『水深ゼロメートルから』仲吉玲亜 インタビュー

INTERVIEW

映画『水深ゼロメートルから』でミク役を演じる仲吉玲亜にインタビューを行った。

第44回四国地区高等学校演劇研究大会で「文部科学大臣賞(最優秀賞)」を受賞した中田夢花脚本による徳島市立高等学校の演劇が原作の映画『水深ゼロメートルから』。スマッシュヒットを記録した映画『アルプススタンドのはしの方』と同様のプロジェクトから生まれた“高校演劇リブート企画”第二弾作品。高校二年生の夏休みに、水のないプールに特別補習のため呼び出された女子高生たちによる心の葛藤と解放の繊細な青春ストーリーを描く。メイク推奨一軍女子・ココロ役に濵尾咲綺、踊れなくなった女子・ミク役に仲吉玲亜、ふてくされ水泳部・チヅルに清田みくり、チヅルを見守る先輩・ユイ役に花岡すみれ。

ご自身が出演された舞台が映画化されると聞いてどのような気持ちでしたか?

仲吉 うれしかったです!映画化されると聞いて、みんなで「やったー!」とLINEして喜びました。

舞台が終わってからも交流があるんですか?

仲吉 そうです、みんな仲良くて、2~3回遊びに行きました。撮影が泊まり込みだったり、舞台は稽古期間があったり。本当にみんな優しくてすぐに仲良くなりました。

舞台の上演から約2年を経て映画に出演されましたが、ご自身の中で成長したと感じる部分はありましたか?

仲吉 どうでしょう…成長していてほしいんですけど(笑)歳を重ねたから簡単にできたということがあるわけでもなく、役としてもミクが一番悩んでいる役だったので。自分だったらどうする?と考えながらやっていたので、2年後になって大人になったからやりやすくなったということはあまりなかったです。

より深く考えてしまうことも?

仲吉 そうですね、2年の間で演技レッスンを受けたり、ほかの作品の現場を経験したり、役については舞台の時よりも細かく考えられたかなというのもありました。舞台と映画ではセリフもちょっとずつ変わっていたので、役については倍くらい考えました。

設定も変わった部分があったんですか?

仲吉 設定は舞台からは変わっていなくて、性格も大きくは変わっていないんですけど、どこでミクの思いを発散するかとか、どうココロに伝えるか、伝え方とかセリフだったり、舞台よりより繊細に書かれている感じがしました。

舞台と映画ではセリフの伝え方が大きく異なりますよね。

仲吉 舞台は見ている人が見たい人を見れるし、全員違う人を見たりできますけど、映画だとしゃべっていないシーンも抜かれていたりすることがあって、この時ミクはこういう感情だったんだなとか、ココロはもっとちゃんと考えていたんだなとか、舞台で見るよりひとりひとりの思いが伝わりやすいと思いました。

映画版ならではの魅力はどこにあると思いますか?

仲吉 1番はプールで撮影ができたことです。舞台は学校の机を並べてプールに見立ててやったんです。それも素敵な演出で、高校生だからということで机を並べてやったので、みなさんの想像力でプールサイドに見てもらうという感じでした。映画だとプールサイドでできるし、大雨が降るシーンも舞台ではできても音だけ。映画だからこそ雨を降らせることができて、映像がとてもかっこよかったです。迫力もあったし、いろんな音もあって、最後のシーンは舞台とは全然違いました。エモい、と思いました(笑)

水が入ってないプールって怖くないですか?

仲吉 飛び込むシーンが何回かあったんですけど、舞台でやっていた時は机の高さだったので怖くなかったんですけど、プールサイドに立つと私が高所恐怖症ということもあるんですけど、「降りられない!」となって、動きも思ったのと違ったり。階段で降りる時間も考えてセリフを言ったり、動きは実際に行ってみて、怖くて入れないかもと思いました。

最初に脚本を読んだ時はご自身の役についてどのような印象でしたか?

仲吉 自分の役だけではないんですけど、「こういう子いるな」というのが第一印象でした。オーディションで台本を読んだ時に、自分とは全然性格が違ったので「自分はこの役ではないだろうな」と思ったのですが、受かったのがミクと言われて、「そうなんだ!」と思いました。ちょっと自分とは違ったので構えました。これを自分が演じるのかというのはありました(笑)チヅルもココロもミクもユイ先輩も、本当にどこにでもいるし、たぶん友達にいるんじゃないかというくらいどこにでもいる高校生のキャラクターだったので全部に共感しました。ミクは特にみんなの言葉を受けて、最後に一歩踏み出す素敵な役だと思いました。

仲吉さんはどの役だと思いましたか?

仲吉 チヅルです。4人で撮影期間中に、みんな普通だったらどの役だと思う?という話をしていたときに、チヅル役の子がミクで、ミク役の私がチヅルだったんです(笑)ミクとチヅルが素は逆でした。

オーディションでは何役というのは決まっていなかったんですか?

仲吉 決まっていなくて、みんなシャッフルして4人の役を全員やりました。それも長い台本をいただいて、覚えずにみんなその場の感じでやりましょうという感じだったので、これでやるぞというよりはみんな楽しくいろんな役をやったという感じで、ミクをやりにいったという感じでもなかったので、なんでミクに選ばれたんだろうとはずっと思っていました。役は山下監督が決めたわけではないので、私がミク役を継続してやるとなったときに、「一番ミク役ではないと思った」とおっしゃっていましたし、私もびっくりしました。

どういうところがチヅルっぽいと思いましたか?

仲吉 負けず嫌いなところです。昔は男女関係なしに、一番になってやるぜぐらいの勢いだったので(笑)ミクみたいに内に秘めて考えて考えてというよりはチヅルみたいにバッ!といくタイプで。外で遊ぶの大好きでしたし、チヅルが一番近いです(笑)

映画の中でのミクのイメージで、今お会いして“チヅル合うかも”と思いました(笑)。

仲吉 印象が変わりました?(笑)そうですよね!オーディションの時もフリートークもあったので、ミクらしさがあったわけではないと思うんですけど、どこかでミクがいいと思ってくださったんだと思います。でも、意外とこういう感じです(笑)ミクには一番遠いですね。

2年前に舞台をやってから、今回映画で同じ役を演じるうえで難しかったところはありましたか?

仲吉 ミクとココロが言い合うシーンは舞台から映画になるときに一番変わったところでした。最初はセリフとかは舞台のまま引き継がれたのでなんともでやっていたんですけど、シーンを撮っていくごとに舞台のミクと映画のミクでは違かったので、ちょっとちぐはぐになる場所もあったり。舞台では対面でやっていたので距離が近かったんですけど、映画ではプールサイドで結構距離があって、倍の声で伝えないと届かないし。でもそれくらい大きい声で伝えようとするとミクらしさがなくなってしまうし。そこの加減とか、舞台で染み込んでいたミクが出ちゃうので、それだと今までのミクとは違ったものになっちゃうからそこをどう変えていくかが苦戦しました。

舞台と映画では声の出し方は違いますよね。

仲吉 舞台では響きやすい環境でやっていたものが、映画では周りで野球部が練習をしていたり、プールサイドだったりで全然違ったので、演じてみてビックリしました。これくらいじゃ聞こえないのか、と5~6回やって監督と話し合って試しながら見つけていきました。

ほかにも現場で演出を受けて気づいたところはありますか?

仲吉 プールは広いので、思ったより動かないと動いているように見えないんです。小さく見えてしまうので、いい意味で舞台よりも解放感があって自由に演じていました。監督も好きなタイミングでカットをかけるので全然かからないこともあって。好きなようにわちゃわちゃしていたので、そのおかげで女子高生らしさがあったり、仲の良さが伝わっていたかなと思っています。プールサイドでやってみないと分からないことはいっぱいありました。

アドリブとかもありましたか?

仲吉 ありました。チヅルが一番多かったです。チヅルは自由気ままにやっている感じなので、1回台本通りに演じて、そこでチヅル役の(清田)みくりちゃんが思ったことをやってみてという感じで、みんな自分にちょっとずつ近づけた感じでやってみて、これ足したらおもしろいかもとか、その人の良さが出せたと思っています。

ミクについて現場で作った部分もあったんですか?

仲吉 ありました。ココロとのシーンで悩んでいた時に、山下監督が「仲吉玲亜そのもので1回やってみて」と言ってくださって、それを重ねて、セリフをなくしたり動きをちょっと変えたりしながらシーンを作りました。

いろんな経験ができたんですね。

仲吉 初めて自分がメインとして出演する映画がこれでよかったと思っています。監督も優しかったし、キャストのみんなも優しくて仲良くなったし、本当にアットホームで、みんなで作るという感じで楽しかったです。

実際に学校を借りて撮影されたんですか?

仲吉 そうです。高校より楽しかったんじゃないかというくらい毎日楽しかったです。泊まり込みの撮影だったので、その子の部屋に行ってみんなでご飯を食べたり、「明日ここどうする?」と話したりして、宿泊行事みたいでした(笑)

何日くらいで撮影されたんですか?

仲吉 1週間くらい泊りました。

それくらい一緒にいると修学旅行みたいな。

仲吉 そうですね、修学旅行みたいな感じでみんな最終日には寂しいと言っていました。

今回撮影に臨むにあたって大切にした点はありますか?

仲吉 ミクとしてのプライドは舞台から変えずにいました。セリフの出し方は変わったんですけど、元のミクは変えずにと意識して。阿波踊りへの思いとか、プールに入って自分の体形を見られるのが嫌だったり、自分が守りたいものが揺らがずにいられるようにしました。阿波踊りに対してバカにされたりするとプライド的に嫌なものは嫌だから。芯となるものは変えないようにしました。そこがミクのカッコいいところだと思ったので、なくさず、ミクの良さを出したいと思いました。

仲吉さんは3月に高校を卒業されたということですが、今後女優としての目標はありますか?

仲吉 目標はみんなに愛される女優さんになりたいです。映画もドラマもいろんな役を演じてみたい。どの役も絶対に難しいと思うんですけど、いろんな役に挑戦していきたいと思っています。

やってみたい役はありますか?

仲吉 ヤンキー役をやりたくて(笑)チヅルに近いと言ったのもそうですが、かっこいいのが好きなので、アクションもそうですけど、喧嘩の強い女の子役をやってみたいです。いずれアクションもできるようになりたいです。かっこいい女の人をやってみたいです。

本作の見どころをお願いします。

仲吉 見て欲しいところはたくさんあるんですけど、4人の誰が主役ということもなくて、誰のストーリーでもないですし、見る人によって、この人の考え方分かるとか、逆に違う子の言葉が刺さったり。この作品の中に出てくる悩みは正解がない悩みですし、みんなが通っていく道でもあって、10代ならではの悩みなので。悩みが違っても、悩みを持っていなくても、高校生が頑張って解決していくところだったり、一歩を踏み出すところが背中を押してくれる作品だと思います。年代や男女を問わず、何かモヤモヤしている人だったり、そうじゃなくて高校時代を思い出したい人にもおすすめしたいです。たくさんの人に観てもらいたいです。

【写真・文/編集部】

STORY
高校2年の夏休み。ココロとミクは体育教師の山本から、特別補習としてプール掃除を指示される。水の入っていないプールには、隣の野球部グラウンドから飛んできた砂が積もっている。渋々砂を掃き始めるふたりだが、同級生で水泳部のチヅル、水泳部を引退した3年の先輩ユイも掃除に合流。学校生活、恋愛、メイク……。なんてことのない会話の中で時間は進んでいくが、徐々に彼女たちの悩みが溢れだし、それぞれの思いが交差していく……。


TRAILER

DATA
『水深ゼロメートルから』は2024年5月3日(金)より新宿シネマカリテほか全国で順次公開
監督:山下敦弘
出演:濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ
三浦理奈/さとうほなみ
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©『水深ゼロメートルから』製作委員会

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