世界の秋の新作品を中心に、期待の若手から充実のベテランまで、個性豊かな作品が結集して賞を競うコンペティション部門では「世界の今」を感じることができる。本作は、街中に拡散される女の顔のグラフィティアート、そして無差別に男を殴る女子高生集団―。安曇春子の失踪をきっかけに交差するいたずらの結末は―。
主演の蒼井優を含めて、松居監督と同世代が多い本作。太賀は「松居監督とは4作品ほど一緒にやって、本作が完成した時は、松居さんについてきてよかったと思える作品になった」と称賛した。本作は、2つの物語が複雑に入り組んで描かれている。原作は時系列通りの流れだったという松居監督は「文字で読んだ時はおもしろかったけど、理屈を感じて欲しくなかった」とその理由を語った。また、本作の完成までに「エピソードを短冊のように切って、脚本で15回、編集で15回くらい時系列をいじった」と明かした。そのためキャスト自身も完成するまで全体像が見えにくかったようで、葉山は「台本を見てこんなにも違うんだと思い、さらに出来上がりを観るとかっこよくなった」と想像以上だった様子。また、時系列をいじったことについて松居監督は「正しいのかは分からない」と前置いたうえで「観る人によって見え方が違うだろうし、こちらが感じて欲しいと提示してはいけないと感じていた」と語った。
本作では高畑充希演じるあいなのはじけっぷりも話題となっているが、太賀は「本人は悩んでいたと思うんですけど、軽々と演じていた。(自身が演じる)ユキオが出ているシーンはほとんどあいなと一緒なので助けられた部分はある」とコメント。また、主人公・安曇春子を演じる蒼井優について葉山は「もともとファンだったので、一緒の作品に出演できたことによかったなと、まず一般的な感覚で楽しませていただいた」と喜びを表した。また、複雑な構成であるがゆえに「映画を観て、ここまで絡んでいたんだなと感じました」と驚いていた。対して、太賀は「若さゆえにやりたいこと、楽しいことを全開で楽しんでいくシーンの連続だった」と明かし「完成した作品を見て、いかに自分たちが楽しんでやっていたことが、一人の女性を傷つけていたんだと感じた」と戸惑いを覚えている様子。
記者からの質問で、蒼井の演技をどう思うか聞かれた松居監督は「桁が違うというか、バケモノのような、ゴジラ的な存在。規格外でした」と大絶賛。本作に与えた影響の大きさをうかがわせた。また、劇中に登場するたくさんのいたずら書きについて「最高に気持ちいです」と太賀が答えると、葉山は「エネルギーが有り余っている状況でやったので興奮してやりました」と楽しんでいた様子。しかし「消すのは大変だった?」と聞かれた松居監督は「場所によるんです」と答え、所有者の判断で「現場に残っているものもある。高架下はみんなでがんばって消しました」と苦労を見せた。
第29回東京国際映画祭は2016年10月25日(火)~11月3日(木)に六本木ヒルズ、EXシアター六本木ほかで開催!