愛と呼ぶにはあまりに危険で切ない男と女のサスペンスである本作。心の隙間に入ってきた美容師への抑えきれない執着から、徐々にストーカー化していく主婦役を常盤貴子、その対象となる美容師役を池松壮亮が演じる。メガホンを取るのは、ベルリン国際映画祭銀熊賞をはじめ世界中で多くの映画賞を受賞している東陽一監督。スマートフォンが普及し、SNSで簡単に人と繋がれ、他人の動向が追えてしまうこの時代。どこにでもいる主婦に、本当は何があったのか―。それに気づいた時、観る者の心にある孤独が解き放たれていく。
今回行われた舞台挨拶には、常盤貴子、池松壮亮、勝村政信、佐津川愛美らキャストと東陽一監督の5名が登壇した
台風が近づく中で行われた舞台挨拶に池松は「帰り気を付けてください」と気遣い、「10代の最後に衝撃的な出会いをして、いつか出会わなきゃいけないと思っていたら意外と早く出会えてしまった」と東監督作品への出演を待ち望んでいた様子。主演の常盤も「本作が完成して、東監督と同じ舞台に立てていることが夢のよう」と笑顔で挨拶した。勝村は「シナリオを読んで、得も言われぬ高揚感が私を包んだ」と喜びを表現した。
憧れていた東監督との初仕事について常盤は「役作りをしないでくれ」と言われたことを明かし、またそれが「嬉しくて握手を求めてしまったくらい」と振り返った。その理由については「芝居というものがどういうものなのかを考えていた時期で、そのタイミングで言ったいただいて、謎に迫っていける、答えが出るかもしれないというチャレンジができた」と答えた。また、今回の演技については「今までのキャリアを横に置いてチャレンジした」と話し、「いいチャレンジだった」と振り返った。
劇中で、美容師役の池松が常盤の髪を切るシーンがあるが、これは実際に切っており、撮影では「緊張するかと思ったのですが、周りの人が緊張しまくってて、逆に緊張しなかった」とスタッフが緊張していた様子を明かした。常盤はその時の様子を「予定したよりも切った。私自身もまだいくんだと・・・」と振り返り、東監督は「NG出されたら1年くらい待たなきゃいけない」と当時の想いを語った。
今回常盤と池松は初共演ということで、常盤は「役柄が役柄なのであまりお話ししないようにしていた。それを池松さんは理解してくださった」とあえて距離感を作っていた様子で、池松は「どこにも寄りかからずに立っている。それが孤独にも見えるし、強くも見える」と尊敬を表した。それを聞いた佐津川は「あえてしゃべらないようにしていただんだなと初めて分かった。現場はいい緊張感でやらせていただきました」とコメントすると、常盤は「何も言わずにじーっと見て・・・。感じ悪かったと思いました」と話し、佐津川は「私が勝手にビビっていただけで!今日いっぱいしゃべれて安心しました」とこの日の再会が良いものになっている様子だった。
劇中では、常盤演じる主婦の小夜子が、池松演じる美容師の海斗に髪を切ってもらうことで物語が展開されるが、美容師の魅力について佐津川は「髪を触られるときゅんとすると聞いた。普段他人に触られない、身近な人に許している部分だからそう思うのかな」と考えを明かし、常盤は「髪の毛を切るときにSっぽい気持ちになった。誰に切らせてあげようかなと不思議な気持ちになる。髪を切ることは特別だなと思いました」と語った。
最後に常盤は「この映画はとてもゆったりとした時が流れていて、フランス映画のような時間を過ごすことができると思います。こういう映画を多くの人が楽しんでくれればいいなと思っています」とアピールした。
映画『だれかの木琴』は2016年9月10日(土)より有楽町スバル座、シネマーと新宿ほか全国で公開!
監督・脚本・編集:東陽一
原作:井上荒野「だれかの木琴」(幻冬舎文庫)
出演:常盤貴子、池松壮亮、佐津川愛美、勝村政信
配給:キノフィルムズ
© 2016 『だれかの木琴』製作委員会