映画『違う惑星の変な恋人』で、空気の読めないおとぼけピュア女子・むっちゃん役を演じた莉子、変で一生懸命で憎めない男子・モー役を演じた綱啓永にインタビューを行った。
綱 手応えは正直なかったです。セリフを2回読ませていただいたんですけど、1回目は自分の用意してきたやり方でやって、2回目は「こうしてやってみてください」と言われてやりました。どうなんだろうと思って顔を見ても、よかったと思っているのか、微妙だなと思っているのか分からなくて。そうしたら無事にモーの役をいただけたのでよかったです。
莉子 映像になるまでどうなるのか全然分からなかったですし、役名もモーとかむっちゃんとかあだ名みたいで、誰がどのセリフを話しているのか頭の中で整理するのも大変でした。会話劇ですし、映像化されたのを早くみたいなという気持ちでした。脚本も今までにやったことがないジャンルだと思ったのでチャレンジしてみたいという気持ちがすごくありました。でも、映像化されたらどうなるんだろうなと思いながら撮影に挑みました。
綱 どの役も難しいと思うので、特別この役が難しかったというのはなくて、楽しかったです。「気持ち悪く演じてくれ」というのがあって、変な間を作ったり、セリフのスピードとか声のトーンとかが、僕が今までにやったことがない役だったので演じていてすごくやりがいもあったし楽しかったという印象です。
莉子 ありました!でも衣装合わせの時に全然しゃべらなくて。綱さんが人見知りをしていて(笑)何も話さなくてそれで終わっちゃったので、現場に入って、役柄もあって急に仲良くなったという感じでした。
綱 人見知りだよ。でも、仲良くなるスピードは最速かもしれないです。共通の知り合いがいて、共演する前にどんな人かを聞いていたので、いい印象で会いました。
莉子 グリコ(筧美和子)と2人で美容室でいるところにモーが入ってくるシーンがインだったんです。あの美容室で初めましてという感じだったので、私が共演したことがある俳優さんと仲良かったりとかで存じ上げていたので「本物の綱くんだ」と思いました。すごく明るいイメージで、それは画面から飛び出してきたままで、こんなにいい意味で画面の中と実物で変わらない人がいるんだなというくらいでした。本当にそのままだったので素敵な方なんだろうなという第一印象がありました。
綱 素敵な方なんだろうなという第一印象から、今はどう?
莉子 今も素敵な方ですね(笑)
綱 (笑)クランクインの日に莉子ちゃんが、8LOOMの「Come Again」という曲の振り付けを「今日やらないんですか?」って(笑)やるわけないだろみたいな話をしました(笑)
莉子 かつらかぶってましたからね(笑)かつらのセンスがやばかった。木村監督ワールドが止まらないという感じで。
綱 普段は自撮りとかしないんですけど、あの日は自分の見た目がおもしろすぎて自撮りして家族LINEに「おもろすぎる」って送りました(笑)
綱 明るいしゃべりやすい子です。
莉子 お互いに第一印象から変わらないと思います。
綱 変わらないね。基本的に僕はいじられることが多いんですけど、結構いじってくるというか突っかかってくることが多いです。
莉子 突っかかってくるは言い方が悪すぎるでしょ(笑)
綱 めっちゃいい意味ですよ、それがいいんです。
莉子 そうですね、この映画が会話劇ということもありますけど、モーとむちゃんの役になるとモーのしゃべりがスピード感的にスローになるので、そこは普段とは違いますけど、シーンが始まるからオンオフを切り替えるというよりは、直前まで話していてスタートするのでなんとなくモーとむっちゃんに入っていく感じがありました。
莉子 大変でしたね。
綱 パンクしそうになりましたね。
莉子 セリフの量が多すぎて、お互いにこの撮影期間を乗り越えられるのかなと話していました。
綱 莉子ちゃんは主演だから出ているシーンも多いから、本当によく乗り越えたと思います。
莉子 お互いにすごい量のセリフを覚えているから、日に日に強くなっていっている感はありました。覚えるのも早くなったし、そんなに不安にならずに本番行けるようになりました。木村監督の脚本の書き方だと思うんですけど、セリフがリアルなので忘れてセリフが思い出せないというNGはそんなになかったです。ただ、一発長回しが多かったので、2人でユニフォームを着て歩くシーンは6回くらいやりました。風とか人が通ったりとかで。
綱 外は寒かったね。僕が莉子ちゃんより多くカイロをつけていたら「なんで私より多くつけてるの?」って言われたこともありますね。
莉子 確かにめっちゃ張ってたかもしれない(笑)そんな感じで仲良くやらせていただきました。
莉子 ずっと話していました。私は普段の現場でも誰かとしゃべっていたいタイプなんですけど、今回はお互いにおしゃべりだから朝早くてもずっと同じテンションで。綱くんは朝からずっとこのテンションなのがすごいです。
綱 僕はベースが人見知りだし、正直口数も多くない性格なんです。でも絡みやすい人とはしゃべって楽しくなるので、莉子ちゃんがそのリーダースキルを持っていて莉子ちゃんがいることで僕も明るくなるという感じでした。莉子ちゃんは現場を明るくする能力を持っているんです。おかげさまで楽しませていただきました。
莉子 人見知りはしないですね。人見知りする方と話すのが得意だなと最近思います。
綱 特技じゃん、すごいね。
莉子 会話の入り方というか、いきすぎちゃうと引いちゃうと思うし、その塩梅を見分けるのが得意です。この人にはこう話しかけていこうとか、だいたい一つの現場で一人はプライベートでも遊ぶくらい仲良くなる人ができます。この前出演したドラマも仲良くなりすぎて、この前鍋パしました。
綱 セリフの空気感は意識しました。もちろん自分で意識した部分はありますけど、人は見た目で第一印象が決まるので、衣装とかヘアメイクさんに助けられました。リアルなちょうどいい服を用意してくださっていたので、不気味におしゃれじゃないというか。当たり前ですけどプロだなと感じました。
莉子 今回のこの4人はいそうでいない感じがおもしろさを生むんだろうなと思っていたので、普段は作品に入る前に自分の役作りのノートを書くんですけど、今回は作りこんでいくと作りものになっちゃうので、あまり細かくはしていなくて。会話劇は相手とのキャッチボール次第だと思うので、本番やってみないと分からないと思って臨みました。セリフも覚えるだけ覚えて言い方とか強弱とかは作りこまないというのは自分の中で決めてやっていた撮影期間でした。
莉子 4人ともいて欲しいけど、仲良くはなりたくないかも(笑)
綱 むっちゃんがおもしろかった。自分が出ていないシーンも見て、一番笑ったのはむっちゃんです。冷静だけど言っていることが変。モーとのシーンも、僕が変なことを言っていても冷静に突っ込んでくる感じが、やっているときは必死にやっていたので思わなかったんですけど、実際につながったのを見たらむっちゃんめちゃめちゃ変じゃんと思いました。
莉子 確かに、しゃべったら…という感じはある。モーは登場の時からやばいって分かるけど、むっちゃんはしゃべるまで分からないですね。私はベンジーです。ベンジーは中島さんじゃないと成立しないというくらいハマりすぎていておもしろかったです。スポーツバーでのシーンとかはベンジーがおもしろすぎて、あのやり取りが好きです。ベンジーさんがツボでした。
綱 あのおもしろい間を作り出すのは、すごいなと思いました。
莉子 中島さんとも、筧さんともご一緒させていただいて、とても勉強になりました。お二人の空気感がこういう感じだから私もこうしてみようとか、日に日に自分の中で得るものがありました。とても吸収させていただいた現場でした。
綱 むっちゃんとベンジーのトイレのシーンかな。だいぶ人気なシーンかもしれないけど。
莉子 人気なの?(笑)
綱 むっちゃんの笑っちゃったシーンの一つで、あの不思議な空気感が好きですね。
莉子 私はむっちゃんが電話かけるシーンのベンジーとグリコです。作品内で最長のシーンで、一連で撮ってるからめちゃくちゃページ数があったんです。でも、あんなに長いのに見ていられるんです。どこかおもしろい、楽しめちゃうから、本当のお二人の力でなりたっているんだろうなと思っていて、おもしろいし好きなシーンです。
綱 幸せでした。いつかはもちろんレッドカーペットを歩ける役者になりたいなと思っていたので、今回は、「歩けちゃった」みたいな不思議な感覚です。ありがたい、うれしい、不思議です。“そんな作品に携われてよかった”というような、いろいろな感情で溢れました。
莉子 私もすごくうれしかったです。でも、始まってから終わるまであまり自分がレッドカーペットを歩いている感覚がなくて。ずっとほわほわしていました。楽しく歩けたのでそれは一番かなと、貴重な経験をさせていただいたと思います。あの場にいた方が「綱くん!」とか「莉子ちゃん!」と言ってくれたから、そういうのがありがたかったです。
莉子 ずっとふざけているんですもん(笑)
綱 ふざけてはないんだけどね(笑)一切の後悔がないんです、あの日に対して。やり切ったなと。あの一日は本当に楽しみたいと思って、いざ行ったらレッドカーペットから力をもらいたかったので床に手を置きました。
莉子 後でファンの子からのメンションで、「綱くんアップにされてたよ」と、ちょうど床を触っているところがアップされていて(笑)
綱 力を吸い上げた、一片の悔いもないですね。
莉子 あれやったの綱くんだけじゃない?
綱 初めてだからこそ、ミーハーなことができたと思う(笑)基本メディアの前に出るときもそうですが緊張で倒れそうになるんですけど、あの日はそういったことがなく、楽しもうという気持ちに全振りだったのでよかったです。
莉子
スタイリスト:髙橋美咲(Sadalsuud)
ヘアメイク:岩澤あや
綱啓永
スタイリスト:三宅剛
ヘアメイク:牧野裕大
【写真・文/編集部】
感動シネマアワードの企画コンペグランプリを受賞した『階段の先には踊り場がある』で商業デビューを果たした新世代恋愛群像の旗手・木村聡志監督の最新群像劇である本作。ああ言えばこう言う不毛な会話の中、時折芯を食った台詞やスポーツ界の偉人たちの名言を放つ登場人物たちに共感したり呆れたりしているうちに、単なる恋愛映画という枠を超えて、人間の「ダメさ」と「愛おしさ」の迷宮へと誘われていく。主演は、映画『女子高生に殺されたい』、TVドラマ「ファイトソング」「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」など話題作への出演が続き、本作が映画初主演となる莉子。共演には筧美和子、中島歩、綱啓永、みらんという異色メンバーが集結。抜群のパスワークで観客を魅了する。
『違う惑星の変な恋人』は2024年1月26日(金)より新宿武蔵野館ほか全国で順次公開
監督・脚本:木村聡志
出演:莉子、筧美和子、中島歩、綱啓永、みらん、村田凪、金野美穂、坂ノ上茜
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©「違う惑星の変な恋人」製作委員会