劇場アニメ『ルックバック』で京本役を演じる吉田美月喜にインタビューを行った。
コミック配信サイト「少年ジャンプ+」にて2021年7月に発表され、初日で閲覧数250万以上を記録した藤本タツキ原作『ルックバック』を劇場アニメ化した本作。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、『借りぐらしのアリエッティ』、『風立ちぬ』など、数多くの話題作に主要スタッフとして携わってきた押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインを担当し、河合優実と吉田美月喜がW主演を務める。
吉田が演じる京本は、藤野(河合優実)と同級生の不登校生で、四コマ漫画を連載する藤野に秘かに憧れを抱いているが、実は隠れた画力の持ち主。
吉田 機会があったらやってみたいという気持ちはあって、今までにいろんな作品の声優のオーディションを受けていたんですけど、決まらなくて。今回、京本の役が決まった後に監督と話す機会があって、私の声に引きこもりの要素を感じたと言われました。それがいいことかどうかは分からないけれど(笑)それがこの役に合ったのならばよかったと思うし、キャラクターは出会いだからと言われて、今までに決まらなかったことも納得しました。今回、こういう合うキャラクターに出会えてよかったと思いました。
吉田 ありがとうございます。プロの声優さんのように、自分が持っているものを大きく変えて出す技術を必要とされるよりは、オーディションの時点から、その人が持っている素質というものでいろんな声を探していらっしゃる感じだったので、決まってからも無理して声のトーンを上げたりとかは(河合)優実ちゃんも私もしていなくて。決めていただいたならできるだけ自然体で、その場で応えられるように挑みました。
吉田 分からなかったです。もちろん毎回全力で受けているので、全力でやったという感じでしたけど、なにせ受かったことがなかったので、今回は悔しい結果になりたくないなと思いながら、正直そんなに期待はしていなかったです。あまり自分の声に自信がなかったので。ただ、こうやって作品で決めていただいて、ちょっと自分の声が好きになれたと思います。
吉田 うれしいです、ありがとうございます。引きこもりの要素があるので…(笑)そういう役という新しい可能性を見つけてもらいました。これまでに受けてきたのは爽やかな女の子が多かったイメージなのでちょっと納得いきました。また機会があればやりたいなと思わせていただきました。
吉田 私が演じたキャラクターはずっと方言をしゃべっているんですけど、今までに東北の方言をこんなにしっかり話すことはなくて。自分の体で表現できずに声だけでとなると、方言に対する緊張感も違ったので、今まで以上にしっかりと練習しました。監督と方言について、お話させていただいたときに「オーディションの時がよかったから練習をしないで欲しい」と言われて。でも方言は練習しないとできないから、それが難しかったです。オーディションでは、初めにボイスサンプルを録って送って、その時は藤野と京本を出したんですけど、その後に対面でレコーディングスタジオで行ったオーディションでは京本だけ残りました。一次が通ったということはその声がよかったのかなと思って、当時に録った音声をひたすら聞いて“この通りにやろう”と思って二次を受けたんですけど、同じようにやったつもりでしたが、監督から後程聞いたら「初めの時と2回目の演技がいい意味で違って、2回目のほうがよかった。その通りにして欲しい」と言われましたが、私は同じようにやったつもりだったので、「え?」という感じでした(笑)できるだけ練習しないようにしつつ、ただ方言はちゃんとしなければいけないので感情を抜いた方言のテープを用意していただいて、それを聞いて練習しました。
吉田 優実ちゃんと2人でやりました。声優さんのお話を聞くと、ブースに1人でやると聞くこともあるので、2人でできてよかったと思います。相手の声を聞いていないと不安ですので、そう考えるとプロの声優さんってすごいなと思います。まず一緒に録って、どうしても声が被ってしまうところがあったら部分的に1人で録りました。できるだけ2人でやれるようにしてくださいました。
吉田 もともとアニメを全然見ていなかったのですが、コロナ禍で緊急事態宣言の時に時間があって、初めてアニメを見てみようと思って、初めてそこでアニメを見みました。すごくおもしろかったし、私が漫画で好きだった作品のアニメを見た時に、たまたま初めて見たアニメと同じ声優さんが出ていらっしゃって、でも全然声が違って途中まで気づかなくて。その時に「声優さんってすごい」と思いました。このキャラとこのキャラが一緒なのと思って、それから結構アニメが好きになって、今もちょこちょこ見ています。今期やっているのだったり、その前も見ていたり、ちゃんとハマってきています(笑)アニメが好きな友達が多いので、おすすめを聞いて、教えてもらって見たりしています。
吉田 回想シーンで、優実ちゃんが演じやすいようにそのシーンを1回流してくださって。私はその時に出番がなかったので、後ろに座って見ていたんですけど、アニメの画の力をすごく感じて、2人のそれまでに生きてきた日常が明確に、でも儚い記憶として出てきて。見ていて、まさか涙が出ると思わなかったです。本当はブースで泣いたら声が入ってしまうので絶対に泣いちゃダメなんですけど、その時はまだ声は録っていなかったので(笑)2人がより愛おしくなったし、素敵でした。完成したそのシーンを見るのが楽しみです。
吉田 自分が今まで自分の声を好きじゃなかったというのもありますが、声以外の体とか表情にいかに頼っていたかをすごく感じました。いい俳優さんはいい声をしていると言いますけど、本当にその通りだなと思って。自分の声をもうちょっと頼りにして演じてもいいのかなと思いました。
吉田 なってくれたらうれしいなと思います。今舞台の稽古をしていますが、演出家さんがセリフの音に重きを置く方で、「今の音だとこう聞こえる」とか「今こういう気持ちだからこういう音にしたの?」と聞いてくれるんですけど、声優と舞台は違いますが、声の出し方とか声に感情を載せるというやり方を学べたのが活きていると思っています。
【写真・文/編集部】
学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛を受けていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられる…。2人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思い。しかしある日、すべてを打ち砕く出来事が…。胸を突き刺す、圧巻の青春物語が始まる。
『ルックバック』は全国で公開中
監督・脚本・キャラクターデザイン:押山清高
声の出演:河合優実、吉田美月喜
配給:エイベックス・ピクチャーズ
© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会