是枝裕和監督最新作『海よりもまだ深く』で阿部寛が演じる主人公の“まるでホラー映画”にも見える場面写真が到着した。

『そして父になる』『海街diary』に引き続き、是枝監督作品として3作品連続でのカンヌ国際映画祭への出品が決まった本作で描かれるのは、“なりたかった大人”になれなかった大人たちの物語。主演を務める阿部寛が、叶わぬ夢ばかり追い続ける情けない主人公・良多を、ときにおかしく、ときに切なく、チャーミングに演じる。そんな良多に愛想を尽かした元妻を真木よう子、良多の人生を穏やかな眼差しで見つめる母を樹木希林が演じ、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、橋爪功ら豪華キャストが名を連ねる。台風の夜に集まった元家族だが、嵐が去れば、またそれぞれの日常に戻ると分かっている彼らの想いが交錯する―。

今回、阿部寛の“まるでホラー映画”の1シーンに見えるような写真が到着した。良多の顔が不気味に照らされた姿が映し出される本画像。しかし実は、台風の夜、トイレに起きてきた息子の真悟を夜中の公園へ誘おうと、懐中電灯の光で自らの顔を照らして待ち伏せするというコミカルなシーンでの一コマ。情熱的な町工場の社長や、人生全てをエヴェレスト登頂にかける勇敢な男を演じた阿部だが、本作では15年前に文学賞を一度獲ったきりの売れない作家で、妻には愛想を尽かされ離婚。息子の養育費も満足に払えないくせに彼女に未練たっぷりという、笑ってしまうほどのダメ人生を更新中の中年男演じる。

本作で3度目のタッグとなる阿部と是枝監督だが、今回起用した理由について是枝監督は「他の人にお願いする発想がまったくなかった。」と告白。「脚本を書き始めた時から、阿部さんの声を思い浮かべて書いています。ダメ男と言える良多をあそこまでダメな感じでやってくださって（笑）、本当に素晴らしかったです。」と最高のキャスティングであったことを明かした。それに対して、これほどまでのダメ男を演じたのは初めてだったという阿部は「虚勢を張ったり、強がったりするけど、本当は弱いんです。いつまでも夢を追いかけている良多の甘えを、今までにない、おもしろい人間味として出せたのではないかと思います。」と語っている。