1962年、フランソワ・トリュフォー監督が敬愛する偉大な監督アルフレッド・ヒッチコックにインタビューをさせてほしいと熱望し、2人は意気投合して長時間のインタビューが実現した。そして生まれた「Hitchcock/Truffaut」(「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」山田宏一・蓮實重彦訳)は、“映画の教科書”としてクリエイターのバイブルとなっている。本作は、当時の貴重なテープと、ヒッチコックを慕う10人のフィルムメーカーたち、マーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、黒沢清、ウェス・アンダーソン、オリヴィエ・アサイヤス、リチャード・リンクレイター、ピーター・ボグダノヴィッチらのインタビューを交え、時代を超えた映画術を、新鮮な視点で現代に蘇らせたドキュメンタリー。
今回、本作に対してイラストやコメントが続々と到着した。「新潮文庫 Yonda?」などで知られるイラストレーターの100% ORANGEによる、ヒッチコックの代表作『鳥』をイメージした色鮮やかなイラスト、「ギュスターヴくん」などで知られる画家・ヒグチユウコのヒッチコック肖像と『鳥』『サイコ』の名シーンを連想させるイラストは、映画とは一味違うヒッチコック作品の世界観が表現されている。
奥浩哉(「いぬやしき」「GANTZ」漫画家)
ヒッチコックの映画手法は人真似ではなく、一から工夫に工夫を重ねてワンカットワンカット作られている。自らそうやって産みだすからこそ、人生をかけても良いくらい楽しい。僕も昔、トリュフォーのヒッチコック映画術を読んでから 漫画に対する姿勢が決まった。この映画は、その本がいかに今の映画界に影響を与えたか、ヒッチコックの映画の作り方がいかに独創的で優れているかを語っている。とても興味深い。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
理解者はいつも遠いところからやってくる。ヒッチコックを最初に発見したのはフランス人の青年(トリュフォー)だった。エンターテインメントを日々の糧(エネルギー)としている人、物創りを生業(ビジネス)としている人、これからクリエイターを夢見ている人には必見のドキュメント。ヒッチコックとトリュフォーの映画術は、時間と場所を超えて人をつなぐ絆になった。クリエイターの味方は、外にいる観客(ファン)なのだ。
菊池亜希子(女優・モデル)
ためしに、ヒッチコック映画をサイレントで観てみた。セリフに頼る映画が小説的だとしたら、ヒッチコックの映画は絵本的だ。伝えたいことを絵で捉え、視覚的に訴えている。“表現して伝えること”のヒントがごろごろ転がっているような気がした。
山内マリコ(作家)
その昔、映画監督にあこがれて芸大に入ったわたしの本棚にも、『定本 映画術』は並んでいる。結局ほとんど読むことはなかったけれど、今度こそ開いてみようかな。学生の頃の、映画に心底ワクワクしていた熱い気持ちを思い出させてくれるドキュメンタリー。ヒッチコックの全作品を観たくなった!
松尾貴史(俳優)
全編通してエキサイティング。すべての映像作家が見るべきだとも思うが、この奥義と意識は自分達だけが知っていたいという独占欲も湧く。感じ方が少数派であれ䜀こそ観客を手玉に取る発想が生まれる。名著がまざまざと立体化、生体化した。
宮沢章夫(劇作家・演出家)
何度も観たくなる映画だ。ことさら映画の理念を語るのではなく、ヒッチコックも、トリュフォーも、そして証言する映画監督たちもまた、創作者として、技法について語り、映像美を語り、そうした言葉に溢れる快楽に浸っているように思えた。つまりそれこそが、映画の思想になる。
菊地成孔(音楽家/文筆家)
画とカット割りが映画の構造分析とされた中世が過ぎ、ひとえに脚本のみが観客の心を自在に操るという偏った脚本至上主義がはびこる現在、刊行50周年を迎えるこの古典に書いてある原理の第一は、「画は完全に言葉であり、無音のうちに脚本の一部である」。
映画『ヒッチコック/トリュフォー』は2016年12月10日(土)より新宿シネマカリテほか全国で公開!
監督:ケント・ジョーンズ
出演:マーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、アルノー・デプレシャン、黒沢清、ウェス・アンダーソン、ジェームズ・グレイ、オリヴィエ・アサイヤス、リチャード・リンクレイター、ピーター・ボグダノヴィッチ、ポール・シュレイダー
配給:ロングライド
2015年/アメリカ、フランス/80分
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