世界一のレストラン「ノーマ」の天才シェフ、レネ・レゼピに4年間密着したドキュメンタリーである本作。4月29日(金・祝)の公開後、5月1日と4日のサービスデーは新宿シネマカリテにて5回の上映すべてが満席になるなど大ヒットを記録している。
今回、本作の大ヒットを記念して、レネ・レゼピとも親交のある、注目の気鋭フランス料理店「フロリレージュ」の川手寛康シェフと、今最も予約の取れない人気日本料理店「傳」の長谷川在佑料理長が登壇し、一流の料理人だからこそ分かる世界一のレストランの裏側、そして天才シェフ、レネ・レゼピとノーマの魅力を語った。
蟻やバラなどを用いた食材の独特さが特徴の一つでもあるノーマの料理について、川手シェフは「衝撃的だった」と振り返る。また、感情的に話すレネについて「ノーマのすごさはチームワーク。あんなに変わったシェフにみんながついていくというのは、レネは良いチームを作ることに関して長けているということ」と語る。以前よりレネと親交のある長谷川料理長は、レネについて「日本人のおもてなしの気持ちや心の持ち方を大切にしているところに感動していた」と言い、「『すごい疲れているときに旅館についたらお茶が出てきて、お風呂に入って戻ってきたら掛け軸がさわやかなものに変わってた。日本人は心を読むようなことを持っているんだろう』と言っていた」とレネの日本でのエピソードを語った。また、このことについて長谷川料理長は「日本人は相手が喜ぶために何かをしてあげる気持ちが大きい」からこのようなエピソードが生まれたのだとコメントし、レネも「そういうことを大切にしているんじゃないかと感じました」と語った。
昨年、期間限定で出店された「ノーマ ジャパン(Noma at Mandarin Oriental, Tokyo)」(2015年1月9日~2月14日にマンダリン オリエンタル 東京で出店)について、川手シェフは「(デンマークの)現地で出している料理よりもメッセージ性が強かった」と語った。ここで長谷川料理長が「ノーマジャパン行った方いますか?」と観客に聞くと、数名が手を挙げ、指定のコース料理のみで39,000円(ドリンク別、消費税、サービス料別)と比較的高価格なため川手シェフは思わず「すごい、お金持ちだ」とコメントした。また、日本で出店した理由について川手シェフは「日本は独特だと思ったから来たと思います。興味を示したんじゃないかな」と続けた。
劇中にも出てくる「世界ベストレストラン50」について、川手シェフは「“世界一おいしいレストランランキング”だと思ってる人が多いと思うんですけど、僕は人をどれだけ幸せにできるかランキングだと思う。これがミシュランと大きく違う気がする」と語った。長谷川料理長も「ミシュランはお皿にのってる料理で星の数を決める。ベストレストラン50はお客さんの笑顔の数が評価の対象という感じ。『今日一日すごいよかった、楽しんだ』という点を評価していく」と語った。
長谷川料理長は、今年1月にノーマがオーストラリア・シドニーに限定出店したことに触れ、「食べさせてもらって、レネとも話した。キッチンでスタッフを見たら、自分たちが新しいものを生み出してやっていこうという意識が強く、みんな楽しそうにやってる」と印象を語った。また、ノーマのシステムについて「レストランとラボのチームが分かれてる」と川手シェフ。「ラボ(研究所)はラボのチーム、営業は営業するチームで分かれていて、ヨーロッパでは結構多い」と語った。
チームについて話が及び、長谷川料理長は「ノーマにはスーシェフが3人いるが、彼らはシェフになれるクラスが集まっている」と言い、さらに「レネのところにもいっぱい女性がいたと思うんですけど、やっぱり女性が見るものは多い」と語った。
イベントの終盤では、料理の楽しみ方について、長谷川料理長は「日本人だと生のお魚が出てきたらお刺身というイメージだけど、海外ではお刺身ではないと思うと良さが出る」と語り、川手シェフも「海外で楽しむコツは、あまり先入観にとらわれないようにして、新しいものだと思って食べたほうが幸せになれると思う」とアドバイスを贈り、さらに長谷川料理長は「楽しんだものがち」とコメントした。
映画『ノーマ、世界を変える料理』は2016年4月29日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国で順次公開!
監督:ピエール・デュシャン
出演:レネ・レゼピ
配給:ロングライド
Photo by Pierre Deschamps ©2015 DOCUMENTREE FILMS LTD