社会派青春映画『威風堂々 ~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~』で唯野空役を演じた池田朱那、蛭間拓人役を演じた簡秀吉、水江聡太役を演じた田淵累生にインタビューを行った。
本作は大学生たちが奨学金制度やパパ活問題に直面するリアルを描いたダーク青春カタストロフィー。主人公の大学生・唯野空(池田朱那)とその仲間たちが厳しい現実と向き合う姿を描く。脚本・監督を務めたのは、舞台「文豪とアルケミスト」シリーズ、ミュージカル「ヘタリア」シリーズなど、数々の人気漫画やゲームを原作とした舞台の企画や脚本・演出等を手掛けつつ、近年では「社会派青春ストーリー映画」シリーズ等の数々の【社会問題×エンタメ】をテーマにした作品作りに注力している、なるせゆうせい監督。
池田 奨学金という制度そのものは知っていましたが、どれくらいの金額なのか、返すのにどれくらいかかるのかということについては知らなかったです。奨学金はいいイメージだったので衝撃を受けました。子供が生まれてからも返すことになる人も多いでしょうし、まずは衝撃が大きかったのが一番です。
簡 僕は奨学金を調べてから読みました。(池田演じる)空ちゃんを筆頭に、(作中での)そういう仕事をしたくなくてもせざるを得ない状況にいる人は多々いると思います。それが残酷だなと感じる人も多いだろうし、反対派・賛成派とは違いますけど、日本の経済において改善すべき点なのかなと思いました。
田淵 僕は大学に通っていたからこそ、リアルすぎて気持ち悪いなと思いました。僕も奨学金を借りていたんですけど、借金なんだという悲しさとか怒りをデモ活動に込めて、(作中では)「奨学金反対」と叫びました。
池田 ほぼ違います(笑)似ているところは奨学金に対して無知なところくらいです。もちろん私が演じているので、私自身が投影されるというところでは私の延長線上の空でしかないんですけど、空の行動や言動に共感するところはほとんどなくて。こういう過程があるから空はこういう行動をしたんだというのを逐一理由をつけないと演じられないくらい違いました。
池田 最初におっしゃっていただいた見やすかったということにもつながりますが、奨学金というテーマだったり、家族の出来事だったりで重苦しくなりそうな物語ですが、空自身はもちろん問題に向き合って、落ち込むときは落ち込むけれど、明るい部分が必要だと思っていたので、あまり重たくならないように、意識してポップに明るく演じていました。この映画は中高生や大学生、その親御さんに見てもらいたいので、そういう方たちに見てもらうためにはポップな映画でないとこの内容で最後まで興味を持って見ていただくのは難しいなと思いました。
簡 拓人はあらゆることに無頓着な人物で、何も知らないでよく生きてこれたなというくらい無知な人物です。演じるにあたっては、空ちゃんに対してフラストレーションを与えられるように、困らせられたらいいなと思って演じていたので、演じていて楽しかった印象です。自由にやらせていただきました。
池田 その雰囲気を出すのがお上手でした。憎めないと思えちゃうのがすごいなと思いました。
田淵 似ている部分はないですね。極端でトリガーがない人物で。肝が据わっていて信念があって、頭がいい人をイメージして演じていました。
池田 一番大切にしていたのは等身大でいることです。共感していただくためには等身大の女の子でいる必要があるなと思ったのと、私が空だったら奨学金についてとことん調べると思ったんです。自分が置かれている状況をどうやったら脱出することができるかと。私自身も奨学金について調べましたし、奨学金を借りて返している人のSNSだったり、経験談を読み漁って、空と似た生活を送っている人を見つけて読んで、空に置き換えて、空だったらこうするかもなという感情の動きを考えました。私は経験していないことなので、経験している人からヒントを得て演じました。
簡 僕は物語の中で奨学金について触れることはあまりないんですけど、この映画にコメディ要素のスパイスを入れられたら良いなと思って演じさせていただきました。
田淵 水江は正しいことを発信するというか、この作品の中で自分だけが正しいことを言い続けるという役柄でした。うそ偽りなく、これが本当の世の中だよと現実をどう強く印象付けるかをイメージして演じていました。
池田 奨学金のことについて、これから借りようしている方だったり、その親御さんだったり、映画を通して楽しく学んでいただけたら一番いいなと思っています。奨学金のことだけではなくて、家族とのつながりも見て欲しいポイントだと思っています。それぞれの人生への向き合い方にも注目して見てもらえたらうれしいです。
簡 奨学金を借りている人にも見て欲しい作品ですし、堅苦しい物語だけではなくて、コメディ要素もあっていろいろな視点から楽しめる作品です。幅広い人たちに見ていただきたいです。
田淵 僕自身は奨学金というものに対してそんなに悪いイメージはなくて、僕も借りられたことによって大学に行くことができたので。ただ悪いことではないですけど、奨学金を借りる上で自分がこうなりたいというビジョンを立ててから、その夢のために使ってくれたらうれしいと思います。大学に入る前に見て、がんばろうと思っていただける人が増えたらいいなと思います。
【写真・文/編集部】
特にやりたいことも夢もなかった高校3年の唯野空(池田朱那)は、将来の保険として大学進学の道を選んだ。と同時に借金を背負った。大学生の二人に一人が使ってると言われる【奨学金】という美しいネーミングセンスの借金を…。大学進学後、実家に居心地の悪さを感じつつあった空は彼氏の蛭間拓人(簡秀吉)の提案で同棲生活を始める。奨学金の返済に加え、生活費は嵩む一方…普通にバイトをして稼いでも、奨学金を返し終わるのはアラフォー。現実から逃れたかった空は、大学で知り合った異色な同期・九頭竜レイ(吉田凜音)と水江聡太(田淵累生)の影響を受け、”とあるアルバイト“を始めることに。果たして彼女が突き進んだ先には何が待ち受けているのか…。もがきながら今を必死で生きていく大学生のリアルを描いた、ダーク青春カタストロフィー。
『威風堂々 ~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~』は2024年8月30日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズほか全国で順次公開
監督・脚本:なるせゆうせい
出演:池田朱那、吉田凜音、簡秀吉、田淵累生
小野匠、光徳瞬 是近敦之、あまりかなり、高木ひとみ、遠山景織子、近江谷太朗