『永い言い訳』オーストラリア日本映画祭 (1)

『永い言い訳』が10月27日にオーストラリア日本映画祭で上映され、主演の本木雅弘と西川美和監督が登壇した。

オーストラリア日本映画祭は1997年から始まった日本映画普及のための映画祭で、シドニー、メルボルン、キャンベラ、アデレード、パース、ブリスベンの六都市を巡回する世界最大規模の日本映画祭となっている。第20回を迎えた今回、『永い言い訳』が招待を受け、主演の本木雅弘と西川美和監督が渡豪した。本映画祭には本木雅弘は初参加、西川美和監督は前作『夢売るふたり』に続く二度目の参加となった。

10月27日(現地時間)にシドニーのイベント・シネマズで行われたクロージング上映後のQ&Aに登壇した本木と西川監督は、本木が竹原ピストルの名前を書いたTシャツ、西川監督が本木の名前を書いたTシャツ、そして黒のスーツにコアラのぬいぐるみをあしらうというペアルックで仲良く登場。ロンドン在住の本木は「This film “The Long Excuse” looks into the people’s helpless and fragile state of mind. It’s not quite a dramatic story, but I hope you’ve found some connections with their subtle emotional journey.(訳:この映画『永い言い訳』はどうしようもなさ、もろさを心に抱えた人々を描いています。およそ劇的とは言えない物語ですが、そんな人々のささやかな心の旅に皆さんが何かつながりを見出してくれたんじゃないかと思います)」と流暢な英語で挨拶を披露し、集まった約400人の観客を驚かせた。

2人は、翌10月28日(現地時間)の夜にメルボルン・オーストラリア国立映像博物館での上映後Q&Aにも登壇。二都市を巡る短い滞在ながら「観てくださった方の反応はどの国も共通している。何か通じてくれているものがあるのだと思う」と西川監督、「ここでも観た人が身につまされつつもどこか前向きになってくれていると感じる。かすかな幸福感が満足感につながっているようでうれしい」と本木が語るように作品へのさらなる手ごたえを感じたようで世界を舞台にこの作品が広く愛されていくことに期待を寄せた。

Q&Aでは、本木は「怒りを吐き出すだけでなく自分が消え入りそうになるという瞬間があるという感情の波を表現するように指導された気がします。それが役者としていい糧になりました」と西川監督の演出を明かし、西川監督も「ふたりでどうやったらこの映画にふさわしい幸夫の感情表現になるのかと、本当にたくさんのテイクを重ねました」と映画に込めた思いを語っている。また、人生における大きなイベントとして『おくりびと』が第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したこと、さらに義理の母が樹木希林であることについて聞かれると、本木は「役者としての自分にはハリウッドからお声がかかることもなく、特別な変化はありませんでした(笑)」と冗談で返し、樹木については「西川監督と同様に人間への観察眼が非常に鋭くて辛辣ですが、慈愛に満ちている人で、私の心を柔らかく導いてくれる存在です」と感謝の気持ちを明かした。

7年ぶりの映画主演となる本木雅弘を迎え、西川美和監督が直木賞候補となった自らの小説を映画化した本作。人気作家の幸夫は、妻が親友とともに不慮の事故で亡くなった時、不倫相手と密会していた。ある日、妻の親友の夫・陽一とその子どもたちに出会った幸男は、幼い彼らの世話を買って出る。誰かのために生きる幸せを初めて知った幸男だが―。主人公の衣笠幸夫役に本木雅弘、竹原ピストル、池松壮亮、黒木華、山田真歩、堀内敬子、深津絵里などの実力派俳優が名を連ねる。

『永い言い訳』オーストラリア日本映画祭 (2)

『永い言い訳』オーストラリア日本映画祭 (3)

『永い言い訳』ポスタービジュアル


映画『永い言い訳』は2016年10月14日(金)より全国で公開!
原作・脚本・監督:西川美和
出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、堀内敬子、池松壮亮、黒木華、山田真歩、深津絵里
配給:アスミック・エース
©2016「永い言い訳」製作委員会