『ティエリー・トグルドーの憂鬱』ポスタービジュアル
昨年度のカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した『La Loi du Marche(原題)』が『ティエリー・トグルドーの憂鬱』の邦題で8月27日(土)より全国で公開されることが決定した。

『愛されるために、ここにいる』(2005)で人生に疲れた男と満たされない女が出会うラブ・ストーリーを描き、、『母の身終い』(2012)で年老いた母と息子の最期の日々の交流を描いたステファヌ・ブリゼ監督が『母の身終い』に出演した名優ヴァンサン・ランドンと再びタッグを組んだ本作。自らのプライドと社会のしがらみの中で板ばさみになり、現実のために身を落としてゆく中年男をランドンが重厚な演技で観るものを魅了させる。

ドキュメンタリーのような冷徹なカメラの元で圧倒的存在感を焼き付ける演技は、第68回カンヌ国際映画祭で批評家の絶賛を受け、コンペティション部門長編作品で主演男優賞を受賞した。自己保身とプライド、組織と個人、誰もが日々体験しているであろう社会の矛盾をあますところなく描き出し、観るものに回答を迫る社会派人間ドラマである。

ティエリー(ヴァンサン・ランドン)はエンジニア一筋で働いていた会社から集団解雇された。当初はストライキを起こしてでも闘うと仲間に息巻いていたが、結局、会社を辞め職安に通うことになる。頑固な彼は、今さら就職面接を受けても上手く対応することができない。就職訓練の場でも、年の離れた若者からその堅さを容赦なく指摘されて、面目をなくす。そんな彼の唯一の救いは、妻と身体障碍を抱えた息子の存在だ。家族といる時は、世間の厳しさを忘れることができる。ティエリーはようやくスーパーの警備員の仕事に就くことができる。希望していたエンジニアの仕事ではないが、今はそんなことは言っていられない。しかし、彼はそこで、買い物客だけでなく自分の同僚たちまで不正をしていないかを監視し、発見した場合には告発しなければならないことを知る。ある日、告発によって、従業員の一人が自殺し、彼は会社側の厳しい対応に内心疑問を覚えるが―。

監督:ステファヌ・ブリゼ
主演:ヴァンサン・ランドン
配給:熱帯美術館
2015年/フランス/93分