Apple Ginzaで11月17日（木）に行われた人気イベント“Meet the Filmmaker”に『ネオン・デーモン』のN.W.レフン監督が登壇し、制作秘話などが語られた。

本年度カンヌ国際映画祭を“絶賛”と“非難”の真っ二つに引き裂いた『ドライヴ』（2011）のニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作。究極の美を追い求めるファッション業界の裏側に渦巻く欲望、白昼夢のような幻想的かつ煌びやかな映像が描かれ、アルマーニ、サンローランなど名だたるブランドが衣装協力し、極上の映像美に輝きを加える。主演のエル・ファニングが自身の心のダークサイドに目覚めていくジェシーを鮮烈に演じており、監督が「クソ最高」と絶賛したキアヌ・リーヴスも見逃せない。

第一線で活躍する映画作家の生の声を聴くことが出来るApple Ginzaで行われている人気イベント“Meet the Filmmaker”に登壇したN.W.レフン監督。ゲームクリエイターの小島秀夫を対談相手に映画の着想や、ものづくりに対する思いなどが語られた。

『ヴァルハラ・ライジング』（2009）が公開されたときにアメリカに住む友人から「すごい映画がある」と言われたことがレフン監督を知るきっかけになったという小島。3年前にロンドンで会った後、ロサンゼルスやデンマークなどで会い、今回が初めて日本で会うタイミングになったという。「小島さんが作っているものに魅了された」と明かし「コペンハーゲンで最初に出会った時の会話が落ち着いていたのは、お互いに何を言うのか分かっているから」と話すレフン監督。小島も「クラスにいる友達のようだった」と振り返った。

本作を昨年6月にロサンゼルスで鑑賞した小島は「レフン監督のファンばかりで、NWR（ニコラス・ウィンディング・レフン監督）と出るたびにウェーブが起きた」と興奮していた会場の様子を明かし「期待通り。やっぱりすごいです」とコメント。「レフン監督ならではの世界観にびっくりしたし、嫉妬しました。美しい映画です」と絶賛した。従来、男性が主人公の作品を撮ることが多かったレフン監督だが、本作では少女が主人公で、そのことについて小島は「女性的でありながら、男性的でもある不思議な映画」と表現。レフン監督は「自分が空想することがベースになっており、『ネオン・デーモン』は自分が16歳の少女だったら、という空想に浸った結果です」と明かした。

主人公の少女・ジェシーを演じるエル・ファニングについて「ほかに演じられる人がいなかった。ジェシーを演じるために必要なすべての要素とすべての資質を持っているのは彼女だけだった。彼女がやりたいと言ってくれてラッキーだった」と振り返るレフン監督。難しい役どころへの演出については「美への執着の映画を作りたいと言った」とコメント。逆にファニングから「自分の世代のために映画を作りたい」と言われたことを明かした。そんなジェシーのキャラクターについて小島は「エル・ファニングが出ている映画の中で、一番きれいで、一番怖い」と称賛。

作品ごとにスタッフが言われ変わるレフン監督の作品だが、編集のマシュー・ニューマンと音楽のクリフ・マルティネスは「トリオと考えていて、最初に相談する」と明かした。また「音楽が好き」と語るレフン監督は「モノづくりの時にインスピレーションを得る」と重要視していることを明かし、本作の制作時には「ジョルジオ・モロダーを聞いていました」と明かした。

立ち見が出るほど集まったファンからは、ファニングの動きが「女性ならではの発想ではないか？」と聞かれ、レフン監督は「エルのアイデアです。役者だけではなく、かかわっている人すべてにオープンです」と意見を取り入れていることを明かした。また、困難を乗り越えて実現していく二人に対して「あきらめない原動力は？」と聞かれ、小島は「好きだから。つらい時もありますけど、好きじゃないと続かない」と答え、レフン監督は「モノづくりという行為を愛しており、自分の化身を空想するのが大好き。ただ、犠牲を払ってもやりたいというほどの意志がなければいけない。執着というレベルにいかないとモノづくりはできない。100％自分が作っているものに献身的になれるかです」と語った。

最後にレフン監督は「日本に来るのは大好きで、自分の中には日本人の女性がいるのではないかと思うくらい。東京の街を歩くのは大好きですし、『ネオン・デーモン』を携えて来られたことを名誉に思います」とイベントを締めた。