『淵に立つ』

本年度カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した『淵に立つ』が第41回トロント国際映画祭への出品と、10月8日(土)より全国で公開されることが決定した。

圧倒的な人間描写で家族を問い直す衝撃作である本作。『さようなら』(2015)では人間とアンドロイドを通して生と死を描いた深田晃司監督が新たな人間ドラマを生み出し、カンヌ国際映画祭に初参加でいきなり公式部門にノミネートされ受賞を果たす快挙を成し遂げた。郊外で小さな工場を営む夫婦とその一人娘。ある日、夫の旧い知人だという男がやって来て、奇妙な共同生活が始まるが、やがて男は残酷な爪痕を残して去っていく。それから8年。夫婦は皮肉なめぐり合わせにより、男の消息の手がかりをつかむ。だが救いのように見えたそれは、互いの心の奥底を覗き込む行為に他ならなかった―。主演の浅野忠信は、怪しくも魅力的な佇まいで家族を翻弄する男を熱演する。さらに古舘寛治が寡黙な夫役で新境地を見せ、筒井真理子が妻の心身の変化を凄まじいまでの説得力で体現する。

今回、出品が決まったトロント国際映画祭は、近年アカデミー賞の前哨戦として注目されている北米最大の映画祭で、本作が上映される「SPECIAL PRESENTATIONS部門」は、世界各国の映画祭などで大きな注目を集めた作品が多く選出される部門。今年の出品作では、メインの部門の日本映画作品は『淵に立つ』のみで、同部門には黒沢清監督の全編フランス語の作品『ダゲレオタイプの女』も選出されている。今回の選出について深田監督は「出不精な私を遠くへ行こうと誘い出してくれるのはいつも映画です。今度は北米はカナダへと連れて行ってくれると聞いて喜んでいます。映画は世界に触れられる不思議な窓です。『淵に立つ』がトロントの映画ファンにとっても日本へと繋がる窓になればと願っています」とコメント。

深田監督は、トロント国際映画祭にも初参加となり、北米で初めて目にする観客の反応を楽しみにしているという。また、ボゴタ国際映画祭(コロンビア)クロージング上映、メルボルン国際映画祭(オーストラリア)アクセント・オン・アジア部門など多数の国際映画祭出品が決定している。本作の製作陣は、日本国内約150館で上映、世界45カ国で上映された河瀨直美監督作『あん』(2015)の主要メンバーによる製作チームで、フランス(COMME DES CINEMAS)との共同制作が行われた日仏合作となる。

『淵に立つ』浅野忠信

映画『淵に立つ』は2016年10月8日(土)より全国で公開!

監督・脚本・編集:深田晃司
出演:浅野忠信、筒井真理子、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈、古舘寛治 
配給:エレファントハウス、カルチャヴィル
2016年/日本・フランス/119分

©2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS