『海よりもまだ深く』のBlu-ray&DVDリリース記念イベントが11月26日（土）に都内で行われ、是枝裕和監督と池松壮亮が登壇した。

是枝監督は「決して自分の生理を超えて声を張ることがない。録音部が『大丈夫かな･･･いけるかな･･･』と首を傾げるが、それがいいと思ってる。“カメラがここにあるからこういう芝居をしよう”とか“ちょっと遠いけど、声届かせるために張ってみようとか”そういう芝居は一切しない役者だな」と池松の芝居を絶賛した。

池松が出演している過去作品についても役に溶け込んでいる点に感心した監督は、池松に対し役作りについて問うと「最低限のことはやりますけど、特別何かをするということはないです。自分が分かる感情がないと役に飛び込めないんですよね」と、役に対する姿勢を語り「僕だって大声出すこともあるし、他の作品では嘘ついたりしてますけどね（笑）」と本音を漏らし、会場から笑いが起こった。

台本に【なりたい大人にみんななれるわけじゃない】という文があり、なりたかった大人について問われると「なりたかった大人になれる人っていますかね？いるとしたらイチローくらいじゃないですか。僕は小さい頃ウルトラマンになりたかったですし、その後は野球選手になりたかったですよ！」と池松が語り、是枝監督は「なりたいものになれているわけじゃないし、なりたくないものにだんだんなってきている」と明かす。

いろいろなところで同じことを聞かれ、父親のような大人にはなりたくなかったと答えていたとのことだったが、最近その父親に似ていることに気がついた場面があったそう。それが「朝起きると枕が父親の匂いがする。この匂いどっかで嗅いだことあるぞ」と語り、会場から笑いが起こった。

最後に池松は「DVDはメイキングも入っている、メイキングだけでグッとくるんです」と本作を絶賛し、是枝監督は「現場よりは二人で話ができた。ちょっと交流が深まった」と話し、会場を笑いと拍手が送られた。

第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、約7分間にわたるスタンディングオベーションを受けた本作。3作品連続でカンヌ国際映画祭への出品となった是枝監督が本作で描くのは、“なりたかった大人”になれなかった大人たちの物語。かなわぬ夢ばかり追い続ける情けない主人公・良多を阿部寛、そんな良多に愛想をつかして息子と出て行った元妻・響子を真木よう子、良多の人生を穏やかなまなざし手見つめる母・淑子を樹木希林が演じる。

【取材・文・写真／蔭山勝也】