韓国映画界が放つ笑って泣ける“青春モンスタームービー”『フィッシュマンの涙』の公開初日イベントが12月17日(土)にシネマート新宿で行われ、美術家・ドラァグクイーン・映画批評家などの肩書きを持つヴィヴィアン佐藤と特殊造形アーティストの百武朋が登壇した。

本作について佐藤は「特に日本では作りにくい映画。観てる間にどんどん社会派というか真面目な、変わった造形が出てきたりするが、一般的な話に落とし込んでいくように見えてくる」とコメント。これに百武も同意し「造形の可愛さで面白そうだなと思って観たら、社会性がすごく強かった。観たあとに、“魚は何を象徴しているんだろう”とか“完璧に魚になりきれていないのには意味があるのかな”とか考えさせられる」と語る。

「よく変身についてどう思うか」や「渋谷でのハロウィンはどう思いますか?」と聞かれるという佐藤だが「お化粧や変身というものが、自分に戻っていく。実はお化粧すればするほど裸に戻っていく。最後は自分の皮膚を裏返しにする感じ。だから違う自分になるんじゃなくて、本来の自分に戻ること」と自身の考えを語った。

『ミュージアム』(2016)のカエル男などを手がけている百武だが、本作について「この魚はみんなにとってどういう象徴でやってるんだろう」と感じているようで「最初は持ち上げたけども、だんだん非難される」と韓国の朴大統領と本作が似ていると指摘した。

ある日、新薬治験の副作用で魚人間になってしまった純朴な青年は、腐敗しきった大人たちの餌食になるー。コミカルな展開の中に辛辣なテーマを織り込み、現代社会の問題点が浮き彫りにされている。本作が長編映画デビューとなるクォン・オグァン監督は、カンヌ国際映画祭短編部門パルムドール受賞作で脚本を担当した注目の俊英。斬新なシチュエーションや心にしみるセリフを通して「人生を豊かにしてくれるものとは何か?」を観客の心に導き出していく。

【取材・写真・文/蔭山勝也】

映画『フィッシュマンの涙』は2016年12月17日(土)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開!
監督:クォン・オグァン
出演:イ・グァンス、イ・チョニ、パク・ボヨン
2015年/韓国/92分
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