是枝裕和最新作『海よりもまだ深く』のハナレグミが歌う主題歌「深呼吸」ミュージックビデオが解禁された。

『そして父になる』『海街diary』が2作連続でカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された是枝裕和監督が最新作で描いたのは、“なりたかった大人”になれなかった大人たちの物語。叶わぬ夢ばかりを追い続ける情けない主人公・良多を阿部寛、そんな良太に愛想を尽かした元妻を真木よう子、良多を穏やかなまなざしで見つめる母を樹木希林が演じる。“海よりもまだ深い”人生の愛し方を教えてくれる、心に染み入る感動作となっている。本作は、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品されており、5月19日（日本時間）に上映される。映画祭には、阿部寛、樹木希林、真木よう子、是枝裕和監督が参加。

今回、本作の主題歌であるハナレグミが歌う「深呼吸」のミュージックビデオ（MV）が解禁された。劇中で主人公・良多（阿部寛）の探偵業での相棒・町田健斗役を演じた池松壮亮を主演に迎え、是枝監督が映画のサイドストーリーとして新たに撮り下ろした一作。このMVは、映画の撮影を進めていくうちに是枝監督の中で、町田のバックグラウンドが膨らんでいったこと、映画を観た人たちから「彼の背景を知りたい！」という声が多くあがったこと、さらに制作スタッフの間で「もっと池松さんを撮りたい！」という声が多かったことから生まれたという。空気感をそのままに、映画本編では知ることができないサイドストーリーとして、町田を主軸にした温かくも切ないもうひとつの家族の物語が描かれている。

この曲は、いつか自身の監督作品で音楽を担当してもらいたいと考えていた是枝監督の思いが叶ったと言う。是枝監督は「録音スタジオにお邪魔した時、まだほとんど歌詞はできていませんでしたが、そのメロディーラインを一度聴いただけで、身体が震えるほど感動しました。出来上がった曲は、もう、映画の描いていない主人公の過去や未来をも感じさせてくれる名曲で、この歌で映画が締めくくれることを本当に嬉しく思っています」と楽曲と本作が非常に合っていることを喜んでいる様子。また、曲を担当したハナレグミの永積は「主人公の良多と一緒に、うつむいたり 空を見上げたりしながら曲を書きました。『なりたい大人になれたかい？』その問いが僕の手の中にも残り そして また一つ 深呼吸」とコメント。

MVで主演を務めている池松は本作について「傑作だと思います。ちょっとビックリしました！こんなにさりげなく、人の人生の真髄をついてくるような作品を僕は観たことないなと思いましたし、是枝節が炸裂でしたね」と大絶賛。初めて是枝作品に出演したことについては「映画学校にも通っていたような僕からすると、是枝監督はスターだし、最初はものすごく緊張しました。
現場では、知らぬ間に料理されていたような感じで、決して何か沢山演出された覚えはないのですが、たまに投げかけてくださる一言が全てを言い得ていて、監督の現場は面白いなぁと感じました」とその撮影方法に感銘を受けている様子。

共演した阿部について「想像していたよりもやわらかくて、すごくチャーミングな人で、今回の現場はそういう居方をされていたのかもしれないのですが、人としても、役の阿部さん（良多）もすごく好きになりました。阿部さん演じた良多のダメ男ぶりは、嫌いじゃないです！」とコメントしている。最後に楽曲については「『深呼吸』をエンドロールで初めて聞いた時に鳥肌がたちました。是枝監督の作品世界を代弁するような、とてもさりげなくて、作品とともにある感じがすごくいいなぁと感じました」と絶賛。また、MVについては「僕自身大好きな曲なので、今回こうしてMVという形で、是枝監督とハナレグミさんというタッグにご一緒させていただけることは本当に嬉しいです。映画よりも町田というキャラクターにもう一歩踏み込んだ内容になっているので、映画とMVと両方を見ていただき、あわせておもしろがっていただけたらと思います」とアピールしている。