日本の恋愛小説と、彼女にだけ見えるユーレイの日本人歌手”トニー谷”だけが心のよりどころのリザが、30歳の誕生日に住み込み先の元日本大使未亡人に許可をもらい外出するが、その間に未亡人が殺害される。恋する相手が次々と死者となるリザに幸せはやってくるのか―。
独特の世界観と、耳に残るメロディとリズムがクセになる本作で、トミー谷を演じるデヴィッド・サクライは、日本人の父とデンマーク人の母を持ち、18歳のころから8年間日本に住んでいたこともあり、現在はアメリカを拠点としてドラマや映画に活躍中の俳優。今回のトークイベントは、デヴィッドがプライベートで来日していたことから急遽開催された。
この日は、新宿シネマカリテでの上映最終日となるが、開場前に満席となり、場内に入れなかった人がロビーに溢れるほどの大盛況となった。
日本に住む親族らと一緒に鑑賞していたデヴィッドは、上映が終わると”トミー谷”を意識したメガネをかけてステージに登壇。観客とともに鑑賞した感想を聞かれたデヴィッドは「楽しかった」と率直な気持ちを伝えた。次々と死者になるというストーリーではあるがコメディ要素が強く含まれており、「笑いましたか?」の問いには「ちょっとだけ笑いました」と控えめに答えた。
今回、来日してから配給会社に連絡したデヴィッドはもともと新宿での上映最終日のこの日に鑑賞する予定だったということだが、来日している期間は「とても短い。もっと日本にいたい」とコメントした。親族も住んでいる日本については「家に帰ってきたみたい」と日本への親しみを表現した。今回は、「1年半ぶりで、家族に会いに来ました。彼らは今夜ここにいます」と本作をともに鑑賞していたことを明かした。
ハンガリー映画である本作だが、ハンガリーと日本の観客の違いについて聞かれると「ちょっと似ています。ハンガリーの観客もみんな日本の大ファン」と話したが、笑うところは同じ?との問いには「ちょっと違う。ハンガリーのジョークはローカルなもの」とハンガリー人ならではのジョークもあると答えた。
劇中では、グリーンのスーツを着て、陽気に踊り歌うトミー谷だが、彼が歌う歌はすべて別の作曲家が歌っており、デヴィッドは「セリフがまったくない、サイレントムービーだと思ってやった」とコメントしたが、「いざやろうってなったときには、ミントグリーンのスーツを着なきゃいけないし、メガネもかけないといけないし、その上にダンスもしないといけなかった。そこで深呼吸をして、『あー、これは新しいチャレンジになるな』と思った」と振り返った。中でも一番大変だったところは?と聞かれ、「ダンス」と即答。今やってみてほしいという声には「ダンス用のシューズをはいていないからできない」と残念そうに答えた。
その後、観客からの質問に答えるコーナーへと移り、客席からは多数の質問が寄せられた。初めに、この日が誕生日という女性から「映画でもリザが誕生日をきっかけにストーリーが動き出す流れだったけれども、デヴィッドさんは誕生日で特別な思いではありますか?」との質問に対し、デヴィッドは「誕生日で一番うれしいのは家族で集まれること」と笑顔で答えた。デヴィッドはアメリカ、兄弟は日本など離れ離れに暮らしているため「集まれる時がない。誕生日は僕にとって特別な日」と答えた。
続いて、好きな俳優としてあげている仲代達矢について聞かれたデヴィッドは「いろんな役をやる。侍もやるし、実年齢よりも上の人もやるし、西洋の映画でカウボーイもやっているはず」と興奮気味に語り、「僕にとって彼が大きな目標」とコメントした。
本作では、昭和歌謡のような日本語歌詞の曲が多数使用されているが、楽曲について聴かれたデヴィッドは「あらかじめ音楽を担当したエリック・スモさんが録った曲があって、映画の中では彼が歌った曲なんですけど、実際の撮影中には歌わなくちゃいけなくて何回も歌った。朝起きてシャワーを浴びて寝るまで・・・寝てる間も歌ってたかもしれない。今は大好きだけど、あの時はいやになるほど歌ってた」と振り返りつつ、劇中歌「Out She Comes Up She Goes/はばたけ、リザ」の一部をアカペラで披露。客席からは大きさ声援と拍手が起こった。
今後日本の作品に出たいですか?という質問には「はい」と即答し、あまりの答えの早さに客席からは笑いが起きた。続けて「もしかしたら、すぐに日本映画に出るチャンスがあるかもしれない・・・」と話すと、場内はどよめき、大きな拍手が巻き起こった。また、どんな俳優になりたいですか?と聞かれ、「仲代さんのように、いろんな顔を見せられる俳優になりたい。いろんなジャンルの映画に出てみたい。(本作で)ロマンティックコメディにも出れたのでうれしかった」と俳優として幅広く活躍したいという決意を表した。また次に控えている映画は「アクション映画になりそう」と答えると、客席からは楽しみにしている様子で拍手が起きた。
最後に、デヴィッドは日本語で「日本のみなさん応援ありがとうございます」とメッセージを贈り、イベントは終了した。
トークイベントの終了後には、ロビーで手持ちのパンフレットなどへデヴィッドがサインをしたり、一緒に写真を撮るなど多くの観客と身近に触れ合うイベントとなった。
★デヴィッド・サクライからのメッセージ(英語版)
映画『リザとキツネと恋する死者たち』は大分シネマ5(1/30~)、大阪第七藝術劇場(2/6~)、横浜シネマジャック&ベティ(3/5~)ほか全国で順次公開中!
監督:ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
出演:モーニカ・ヴァルシャイ、デヴィッド・サクライ
配給:33 BLOCKS