『オマールの壁』アダム・バクリ

衝撃のパレスチナ映画『オマールの壁』の公開に合わせて主演のアダム・バクリが初来日し、本作に出演した思いを語った。

パレスチナの今を生き抜く若者たちの青春をサスペンスフルに描いた衝撃作である本作。パン職人のオマールは、銃弾を避けながら分離壁をよじのぼり、恋人なディアのもとへ通っていた。占領状態が続くパレスチナでは、人権も自由もなく、オマールはこんな毎日を変えようと仲間とともに立ち上がるが、イスラエル兵殺害容疑で捕らえられてしまう。一生囚われの身になるか、それともスパイになり裏切り者として生きるか―。1人の青年に課されたぎりぎりの選択の結末は―。

本作で主演を務めたアダム・バクリは、1988年イスラエル生まれのパレスチナ人。父親は俳優で映画監督、二人の兄も俳優と映画一家に生まれた。本作が長編映画デビューとなり、現在はニューヨークを拠点に活躍する。

劇中、丸刈りだったアダムだが、現在は髪を伸ばし、端正なマスクから時折笑顔をのぞかせる。本作がパレスチナ初の“純国産”映画であることについてアダムは、「100%パレスチナで資金が調達され、スタッフ、キャストとも99.9%がパレスチナ人、つまりオール・パレスチナ人で完成させた最初のパレスチナ映画であることをとても誇りに思っています。」と語り、さらに、「その記念碑的作品がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたこともとても光栄。」と笑顔で語った。

アダムは実際には分離壁に囲まれて育った経験はないが、本作の撮影で初めて間近で壁を見て、「その圧迫感たるや、ものすごく得もー書なるな体験だった。視界からは空が見えなくなり、太陽が隠れてしまう大きさで、そこに立って初めて壁が持つパワーを感じた。それを毎朝起きて、見なければならないフラストレーションや無力感には耐えられない。」と気持ちを明かした。

壁は高さ8メートルあり、よじ登るシーンでは、「かなりトレーニングを積んでからトライしたが、半分以下の3.5mで力尽きた。」と明かし、「全部登りきったら中で撃たれちゃうからね。壁をまたぐシーンはセットなんだよ。」と過酷な現実に照らし合わせて語った。

さらに衝撃の結末を迎える本作だが、ラストシーンについては、ハニ・アブ=アサド監督から、「人生で一番ハッピーな日だと思って演じてほしい。」と言われたといい、アダムは、「あの時オマールは、自分自身が下した“決断”に心から納得し、そして平和を感じたんだと思う。」と振り返った。

『オマールの壁』

『オマールの壁』 (1)

『オマールの壁』 (2)

『オマールの壁』 (3)

『オマールの壁』 (4)

『オマールの壁』 (5)

『オマールの壁』ポスタービジュアル

映画『オマールの壁』は2016年4月16日(土)より角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほか全国で順次公開!

監督・脚本・製作:ハニ・アブ・アサド
出演:アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニほか
配給:アップリンク
2013年/パレスチナ/97分