマコトが手掛け、2019年より「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて連載中の「君は放課後インソムニア」。幅広い世代から高い支持を得、現在、コミックスは第11集まで刊行されている大ヒット漫画を映画『東南角部屋二階の女』で長編映画の監督としてデビューし、テレビドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」や「祈りのカルテ」でも演出を務める池田千尋監督が実写映画化。若手実力俳優の森七菜、奥平大兼がW主演を務める。
映画『君は放課後インソムニア』は全国で公開中
出演:森七菜、奥平大兼
桜井ユキ、萩原みのり、工藤遥
田畑智子、斉藤陽一郎/上村海成、安斉星来、永瀬莉子、川﨑帆々花
でんでん、MEGUMI、萩原聖人
原作:オジロマコト「君は放課後インソムニア」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
監督:池田千尋
脚本:髙橋泉 池田千尋
主題歌:TOMOO「夜明けの君へ」 (ポニーキャニオン/IRORI Records)
企画・制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
製作:映画「君ソム」製作委員会
配給:ポニーキャニオン原作:オジロマコト「君は放課後インソムニア」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
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©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会