映画『おいしくて泣くとき』で、心也(長尾謙杜)の同級生でどこか影のあるヒロイン・新井夕花を演じる當真あみにインタビューを行った。
映画『ふしぎな岬の物語』(2014)の原作「虹の岬の喫茶店」などメディアミックスが相次ぐ人気作家・森沢明夫による、“人を純粋に想う優しさ”をまっすぐに描き、多くの読者を温かい涙に包んだ「おいしくて泣くとき」を実写映画化。監督を務めるのは、森沢の著書を映画化した『大事なことほど小声でささやく』(2022)でもメガホンをとり、本作が2度目のタッグとなる横尾初喜。主人公・心也を演じるのは、なにわ男子のメンバーである長尾謙杜。俳優としても躍進する長尾が本作で初の劇場映画主演を務める。ヒロイン・夕花を演じるのは、アニメ映画『かがみの孤城』(2022)で主人公の声を務め、「カルピスウォーター」14代目CMイメージキャラクターに抜擢されるなど活躍目覚ましい當真あみ。フレッシュかつ強烈に“今”を感じさせる注目の若手俳優たちが、一生に一度の切ないラブストーリーを紡いでいく。
當真 私が演じる夕花は、家庭での義父との関係があまりよくなくて居場所がなく、学校にも家の影響があってあまり馴染めずにいる女の子なんですけど、そんな夕花に居場所を作ってくれる心也くんがいて。さらに子ども食堂という新たな居場所ができ、夕花の周りを囲む人たちの温かさを感じられる本当に素敵な作品だなと思いました。
當真 自分が同じ経験をしたという意味ではないんですけど、夕花が抱える辛い気持ちは脚本を読んでいて共感できるところはたくさんありました。そんな少し苦しい生活がある中でも、自分の息抜きになる場所がある、心がすごく温かくなれる場所があるというのはすごく支えになるなと思いました。
當真 役作りでは台本と原作を同じように大切にしていました。演じているときは常に夕花の気持ちを意識しながら演じていました。
當真 撮影しながら監督と話しましたが、あれをやってこれやってという演出ではなく、「ここのシーンはどういう気持ちだと思う?」といった意見のすり合わせのようなことをしながら撮影していたので、自分の思っていたものを自由にやらせていただきました。
當真 夕花は義父とあまり関係がよくないのですが、その義父とのシーンを最初の日に撮らせていただいて、重さもあって少し苦しいなとは思いました。でもそこが夕花の一番の土台にもなるので、すごくありがたいなと思いながら撮っていました。
當真 夕花の状況をあまり知らない人からするとかわいそうに見えてしまうのかなと思っていて、でもそれだけではないというのを伝えたいと意識していました。そういう辛い状況にいても、どうにか自分が笑顔でいられるものを探そうとしているという夕花の心の強さみたいなものは常に意識していました。
當真 撮影現場は本当に笑顔が絶えない、明るい現場でした。監督も長尾さんも、皆さんが本当に明るい方でした。重苦しいシーンではそのシーンの雰囲気作りのために少し静かに空気作りをしてくださったりとか、本当にスタッフの皆さん、キャストの皆さん全員がそのシーンに向けて作り込んでいくという一体感がある撮影現場でした。現場の居心地の良さもあって、常に笑顔で楽しくできていたっていうのがすごく印象に残っています。
當真 はい、本当に皆さん温かい方ばかりだったので、初日からあまり緊張せずに入れました。監督もすごく明るくいろいろとお話してくださる方でした。
當真 長尾さんがインスタントカメラを差し入れで持って来てくださいました。キャストではなくてスタッフの皆さんや現場の全員の思い出になるようにと持って来てくださって、普段は現場のスチールだとスタッフさんはあまり写さないので、みんなの思い出を作れるようにと現場の皆さんと一緒に写真を撮ったことはすごく思い出に残っています。長尾さんも、もしかしたら同じようにこの現場の温かさを感じて思い出に残していきたいなと思われたのかなと思いました。
當真 私もいただいたカメラでいろんな方を撮っていました。あとは自分のカメラを持って行っていたので、それでも撮ったりしてました。
當真 カメラは去年から興味を持って始めて、この作品の撮影の時はカメラを持ち始めて1か月ちょっとだったので、とりあえず今いいなと思った場面をカメラに収めたいと思って撮っていました。意外とボケていたりとか上手く撮れてなかったこともいっぱいありました。でも、それも1つの思い出かなと思っています。とにかくみんなの楽しそうな雰囲気が写るといいなと思いながら撮っていました。
當真 ポスターにもなっている海に面した丘は、夕暮れ時を狙って撮っていたので本当に景色が綺麗ですごく記憶に残っています。
當真 役についての話を2人ですることはあまりなかったです。どちらかというと撮影の前に監督と3人で、そのシーンをどう撮るのかという話をしていました。
當真 長尾さんとの撮影初日が図書室のシーンだったんですけど、今回がはじめましてでもあったので少し緊張はしていましたが、先輩とかそういう壁をパッと取っ払ってくれるような明るい方で、気さくに話しかけてくださって、1日目ですぐに夕花と心也の空気を作れたような気がします。
當真 カメラのセッティングしている間の時間とかは私も夕花と心也の空気を掴めたらと思ったので、少しだけお話をしました。例えば好きな食べ物だったり。最初はどういう風に現場で話したらいいのだろうとか、夕花と心也を演じるにあたって、どういった関係性でいたら一番スムーズにお芝居が出来るんだろうと考えていたら何を話したらいいのか分からなくなってしまったのですが、長尾さんは不安を感じさせないように明るく振る舞ってくださっていました。
當真 自分が出ていないシーンは完成するまで見れていなくて。台本を読んで、キャストの皆さんも知っていたので、どういう感じで出来るんだろうとすごくワクワクしていたので、初めて見たときに感動しました。例えば長尾さんと安田顕さんの親子の会話の部分は試写を見た時に泣きました。台本には書かれていても撮影現場で、この方がいいんじゃない?と新たな案が生まれて想像していたものとは変わっていったりもするので映像で見た時はすごく感動しました。
當真 雨のシーンは当日本当に雨が降っていて、映像を見た時に「こういう風に映っているんだ」とちょっと驚きました。天気の力もあり、泣いているような、笑っているようなどちらとも取れる曖昧な表情を2人がしていて、それもすごくいいなと思いました。ずっと天候にも恵まれていた撮影の中、唯一の雨でしたが、タイミングがよかったです。
當真 私は本当に周りの方に恵まれていて、仲良い友達だったり、地元に帰るとお母さんや家族がいて、いろんな所に居場所がある気がします。この人といる時はこんな私がいるみたいなそういった一面もあったりするので、それぞれに違った空気があって、でもそれもすごく居心地がいいので、いろんな所に居場所がありますね。
當真 違う自分というか、こういう自分もいたんだと発見があります。地元にいた時は誰かに自分の気持ちを話すということが苦手だったので、東京に来てお仕事をしてお話していると、こういう自分もいるんだと感じたりすることがあります。
當真 撮影を通して発見する自分の新たな意思みたいなものはあまり無かったような気がします。いろんな役を演じさせていただく中で、自分と役との共通点を見つけていくのですが、時間とともにだんだん夕花と重なっていって、撮影中は夕花にすごく近い自分がいると感じることがありました。
當真 高校3年間は、お仕事もさせていただいて、毎日が新鮮な日々だったので本当にあっという間に感じました。今後はお仕事に一段と集中して頑張りたいなと思っています。演じたことがない役だったり、新しい事に挑戦出来たらなと思っています。
【写真・文/編集部】
『おいしくて泣くとき』は2025年4月4日(金)より全国で公開
監督:横尾初喜
出演:長尾謙杜 當真あみ
水沢林太郎 芋生悠 池田良 田村健太郎 篠原ゆき子 安藤玉恵
尾野真千子 美村里江
安田顕 ディーン・フジオカ
配給:松竹
©2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会