昨年開催された第28回東京国際映画祭から新設されたJapan Now部門は、現在の日本を代表する作品の数々を、映画祭独自の視点でセレクションする部門。この部門を見れば、いまの日本映画を概観できるとともに、現在の日本が多面的に見えてくる。また、気鋭の監督をピックアップし、特集上映を行うことでさらなる飛躍を応援することを目的としている。昨年は、『クライマーズ・ハイ』『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』などの原田眞人監督が特集された。
今年は国内外で幅広く活躍し、アジアで人気を誇る日本を代表する岩井俊二監督を特集。今回上映作品5本が決定した。このうち『打ち上げ花火 下から見るか?横から見るか?』は、六本木ヒルズアリーナで野外上映が行われる。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)
派遣教師の七海(黒木華)は、SNS上で知り合った男性と結婚するが、義母に浮気の罪を着せられて家を追い出されてしまう。その後、結婚式の代理出席を頼んだ安室(綾野剛)から仕事を紹介され、そこで型破りな女性・真白(Cocco)と出会う。
出演:黒木華、綾野剛、Cocco
『Love Letter』(1995)
天国の恋人に向けて送った1通のラブレターがきっかけで、埋もれていたふたつの恋が浮き彫りになっていく。一人二役を演じた中山美穂の演技と、岩井俊二監督の映像美が融合した、淡く懐かしい感情を喚起する珠玉のラブストーリー
出演:中山美穂、豊川悦司、酒井美紀、柏原崇
『スワロウテイル』(1996)
むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃。いつかのゴールドラッシュのようなその街を移民たちは“円都(イェンタウン)”と呼んだ。でも日本人はこの名前を忌み嫌い、逆に移民たちを“円盗(イェンタウン)”と呼んで蔑んだ。
出演:三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介
『ヴァンパイア』(2012)
男はある場所で“ゼリーフィッシュ”と名乗る女と待ち合わせた。見知らぬ者同士、共に死のうとしている。「最後の一日を最高の日にしたい」というゼリーフィッシュに、その男“プルート”は、穏やかに死ねるある特別な方法を試すことを提案する。「血を抜こう」。この男、サイモン・ウィリアムズにとって最も長い一日が始まる。原作から脚本・監督・音楽・撮影・編集にいたる隅々にまで、まさに心血を注ぎこんだ、岩井監督渾身の一作。
出演:ケヴィン・ゼガーズ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、蒼井優
【野外上映作品】『打ち上げ花火 下から見るか?横から見るか?』(1995)
小学生の典道(山崎裕太)、祐介(反田孝幸)、純一(小橋賢児)らは、花火を横から見ると丸いのか、平べったいのかという素朴な疑問を持ち、花火大会の夜その答えを見つけに近くの灯台に行くことを計画する。一方、なずな(奥菜恵)はその日、典道か祐介のどちらかプールでの勝者とカ・ケ・オ・チすることを企てた―。
出演:山崎裕太、奥菜恵、反田孝幸、ランディ・ヘブンス、小橋賢児、桜木研仁、麻木久仁子
また、Japan Now部門のプログラミング・アドバイザーである安藤紘平から、上映作品の選定理由についてのコメントが届いている。
安藤紘平 コメント
岩井俊二監督は、常に“日本の今”を生きる若い世代を寓話的に語りつつ、記憶、時間、社会といったものを彼独特の映像美学で表現する稀有な作家です。その彼が、映画監督協会新人賞を受賞し華々しくデビューした作品が『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。そして『Love Letter』は長編第一作目、誤送された恋文から始まる名作で、多くの映画祭で受賞、韓国や中国では未だに圧倒的人気です。『スワロウテイル』は、円が世界で一番強かった時代を寓話的に描いた岩井監督らしい異色作。『ヴァンパイア』はこの世の果ての恋物語。そして、最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』は寺山修司的美しいかくれんぼの物語。岩井ワールドを全て魅せます。
「第29回東京国際映画祭」は2016年10月25日(火)~11月3日(木)まで六本木ヒルズ、EXシアター六本木ほかで開催!