『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』橋本淳 インタビュー

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INTERVIEW

『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』でちばしん役を演じた橋本淳にインタビューを行った。

以前、舞台で共演された稲葉友さんと、映画で共演していかがでしたか?

橋本 舞台の時はそこまで一緒のシーンがなくて、今回初めてガッツリと、特に2人でずっと一緒にいられる役柄を演じられたのはありがたかったです。共演は10年ぶりですが、たびたび会っていたり、お互いの芝居を観に行ったり、作品を観ていたので久々感はなかったです。彼の良さや武器を知ったうえでスタートできたというのは、お互いのことを分かって演じられるという強みがあるので、関係値があるだけで、いいスタートを切れるという確信はありました。彼がいるだけで僕が作り上げられる部分はあると思いました。彼のいい部分をもっとよくしたいし、それはお互いに思っていたと思います。信頼関係があったので、撮影現場も楽しかったし、カメラが回っていても回っていなくてもしゃべっていたと思います。

撮影期間はどれくらいでしたか?

橋本 2週間くらいです。僕らもそうですが、スタッフさんも休みなくずっとやらなきゃいけない。でも今思うとしんどかったですけど、あのタイトなスケジュールだからこそ撮れたエネルギーや思いが凝縮されて、濃密な部分が出たと思うと、結果的に良かったと思います。順撮りに出来たので、ラストシーンに向かっていく過程は、撮影現場の疲弊感とか関係性の震度も深くなっていきますし、ドキュメンタリーに近い感覚で撮れたと思います。大変でしたけど(笑)

具体的に大変だったのはどういったところですか?

橋本 長いシーンが多くて、その中のセリフ量も多かったです。キャスト陣が時間的制約があるのでNGを出すわけにもいかなくて、でも、クランクイン前に全シーンリハーサルができて裕福な時間も過ごせました。あとは移動時間も彼と2人でセリフを合わせたり、細かい修正ができました。「次のシーンどうしようか」とか、「これくらいの温度感でやろうか」とか、そういったコンセンサスを取れたので、そういった部分では無駄な時間がなく濃密な時間を過ごせたと思います。

劇中では2人でのシーンが多いですね。

橋本 2人に対していろいろな登場人物が台風のように過ぎ去っていくので、僕ら2人になったときに締めるかが大事な要素だったと思います。そこがぶれてしまうと、作品がぶれてしまうので、いろんな方が来やすく出ていきやすく、2人が役として立てているかを考えました。

演じた役への印象はいかがでしたか?

橋本 クランクイン前に30歳の役なので30年間どうやって生きてきたのかと考えて、ストーリーの中身というよりバックボーンを重視しました。彼と共に歩むためには僕の人生の要素も入っていますし、彼が感じる絶望感は僕も過去に感じた絶望とリンクさせたり、似た人をモデルにしたり、いろいろな要素を入れながら、最後は自分の中の感覚を乗せました。ちばしんは大学受験に失敗して引きこもりという要素がありますけど、それだけではなくて、傷だったり強さをどう持って臨むかということを考えたので、感覚的には近いと思います。完全に一致ではないですけど1~2割は僕が入っていると思います。取材を受けて、話していると泣きそうになるくらい、リンクしていたのかなというのはあります。

演じている時にはリンクしていると感じましたか?

橋本 ラストシーンを撮っている時にありました。記憶を飛び越えて過去が透けて見えるくらいのイメージが乗っかってきました。僕自身も、あの時ああしていればよかったなという友達もいるので、複雑な感情になったのを覚えています。ただの単純な涙ではなかったと思いますが、僕自身が出過ぎてもよくないので、これでちばしんが救われたのなら、そのために僕の感情が使われたのならよかったかなと思います。

ラストシーンに向かっていく過程は本当に感動しました。

橋本 どこに向かっているのかという感じになるんですけど、最後の流れを観ると、現実世界に立ち返らされる。僕自身もずっと連絡を取っていなかった友人や知り合いに連絡してみようかなとか、人に対して優しくしたいなという気持ちにさせてくれる映画になっています。途中は変なんですけど(笑)本当にジャンルを固定できない。それは監督が持っている人に対しての思いが結実した作品なのかなと観て思いました。あのエンドロールがあると、観た人がよかったと思っていいのかなとちょっと救われる、重さが軽減される部分はあります。

橋本さんは、本作の公開決定時に「自分事のような気がしてならない」とコメントされていらっしゃいましたが、そう感じることがありましたか?

橋本 生きる意味って何なんだろうな、つらいなと思った時期がありました。でも、その絶望を救ってくれたのは他人だったり、いろいろな人と話してコミュニケーションを取ることで、自分の気持ちが再生していったりしたことが僕も経験があるので。他人とかかわるのは怖いけれど、そこで一歩踏み出せるかで人生が変わると思います。多くの人が傷つけられながら生きていると思うんですけど、役者としても、自分の手が届く範囲の人は救える部分は救いながら。救うことは自分の救いでもあると思うので、救うことで人との関りを大切にしていきたいと思う部分は他人ごとではなかったです。ながちんに近い部分は感じて、この作品に関われてそういった部分が思い返せたので、よかったです。

そういった部分は、共感する方も多いかもしれないですね。

橋本 観た方から感想をいただくんですけど、やっぱり自分事のように感じたと。みんな共感する部分も違うんですけど、自分の学生時代を思い出したとか、人に対しての思いが変わったとか。コロナで人との距離が空きやすいご時勢で、そうではなくても、大変だし、辛いこともあると思うんですけど、人と関わりに行く、一歩を踏み出せる映画なのかなと。いろんな方の感想を観て、それがちょっとでも伝わっているのを見ていると、この作品に携われて救われました。そんなに重たいテーマではないんですけど、癒しとか救いになる温かい映画です。

軽いノリのながちんと、慎重なちばしんの対比がおもしろかったです。ご自身はどちらに近いと思いますか?

橋本 極端な2人ですけど、ちばしんに近いと思います。けど、ながちんの良さももちろんあって。ああいう生き方っていいよなと思うのがながちんで、実際はちょっと考えてしまう、行動に移すときに一歩足を止めてしまう感覚はちばしんかもしれないです。2人の要素があると思います。2人とも優しいですよね。

物語が軽快なノリで進んでいくことも多い作品ですが、ご自身の中で軽いノリでやってみたらうまくいかなかったことはありますか?

橋本 僕は相談されることが多くて、ちゃんと答えるんですけど、昔は茶化して答えて、「大丈夫だよ」と言った一言が実は全然大丈夫じゃなかったりとか、そういう失敗は結構あります。「そんなに重くとらえなくていいんじゃない?こんな感じでやったら?」と言って、その通りやってくれて大失敗したことがあったみたいで、ノリで話の流れで言っちゃったんだけど…ということを経験してから、あまり明確な答えをしないようになりました。相談するということは肯定されたいんですよね。だからあまり明確な助言とか否定的な意見を言わずにちょっと寄り添ってあげるということを学びました。20代でいっぱい経験しました。

逆にやってよかったと思うことはありますか?

橋本 芝居はそうなんです。悩んで作ったものより、感覚的にやったものほど感動することが結構あるんです。あまり深く作りこまないシーンのほうが感動してくださったりするので、そこは難しいなと思う部分はあります。全部がそうではないんですけど、変に情報過多になっている芝居より、ちょっと余白が残っている感覚というか。ただ成功したから同じようにやればいいやと思うと大失敗したり、そこは難しいです。芝居は特に多いです。ダンスがうまい人は力が抜けているんですけど、抜く部分と入れる部分の匙加減が大切なのかなと思います。バランス感覚は大事だと思います。

やってみないと分からないですね。

橋本 一回ガチガチにやったからこそ、抜く場所が分かりますね。一回型を決めて作らないと、オリジナリティができないですし、その結果自分のスタイルが確立されるものなので、積み重ねが大事なんだろうなと思います。死ぬまで勉強なんだろうなと思います。

ヘアメイク:永瀬多壱

【写真・文/編集部】

STORY
映画×音楽の祭典”MOOSIC LAB 2023”でお披露目となった橋本淳・稲葉友W主演、“なかないで、毒きのこちゃん”主宰・鳥皮ささみこと猪股和磨が自身の舞台を映画化した監督最新作『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』。本作は、引き籠りの男・ちばしん(橋本淳)の元に、かつての親友・ながちん(稲葉友)が「俺死んでるから死体を見つけにいってほしい」という突拍子もない相談をしてきたことから始まる、少し不思議で寄り道多めな青春ロードムービー。


TRAILER

DATA
『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』はシモキタ-エキマエ-シネマ『K2』(東京)、kino cinéma 横浜みなとみらい(神奈川)ほか全国順次公開中
監督・脚本:猪股和磨
出演:橋本淳、稲葉友、安倍乙、森高愛、マメ山田、入江雅人、千葉雅子、中村まこと、市川しんぺー、柿丸美智恵、金子清文、結城洋平、今川宇宙、木山廉彬、中西柚貴、タカハシシンノスケ、八木響生、飴、亀岡孝洋、、中澤功、久我真希人、浅見紘至、中田麦平、工藤史子、森田ガンツ、吉田壮辰、植田祥平、、田村優依、森岡未帆、芳田遥、斉藤マッチュ、古木将也、チカナガチサト、土田有未、森耕作、金子健太郎、猪股大和

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