『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』で監督を務めた酒井麻衣監督にインタビューを行った。
酒井監督 私が学生の頃に出会いたかった物語だと思いました。青磁も茜もまっすぐな感情で生きていて、弱い部分もあり、強がりな部分もあり。その2人が出会うラブストーリーなので、憧れの気持ちもありました。監督として、作品ごとにお客さんにとっても自分にとっても見たい世界を撮りたいという思いがあります。
酒井監督 私の中で自分が監督するのであれば心で見ている世界を映したいと思っています。今回に関しては、茜がどう感じた世界なのか、茜は家でどういう生活をしているかが見えるので、リアルと見たい世界のバランス感に気を使っています。
酒井監督 別の作品の準備をしているときに「酒井さんに合いそうだから読んでみて」とおっしゃっていただいて原作を読みましたが、いま届けたい物語だと思って「やりたいです」とお話しました。
酒井監督 キャスティングについてはプロデューサーたちと話し合って決まりました。ご本人たちが持っている素直さや品の良さがいい風に混ざり合って、青磁と茜になっていった気がしています。白岩さんだからこそ表現できる青磁、久間田さんだからこそ表現できる茜になっていると思いました。すごくテイク数を重ねたところと、全くテイク数を重ねていないところがありましたが、事前に2人とはディスカッションができていたので、テイク1で出る柔軟性もしっかりと、とらえられるようにしていました。
酒井監督 お二人とも真面目で一生懸命なので、「その役にそのままなるにはどうしたらいいのか」となって肩に力が入ってしまっていましたが、それぞれの共通点を見つけてみようと話をしました。例えば、青磁と白岩さんだったら、白岩さんはお話上手で、みんなの空気を読みながら、あえて笑わせるために空気を壊したりすることもあり、それは青磁と似ているね、と。白岩さんが、みんなを笑わせたいからボケているという感情は、実は青磁にもあるんじゃないかと考えました。全てがそうではないのですが、等身大に近い、自分との共通点を見つけるということが最初の課題でした。ほかにも白岩さんに関しては初主演で、そこまで芝居経験がある方ではなかったので、念入りに役作りの話や稽古を重ねました。
酒井監督 久間田さんは役作りを細かくオーダーするよりは、不安というか自信がなさそうな顔をされていたので、一生懸命やろうというプレッシャーから、今思っている不安も茜ちゃんに重ねて欲しいし、素敵だから自信を持ってという話をしていました。
酒井監督 実は私はそんなに俳優と話しているわけではないんです。必要なことを話すだけで、雑談で盛り上がるということはなくて。ただ、“ちゃんと見てるよ”という姿勢は気を付けています。せっかくご一緒しますし、今回だったら白岩さんと久間田さんが持っている魅力を最大限にキャラクターと合わせて、化学反応が生まれるように接しさせていただきました。
酒井監督 ロケ地へのこだわりは強いほうだと思います。ロケハン(ロケ地探し)は、事前に制作部さんが探してきてくださるのですが「時が止まったように見える遊園地がいいです」のようにざっくりとオーダーを、まずは言います。今回は学校と茜の家が大変でした。その場所は、そのキャラクターが生きている世界なので、映画で映っている時間よりも前の、歴史があって、そこが映像で伝わってほしい。遊園地に関しても、青磁が気に入っていて、茜を連れて行きたいと思うような遊園地でなければいけないし、学校の屋上のアトリエのようになっているところも“青磁はだいたいここにいるんだろうな”と説明をしなくても見て分かる、そういうロケ地と出会いたいなと思っています。
【写真・文/編集部】
無彩色で息苦しいこの世界。救い出してくれたのは、“私を嫌い”な君でした――。マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。自由奔放で絵を描くことを愛する、銀髪のクラスメイト・青磁。何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手な茜だったが、彼が描く絵と、まっすぐな性格に惹かれ、茜の世界はカラフルに色づきはじめる。次第に距離を縮めていくふたりの過去がやがて重なりあい、初めて誰にも言えなかった想いがあふれ出す――。
『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』は2023年9月1日(金)より全国で公開
出演:白岩瑠姫(JO1)、久間田琳加
箭内夢菜、吉田ウーロン太、今井隆文/上杉柊平、鶴田真由
監督:酒井麻衣
原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版刊)
脚本:イ・ナウォン、酒井麻衣
音楽:横山克、濱田菜月
主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
製作:『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース
配給:アスミック・エース
©2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会