極限状態で問われる正義の決断が許されない罪を生んだ戦場と法廷を舞台に、正義と命の尊さを問う心揺さぶるヒューマンドラマである本作。主演は『LUCY/ルーシー』などで話題のデンマークを代表する俳優ピルー・アスベック。トビアス・リンホルムが監督を務める。アフガニスタンの平和維持のために駐留するデンマーク軍の部隊長クラウスは、タリバンの襲撃を受け、部下を守るために、敵が攻撃していると思われる地区の空爆命令を行うが、子どもを含む11名の民間人の命を奪ってしまう。クラウスは家族に支えられながらも、罪の意識と部下を守るための決断との間で苦悩し、運命の結審が訪れようとしていた―。
今回のイベントには、特定非営利活動法人国際ボランティアセンター(JVC)の谷山博史代表と、アフガニスタンで平和教育キャンペーン等を行っているJVCのサビルラ・メムラワル アフガニスタン事業副代表の2名が登壇した。
2002年より4年半にわたり、アフガニスタン現地代表を務めていた経験がある谷山代表は「映画を観て実際と重なるところがたくさんある」とリアリティのある作品であるといい、具体的に「劇中にもあった誤爆や、民間人に対する殺傷は日常的に起きています」と語った。また、現地に滞在した経験から、谷山代表は「アフガニスタンの現実は私たちの見えないところで起きている」と語り、「裁判にかけられなくても、民間人を殺した兵士は苦しみます。出口のない、誰も勝者がいない戦争を赤裸々に描いている映画」と本作をアピールした。
サビルラ副代表はアフガニスタン出身で、自身も難民として15年間パキスタンへの移住をしたことがあるが、本作について「今なお続いているアフガニスタンの現状を描いている」とコメント。さらに「アフガニスタンの治安を守るために働いていることが描かれていますが、(現実の駐留軍は)アフガニスタンの文化や背景を理解しているとは思えません」と語り、そのことが「力で抑える行為がいかに失敗しているかを描いている」とした。また、劇中でも見られるが「人を助けることはよい行為」としながらも「よかれと思った行為から、家族が殺される行為につながりました」と戦争中の判断の難しさを語った。
また、サビルラ副代表は、祖国アフガニスタンに帰った後、国軍に入ることを決めていたと明かし、その理由について「戦争の中で生きていたので、自分も銃を取ることが当たり前だと思ったから」と語り、いかに戦争や紛争が身近にあるかを観客に伝えた。またその際に、谷山代表(当時、JVCアフガニスタン現地代表)と出会ったことから「意図せずNGOの活動に参加することになったが、当時はまだ武力を信じていた」と明かしたが、その後駐留軍に対して、対話で間違いを伝える行為を見ていくうちに「武力ではなく、対話で解決できると信じられるようになった」とコメント。さらに「自分自身が紛争で生きてきて、対話で解決できると信じられるようになった変化があるので、ほかの人にも変われると伝えたい」と語った。
映画『ある戦争』は2016年10月8日(土)より新宿シネマカリテほか全国で順次公開!
監督・脚本:トビアス・リンホルム
出演:ピルー・アスベック、ツヴァ・ノヴォトニー、ソーレン・マリン、シャルロット・ムンク、ダール・サリム
配給:トランスフォーマー
2015年/デンマーク/115分
© 2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S