アジア地域の新鋭監督が競い合うヤング・シネマ・コンペティションである「アジアの未来」部門。本作は、パリを拠点に活躍してきた音楽家・半野喜弘の監督デビュー作で、主演を務めるのは14年前にパリで知り合った青木崇高。本名を隠し、別人としてひっそりと暮らす男と、ある夜突然出会う謎の女。ふたりに待ち受けている運命とは―。
「感無量です」と一言で表現し、続けて「健次(青木崇高)と理美(大野いと)が僕のところに帰ってきたなという感じがしました」と挨拶した半野監督。音楽家として活躍する半野監督は、本年度の東京国際映画祭では『聖の青春』と『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』で音楽を担当するが、今回映画監督としてデビューしたことについて「僕にとっては、映画と音楽はほぼ変わらない感じがする」とコメント。「映像は視覚芸術ですが、“芸術”の中で、時間を持っている部分は近い」と語った。
本作では音楽も担当しているが、自身の監督作品とほかの監督の作品への音楽の違いについては「ほかの人の作品の方が圧倒的にやりやすい」と答えた。その理由については「脚本を書いて、演出して、撮影していく工程の中で、物語のファーストインプレッションが薄れてしまうから」とコメントした。また、主演の青木は本映画祭のコンペティション部門に『雪女』が出品されているが、同作品の杉野希妃監督が主演も務めていることから、インタビューでは監督に大変ではないかと聞かれることが多いという。そのことについて青木は「僕も同じ。目の前の人が監督だったり、役者だったりするので切り替えてやっています」とキャストとしての目線を語った。
また、半野監督は、撮影に入る際は「すでに健次だった」という青木に対して、大野は理想が大きく、追いつけなかったことから「最初の半分くらいほぼ毎日泣いていた」と明かした。それも撮影中盤で「追い詰めることが出来た」ことでそれ以降は泣くことはなくなったという。また、大野は「青木さんとは撮影以外でお話をしなかったので、青木さんがすごく苦手で、最低の人だと」思っていたことを明かした。それに対して青木は「彼女ががんばっているのを知っていて、その姿勢を邪魔してはならないと思って横で見ていた」と弁明。「僕は見守っているつもりだったんですけど・・・」と驚いている様子だった。
半野監督は最後に、本作について「いろんな人に平等に落ちてくるのが雨。人生の抗えないものにゆられてしまっている二人の物語」と表現した。
第29回東京国際映画祭は2016年10月25日(火)~11月3日(木)に六本木ヒルズ、EXシアター六本木ほかで開催!
映画『雨にゆれる女』は2016年11月19日(土)よりテアトル新宿にてレイトロードショー!