本年度カンヌ国際映画祭を“絶賛”と“非難”の真っ二つに引き裂いた本作。『ドライヴ』(2011)のN.W.レフン監督が最新作で描くのは、究極の美を追い求めるファッション業界の裏側に渦巻く欲望、白昼夢のような幻想的かつ煌びやかな映像。アルマーニ、サンローランなど名だたるブランドが衣装協力し、極上の映像美に輝きを加える。主演のエル・ファニングが自身の心のダークサイドに目覚めていくジェシーを鮮烈に演じており、監督が「クソ最高」と絶賛したキアヌ・リーヴスも見逃せない。
『マレフィセント』で透明感あふれる愛らしさを存分に発揮してオーロラ姫を演じたエル・ファニング。本作では、純真な少女がダークサイドに目覚めていく姿を捉えている。本作を“美の物語”と表現しているレフン監督だが、衣装デザイナーを務めたエリン・ベナッチには「偽物ではなく、既成概念の枠を超えた高級ファッションの舞台を作り上げたい」という。そのレフン監督の元で協力を行ったハイブランドの衣装が本作に一層の輝きを与えている。
主人公のジェシー(エル・ファニング)が首から血を垂らしソファに横たわっている、劇中でも特に印象的なシーンで着用している青いドレスはエンポリオ・アルマーニの衣装。赤黒く流れる血とは対照的に、鮮やかで艶のあるブルーが美しく魅力的だ。普段からファッションアイコンとして注目を集めるエルだが「このシーンの青いドレスは印象的で好き!」と絶賛するほど。また、大勢のベテランモデルがいる中、堂々たる姿でステージに立つシーンで着用している黒のロングドレスも、同じくエンポリオ・アルマーニのもの。
そして、純粋にモデルを目指すジェシーが、ついに自分の圧倒的な美しさに気づき豹変する、今まで見たことがないエルの表情を捉えているシーンで着用している胸元が大きくカットされた挑発的でセクシーなトップスはサンローランの衣装。もはやあどけない少女の姿は完全に身を潜め、大人への変貌を遂げている。
最後に、ジェシーに執拗なジェラシーを抱くベテランモデルのサラ(アビー・リー)とジジ(ベラ・ヒースコート)が並んで着用しているのは、そのファッションセンスが世界中の注目を集めるレディ・ガガの御用達のMarina Hoermansederの衣装。
その他にもCOACH、サルヴァトーレ・フェラガモ、ヴィヴィアン・ウエストウッドも登場。レフン監督は、劇中のメイクやファッションに関して、自分よりもトレンドなファッションに詳しいエルの意見をふんだんに取り入れたという。劇中に登場する衣装はどれも煌びやかでヴィヴィットな色遣いが目に飛び込んでくる、それでいて役者をさらに活かす色彩の効果が印象的だ。レフン監督が手掛けるこの上ない映像美にさらに磨きをかける“本物”のファッショナブルな世界にも注目だ。
映画『ネオン・デーモン』は2017年1月13日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開!
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:エル・ファニング、カール・グルスマン、ジェナ・マローン、ベラ・ヒースコート、アビー・リー、キアヌ・リーヴス
配給:ギャガ
© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch